緑茶と機能性表示食品の可能性
〜ライフサイエンスセミナー


2021年8月19日(木)、Web配信にてライフサイエンスセミナー「おうちカフェとリラックス」が開催された。この中から志田光正氏(活ノ藤園マーケティング本部)の講演「緑茶と機能性表示食品の可能性」を取り上げる。


市場に流通する飲料の約53%が無糖化

伊藤園のこだわりは「無糖のお茶」、つまり「無糖文化を築いてきたこと」と志田氏は話す。

1980年に日本ではじめて缶入り烏龍茶が発売された時、市場には他に無糖のお茶はなかった。伊藤園が「無糖のお茶」として初めて缶入りウーロン茶を世の中にリリースした。

しかしその後、無糖のお茶は確実に人気を集め、現在では市場に流通する飲料の約53%が無糖化されている。

無糖化を成功させるためにはお茶の素材そのものがおいしいことが重要である。

他にも飲めば健康になる、パッケージデザインなどの見た目、原料や製品そのものの安全性も求められる。伊藤園はこれらすべてにこだわりを持った製品開発を行なっているという。

農作物そのものに健康機能の付加価値

しかし、市場は拡大しているが、日本茶農業による生産量は大幅に減少している。荒茶の生産量は2004年には10万トンだったが2020年には6.9 万トンまで減少、この16 年間で30%も生産量が落ちている。

さらに生産農家はこの20年間で80%も減少した。 一方で、国内の生産量は危機的だが、世界のお茶の生産量はこの10年間で46.7%も増加している。

背景には、中国人の飲用増加とインドや中東の人口増が拡大していることがある。

そこで現在、伊藤園ではお茶を通じて世界各国の人々の健康に貢献する豊かな生活を提案する「健康創造企業」「世界のティーカンパニー」というスローガンを掲げ、国内に留まらない製造販売を展開しているという。

特に、国内では食の分野において機能性表示、エビデンスというキーワードが盛り上がっている。そのため具体的な取り組みの1つとして「健康機能を備えた農作物を畑から研究開発する」ことを行なっているという。

つまり、農作物そのものに健康機能の付加価値を高めたものを自社開発しているということ。

カテキンに関する特許を52件保有

例えば緑茶に含まれる健康成分として有名なものに「カテキン」がある。伊藤園では2008年「カテキン緑茶」をトクホ商品として発売。

その10年以上前にはカテキン8種のうち健康性の強い4種を「ガレート型カテキン」と伊藤園中央研究所が命名した。

当時はカテキンの知名度が低く、「お茶ポリフェノール」という大きな概念しか存在していなかったが、そこから35年以上研究を続け、現時点ではカテキンに関する特許を52件保有している。

その集大成として今年の3月に日本発「体脂肪を減らすお茶」が機能性表示食品として登場。もちろんこの商品の機能性関与成分は「ガレート型カテキン」である。

コロナ禍での商品リリースであったが「コロナ太り」が話題になっていた時期でもあり売れ行きは好調という。

緑茶のプロフェッショナル人材「ティー・テイスター」資格制度を発足

カテキンが多いと機能性は高くなるが、そうなると渋みも強くなる。

お茶の甘みはテアニンというアミノ酸による部分が多い。カテキンとテアニンのバランスを絶妙に調整した畑から茶葉の開発はこれからも力を入れていきたいという。

今、伊藤園で最も力を入れていることがこれらの活動に対するPR。緑茶のプロフェッショナル人材「ティー・テイスター」という資格制度を発足させ、現在2,289名の資格保有者が活躍している。

この2年はコロナによってオンラインでの活動を余儀なくされているが、コロナ前は全国のスーパーで食育活動をしたり、また定期的に茶摘み体験や茶揉み体験も提供していた。

マスクに並ぶ公衆衛生的な使い方として

今後もしばらくは活動の制限が予測されるがこれらの資格や人材を生かした啓蒙活動を地道に続けていきたいという。

コロナ禍で最も注目されているのがやはり「新型コロナウイルスと茶カテキン」の関係であろう。京都府立医科大学との共同研究で、マスクに並ぶ公衆衛生的な使い方として役立つ可能性があるのではないか、という。

カテキンに似たような効果がある物質はほうじ茶や紅茶にも含まれているが、その辺りも今後研究していきたいという。


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