天然ヒト型セラミドのサーチュイン増強効果〜ifia JAPAN2022セミナー

2022年5月18日(水)〜20日(金)、東京ビッグサイトにて「ifia JAPAN 2022」が開催された。同展示会セミナーより、潟Wェヌインアールアンドディー(九州大学大学院農学研究院 福岡県醤油醸造共同組合 共同研究)の講演「天然ヒト型セラミドのサーチュイン増強効果」を取り上げる。


世界初、「天然ヒト型セラミド」の精製

福岡県に本社を置く潟WュヌインR&Dでは、平成22年よりさまざまな天然物から付加価値の高い機能性成分を発見し商品化している。

特に通常破棄されてしまう食品残渣から機能性成分を発見・開発・商品化することを得意としている。今回紹介する「天然ヒト型セラミド」も醤油のもろみ粕(醸造発酵粕)を原料にして開発されたもの。

「天然ヒト型セラミド」の精製成功は世界初であり、その優れた機能面も含め、大きな注目を集めている。

セラミドは私たちの体の全身に存在しており、外部からのさまざまな刺激や有害物質から体を守る「バリア機能」として大きな役割を果たしている。

美しく弾力のある肌を維持するためだけでなく、免疫や健康の観点からもセラミドは重要な物質だが、加齢により減少することもよく知られている。

30代からセラミドの量が著しく低下

特に30代からセラミドの量が著しく低下する。そのため、加齢とともにセラミドの補給を内外から行うべきだと考えられるようになり、セラミドを配合した化粧品やサプリメントが近年多数販売され人気となっている。

ただ、私たちの肌に存在しているセラミドは「ヒト型セラミド」または「フリー体セラミド」とも呼ばれるもの。

これまでいわゆる「天然セラミド」と表現されてきたものとも根本的な構造が異なることはあまり知られていない。

これまでサプリメントなどで利用されてきた「天然セラミド」はこんにゃくやとうもろこし由来のものが多く、天然素材から抽出されているので「天然セラミド」であることに間違いはない。

しかしながら植物由来のセラミドはどれも「糖」が結合しているため、正確には「グルコシルセラミド」と分類され、ヒト型セラミドとは構造に大きな違いがある。

醸造発酵物から作られ経口摂取が可能

一方、化粧品では「合成セラミド」がよく利用されている。しかしこちらは合成のため化粧品には利用できても食品として経口摂取することはできない。

つまりこれまで利用されてきた「天然セラミド」はヒトとは型が異なり吸収率が悪く、「合成セラミド」は経口摂取ができないという欠点があった。

今回ジュヌインR&Dが開発した世界初「天然ヒト型セラミド」は醸造発酵物から作られているため経口摂取することができ、化粧品としてもサプリメントとしても利用できることも最大の特徴である。

醤油粕由来の「天然ヒト型セラミド」は、他にもいくつかの特徴がある。まずは他種の分子構造に脂肪酸を含有しているという点である。

天然ヒト型セラミドには45種類以上の脂肪酸が見つかっており、中でも肌のバリア機能を最も支えているC24という長鎖脂肪酸が50%以上含まれている。



この構造は人の角質層にあるセラミドの構造と極めて類似しており、肌の保湿や保護など多数の機能性を発揮すると考えられる、という。

天然ヒト型セラミド、サーチュイン増強効果

さらに経口摂取した場合は、腸管でセラミド構造のまま吸収されるという特徴も解明されている。これまではサプリメントの場合、天然ではあるが非ヒト型セラミドが原料として使用されてきた。

しかし消化吸収性が低く、効果が限定的と考えらえてきた。一方、天然ヒト型セラミドはヒト型セラミドとほぼ同じ分子構造で純度90%以上、吸収率は合成セラミドの3倍、天然セラミドの15倍も高い。

九州大学片倉教授開発のサーチュイン遺伝子活性測定系を使った分析をしたところ、天然ヒト型セラミドによってサーチュイン増強効果があることも推測されているという。

腸管バリア機能が高まる可能性

現在私たちの細胞には老化や寿命の制御に関与する「長寿遺伝子=サーチュイン遺伝子」が存在することが確認されているが、哺乳類には異なる7種のサーチュイン遺伝子が見つかっている。

その中でも例えばSIRT1は細胞内のミトコンドリア活性、SIRT3は細胞内の活性酸素除去といった様子で異なる働きを担っている。

天然ヒト型セラミドをサプリメント利用を想定して経口摂取した場合と、化粧品を想定して肌細胞に塗布した場合、それぞれサーチュイン遺伝子にどのような変化が起こるのかを調査したところ次のような結果が得られた。

まず、腸管細胞培養液を利用した経口摂取を想定した試験では、腸管バリアを形成する20種類のタンパク質の中でも天然ヒト型セラミドはバリア層が弱くなる部分に働きかけ、腸管ジャンクション機能をアップさせる動きが見られた。

つまり天然人型セラミドを経口摂取した場合は、腸管バリア機能が高まる可能性が示唆された。

機能性表示食品の利用などへの活用が期待

一方、化粧品を想定した場合の培養細胞試験では、紫外線を照射してダメージを与えた細胞内のSIRT1が天然ヒト型セラミドの添加でミトコンドリアの回復が見られた。

つまりサーチュイン活性による肌ダメージの回復や老化抑制につながる知見が得られたという。

天然ヒト型セラミドは、醤油を作る際に発生する発酵粕から作られるというところはSDGsにも貢献するサステナブルな素材であり、また安全性試験も化粧品・食品共に完了している。

さらにこのセラミドをナノ化することにも成功しており、透明溶液化も可能だという。今後は化粧品・サプリメント、だけでなく機能性表示食品の届出などで食品利用などに活用されることも期待できるとまとめた。


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