機能性表示食品、3000億円市場を突破
機能性表示食品市場が拡大している。2020年には約3000億円市場を突破したことが報告されている。
食品の機能性(効果効能)を表示するには、その機能に関与する成分が特定できること、さらに作用機序についてもエビデンスが求められる。
そこで食の科学的研究がどんどん進んでいるが、昔から体に良いとされる食品や食品成分の多くは、科学的に見ても優れた作用があることが次々と解明されている。
またそれらの機能性成分は生体内のさまざまな分子と反応することで健康効果を発揮することも解明されている、と立花氏。
今年度のノーベル生理学・医学賞は、人間の熱や接触を感じるセンサータンパク質TRPV1を発見した研究に贈られた。
これは唐辛子の辛味成分でカプサイシンの受容体発見がきっかけとなっている。カプサイシンだけでなく食品成分が機能性を発揮するメカニズムの多くは、生体内に存在する食品因子センサーとの結合から始まっているはず、と立花氏。
実際カプサイシンの受容体がTRPV1をというタンパク質であるように、大豆イソフラボンであればER(エクオールレセプター)、レスベラトロールであればSIRT1、カテキンであれば67LRと、体内には実にさまざまなレセプター(受容体)が存在している。
大豆イソフラボン、乳がん発症リスクと関連
大豆イソフラボンについてはがんや心疾患の予防、脂質代謝改善、骨代謝などさまざまな生体調整機能が報告されている。
多くの疫学調査によると、大豆イソフラボンの血中濃度が高い人ほど乳がんの発症リスクが低いことや、アジア人女性と比較して大豆摂取量が格段に少ない欧米人女性では乳がんの発生率が高いことなどが示されている。
近年は日本でも乳がんの罹患率が急速に上昇しており、日本人の食生活の変化と関係しているのではないかと指摘されている。
乳がんのがん細胞の60〜70%は女性ホルモンの一つであるエストロゲンの影響を受けて増殖することがわかっている。
これは、エストロゲンが乳がん細胞の中にあるエストロゲン受容体(ER)と結合し、がん細胞の増殖を促進することが起因している、と立花氏。
そのため乳がん治療に用いられるホルモン療法剤はエストロゲンがERに結合することを阻害しそれにより乳がん細胞の増殖を抑制するように働く。
大豆イソフラボン、エストロゲンと類似の構造
大豆イソフラボンはその構造がエストロゲンと類似しており、実際にエストロゲン受容体と結合することも分かっている。
これらの事実から大豆イソフラボン摂取による乳がんのリスク低減メカニズムには、エストロゲン受容体の関与が重要視されてきた、と立花氏。
しかし、立花氏らの最新の研究では、大豆イソフラボンのERへの結合能力は実際のところエストロゲンの1万分の1〜1千分の1程度と非常に弱く、エストロゲン受容体に依存しない抗がん剤作用のメカニズムがあることが解明されつつあるという。
実際、この着目から、イソフラボンのERに非依存的な生理作用に関わる遺伝子を、がん細胞増殖抑制作用を指標にスクリーニングしたところ、がん抑制遺伝子として知られるヌクレオチド転移酵素「PAPD5」を同定した。
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