米粉バブル目前!米粉の魅力とは
〜国際おやつ研究会セミナー


2022年5月23日(月)、web配信にて「第13回 国際おやつ(OYATSU)研究会オンラインセミナー」が開催された。この中から、タカコ ナカムラ氏(一般社団法人ホールフード協会代表理事/料理家)の講演「米粉バブル目前!米粉の魅力とは」を取り上げる。


日本の米、年間消費量が年々大きく減少

ナカムラ氏は昨今話題になっている「米粉ブーム」より以前から米粉に注目していた。米粉に興味を持ったきっかけは、日本の米の年間消費量が年々大きく減少していることを知ってからだという。

実際、農水省の調査によると日本の米の年間消費量は1962年がピークで、この年118.3kg(一人当たり1年間)消費があったが、2020年(令和2年)には一人当たり50.7kg(年)まで消費量が減少している。

なぜ米の消費量がこれほどまでに減少したのか。ナカムラ氏はその理由の幾つかを指摘する。

まずは「一汁三菜の変化」。鎌倉時代から続いてきた日本食の基本形である「一汁三菜」を近年では知らない人もいるほどで、朝昼晩に関係なくワンプレートディッシュが人気になっている。

インスタント食品や孤食で「米離れ」が加速

さらに1960年代からインスタント食品がブームになっているが、そのほとんどが洋食で、和食のインスタント化はなかなか増えない。

インスタント食品は麺類など、お米を用意しなくても食べられるものが多い。さらに家族形態な生活様式にも変化が見られ、家族で暮らしていてもそれぞれが忙しく「孤食」になりがちだ。

孤食の場合、その都度汁物を温めたり、ご飯をよそうのはどうしても手間で、やはりインスタント系のご飯になりがちだ。

何より、ご飯の食事は「おかず」を用意しなければ成り立たない。おかずを誰が作るのか、どうやって用意するのか、これらは現在のライフスタイルでは問題になる程だ。

こうしたさまざまな要因が重なり「米離れ」が加速している。

ここ数年「糖質制限」ブーム、米が敬遠

2011年の総務省調査ではついに「パンの消費量」が「米の消費量」を抜いた。これは昭和21年の調査以降初のことで、その後パンが米の消費を上回る状態になっている。さらにここ数年「糖質制限」ブームで、米がますます敬遠されている。

日本で米の消費量が高い都道府県は1位が福井・2位が石川・3位が北海道・4位が長崎・5位が山形、東京都は34位だ。

日本人にとって米は自給率100%の唯一の作物である。小麦の14%と比較しても日本人として大切にしなければいけない食材でる。

米粉、今流行りのグルテンフリー

食品の自給率を高めるため、減反が迫られている農家も多いが、田んぼは貯水や国土の保全機能も兼ねている。

日本の田園風景を残すこと、そして何より米食は日本人が後世に残すべき大切な食文化である。米粉を活用することで何か貢献できないかずっと考えていた、とナカムラ氏。

米粉と小麦粉の違いを比較しても米粉にはアドバンテージが多い。例えば米粉は今流行りのグルテンフリー食材である。小麦粉よりもカロリーや栄養価が低い。



栄養価が低いというのは決してデメリットではなく、胃腸に優しく消化もスムーズであるということだ。とはいえ、タンパク質・脂質、玄米には微量栄養素も含まれている。

しかも油の吸収が少ないためヘルシー。脂質が少ないため、酸化しにくく常温保存が可能というメリットもある。

米粉、4種類の性質

米粉には4種類あり、性質が米粉ごとに異なる。基本はもち米から作られたアルファ型・ベータ型、うるち米から作られたアルファ型・ベータ型の4種。

もち米とうるち米とではでんぷんの種類や割合が大きく異なる。さらに「でんぷん損傷」といって、米を粉砕する際にでんぷんが傷つくが、損傷の違いによっても米粉の性質が変わる。

しかし、市販されている米粉には原料の種類や損傷度などが表示されておらず、表示の決まりもない。

「菓子料理用は1番」「パン用は2番」「麺用は3番」とされているだけで、実際は2種類の1番の米粉それぞれ10gに10gの水を加えても、ベトベト・ベチョベチョ・パサパサ・ネバネバと、種類や損傷率が異なることで仕上がりが全く違ってしまうことがほとんどだ。

「表示基準」を作る必要がある

損傷率が高い米粉やアミロース量が少ない米粉ではパンや菓子は上手にできないが、表示がないから米粉を買ってみないと、どれくらい水を加えるのが適正なのかプロでも検討がつかない。

そのためせっかく米粉を料理に使っても失敗するケースが多く、米粉を敬遠してしまう人が多い。この問題点を解消するには近い将来米粉にも「表示基準」を作る必要がある、とナカムラ氏。

小麦粉には強力粉・中力粉・薄力粉があり、それぞれが何を作るのに向いているか誰でもわかるようになっているし、品質に大きなばらつきはない。

米粉もそうなる必要があるだろう。一方、米粉には原産地表示(トレーサビリティー)は義務付けられているため、何処産の米なのかをチェックして地域貢献することができる。

空前の米粉ブームが起こりつつある

米粉の大きな特徴は、片栗粉・葛粉・コンスターチと比べると糊化温度が高いため、「冷めると固くなるもの」に特に適している。例えばクッキー・タルト生地・カスタードクリームなどはぜひ米粉で挑戦して欲しい、とナカムラ氏。

現在は、円安や輸入品の高騰などもあり、空前の米粉ブームが起こりつつある。2021年度の米粉用の需要量は4万1千トンで、2014年の2倍増加である。

政府も物価高騰の対策に米粉を使った商品開発に取り組む事業者への支援事業を盛り込んでおり追い風は続きそうだ。米粉のレシピ開発などにも力を入れているため、それらもぜひ活用して欲しい、とナカムラ氏はまとめた。


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