びわ葉やみかん混合発酵茶の機能性
〜健康博覧会2022セミナー


2022年2月8日〜10日、東京ビックサイトにて「第40回健康博覧会」が開催された。同展示会セミナーより、上田周作氏(潟Tンダイ)の講演「長崎県産特許素材「びわ葉混合発酵茶、みかん混合発酵茶」の機能性」を取り上げる。


「びわ葉・みかん混合発酵茶」開発のきっかけ

長崎県は、認知度こそ高くないが全国で10番目の生産量を誇る緑茶の産地だ。品質にも自信があり、お茶の品評会では数々の賞を受賞している、と上田氏。

ただし、全国的に急須で飲むタイプの「リーフ茶」の需要はこの20年減少し続けており、販売単価も減少傾向にあるという。

お茶の価格は収穫時時期によって異なる。特に6月〜8月に収穫される「二番茶」「三番茶」は、一番茶に比べると「旨み」量が減少し「渋み」が強くなるため、価格の下落が著しい。

しかし、さまざまな機能性が報告されているカテキン類を多く含んでいるのは「二番茶」「三番茶」の方で、これをなんとか活用できないかと考えていた。

このことが「びわ葉混合発酵茶・みかん混合発酵茶」を開発する大きなきっかけになった。

ちなみに発酵茶とはどちらかというと紅茶に近い構造だ。緑茶と紅茶の違いは製造方法にあるという。

緑茶は収穫後に蒸したり炒ったりと熱を加えることで酸化酵素の働きを停止させてしまう。そのため、不活性の状態であることから茶葉を採取した時の緑色のお茶が楽しめる。

茶葉の酵素活性の働き、植物の中でも強い

一方、紅茶は収穫後に揉捻という揉み込む作業を加え茶葉に傷をつけ、さらに発酵させてから乾燥させることで、酸化酵素の働きを強める(酸化)。

この工程により、カテキンは酸化酵素であるポリフェノールオキシターゼにより、エピガロカテキンガレートやテアフラビンといった紅茶特有の機能性成分に変化し、お茶の色が茶色になり香りも独特に仕上がる。

果物にもポリフェノールオキシターゼが含まれ、野菜や果物が褐色に変化するのはこの酵素の活性によるものだが、茶葉の酵素活性の働きは植物の中でも強い方であることを長崎大学の薬学部が確認している。

さらに緑茶に果実を加えることでポリフェノールオキシターゼ活性を強めることができ、通常の紅茶よりも多い量のテアフラミンが抽出できることを発見した。

びわの葉と緑茶茶葉を蒸さずに揉捻する製造技術を確立

こうした結果を踏まえ、酸化酵素を活性しないように蒸さない茶葉に50種類ほどの農産物を加え、どの組み合わせで一番テアフラミンが増加するか調べた。



また紅茶ポリフェノールの機能性である血糖値上昇抑制、脂肪代謝改善作用などが強まるかをスクリーニング調査した。その結果、びわとの揉捻が最も高い活性であることが確認できた。

長崎県は、びわの生産量日本一を誇る。ただし、びわの果実はサイズが小さく産業化が難しい。そのため、選定されてほとんど活用されることのないびわの葉に着目した、と上田氏。

最終的には長崎県立大学、長崎大学、九州大学、長崎農林技術開発センターなどが連携し、びわの葉と緑茶茶葉を蒸さずに揉捻する製造技術を確立させ、「高機能発酵茶びわ葉混合発酵茶」が完成したという。

動物試験やヒト試験で確認

緑茶カテキンにも血糖値上昇抑制や脂質代謝作用が確認できているが、実は紅茶ポリフェノールの方がその作用は高い。

びわ葉混合発酵茶でも、動物試験とヒト試験で高い血糖値上昇抑制や脂質代謝が確認できている。

作用メカニズムは、カテキンがポリフェノールオキシターゼ活性によって変化して生まれたテアフラビン、テアシネンシン類、カテキン重合ポリフェノールなどが小腸で血糖値上昇に関するα-グルコシダーゼ活性を阻害するためである。

みかん混合発酵茶の開発に着手

同じような着目点から平成26年よりみかん混合発酵茶の開発にも着手。みかんの中でも特に破棄されがちな未成熟な青みかん果実にはヘスペリジンが多く含まれる。ヘスペリジンには血管強化・血圧低下・脂質濃度低減・血流改善などの機能性が確認されている。

ただし、ヘスペリジンは水に溶けにくく、小腸からの吸収が低いため体内では十分に機能しないことが課題であった。

しかし、ヘスペリジンと茶葉を混ぜて揉捻発酵させることでヘスペリジンが可溶化することを確認。みかん混合発酵茶を用いたヒト臨床試験では血圧降下作用、冷えや肩こりの解消、疲労感の低減、睡眠の質の解消などが確認できている。

現在、機能性表示取得の準備も進めている。地方からの新たな産業創出、破棄される農産資源の有効活用、価格の安い三番茶の有効活用など、期待値の高い混合発酵茶に注目してほしいとまとめた。


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