プラントベースフードをおいしくする機能性素材〜食品開発展オンラインセミナー

2022年2月14日〜28日、web配信により食品開発展オンラインセミナーが開催された。この中から、三井製糖鰍フ講演「プラントベースフードをおいしくするさとうきび抽出物・竹食物繊維のご紹介」を取り上げる。


2020年米国のプラントベース市場、6240億円超え

健康需要の高まりやSDGsなどの観点から、プラントベース食品市場が活況だ。2020年米国でのプラントベース市場は約6240億円を突破、欧州では6458億円を突破している。

日本の市場は、2019年度で178億円とされ、市場規模としては大きいとはいえないが、成長率は前年比130%とまだまだ十分に市場が拡大していくことが推測される。

とはいえ、日本人にとってのプラントベース食品は「代替食品」というイメージが根強く、特に「美味しくない」「食感が悪い」などの理由から敬遠されがちな側面もある。

これはプラントベース食品の原料の大部分が大豆由来であることと関係しており、どうしても豆独自の青臭さや、豆が持つ水分によるパサツキ、食物繊維の舌触りなどが原因ではないか。

プラントベース食品の「におい」や「見た目」を改善

大豆由来の食品はどうしても肉のような歯応えが再現できない。また水分が多いことから形成や焼き色にも遜色が出てしまう。

そこで、三井製糖ではプラントベース食品の「におい」や「見た目」を改善するのに有効な2つの食品素材を開発した。

それが「さとうきび抽出物」「竹食物繊維」である。この2つはあくまで食品素材であり、食品添加物でないというのもアドバンテージである。

プラントベース食品を好む人は食品添加物を敬遠し、植物由来の食品成分であるというだけで評価する傾向がある。

さとうきび抽出物でマスキング効果

まず原料の大豆の青臭い「におい」の課題を解決するのが「さとうきび抽出物」。この素材を使用することでマスキング効果が発揮され食品のにおいが軽減する。

ただ、なぜさとうきび抽出物が大豆のにおいをマスキングするかは完全にそのメカニズムは解明されていない。

しかし、さとうきび抽出物にはサトウキビポリフェノールという独自の物質が含まれており、これが悪臭物質と結合することが確認できている。おそらく包摂作用によりにおいが感じられないようになるのではないか。

このさとうきび抽出物は、沖縄県産で甘味はなく、液体・個体・粉体とさまざまな物質に利用できる高い汎用性もメリットである。

すでにコラーゲンやビタミンなどの好ましくない風味のマスキングや、実際の肉や魚の臭み消し、レトルト食品の風味・食感改善を目的としてすでに多くの食品に利用されているという。



実際の食肉は特ににおいの強いモツやオージービーフとの相性が良い。大豆たんぱくに添加する場合は0,01〜0.1kgの少量で青臭さが抑えられさっぱりした味わいに変化する。

さとうきび抽出物には食品の好ましくない味や不快なにおいを改善する効果だけでなく、細菌やウイルスの感染防御効果も確認できているという。

竹食物繊維で食感をアップ

また、加工食品の形成や食感改善に役立つ食品成分として竹食物繊維がある。原料に南米やタイなどの竹を使用、98%以上が不溶性食物繊維だという。

保水性と保油性が高いため、肉汁が流れ出すことを防いだり、食感をアップすることに役立つ。しか竹食物繊維そのものは無味無臭のため、必要な味のバランスを崩すことなく利用できる。

竹食物繊維を製造する際に、粒の長さ変えて5つのパターンで作り、粒の長さが長い程保水性や保油性が高くなるため、素材に応じた竹食物繊維を選ぶことができる。

現時点で、本物の加工肉や焼き菓子、パスタなどの麺類の質感改善や形成向上、弾力感アップなどに使用されている。また竹食物繊維を大豆由来の代替肉に添加すると肉らしい食感に変化して、遜色がなくなるという。

プラントベースフードをよりリアルに

実際、社内ではプラントベースの「あじフライ」や「ツナマヨ」を作る試験も行っているという。両方とも基本は大豆由来タンパク質で形成し、それぞれさとうきび抽出物・竹食物繊維を添加することで、形成時のベタつきや水の染み出しなどが抑制されたことが確認できた。

またアジフライ(魚風フライ)の方は、フライ後の官能評価でも魚独特の繊維感がなくサクッとした食感が保たれていることや、揚げチヂミがないことなども確認できた。

プラントベースツナマヨもさとうきび抽出物・竹食物繊維を添加することで、ベトつきや水分の染み出しが抑制され、パンに乗せたりおにぎりの具材にしても問題なく使うことができた。

また冷凍→解凍の手順で使用しても油浮きが有意に抑えられるなど良好な改善がみられたという。さとうきび抽出物・竹食物繊維を添加することで、プラントベースフードをよりリアルに仕上げる食品素材として有効利用できるのではないかとまとめた。


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