しかしながら、何らかの理由で細胞の核外に出てしまうとFOXOは不活性体となり、細胞の修復エラーが起こる。
アルツハイマー発症予防も期待
FOXOを細胞の核内にとどめておくにもカロリー制限が有効ではないかと示唆されているが、「テトラヒドロクルクミン」もFOXOを活性化することで老化抑制遺伝子群の発現を増加させることが解明されている。
さらに「テトラヒドロクルクミン」には神経保護作用も確認できており、アルツハイマー発症予防効果も期待できる、と大澤氏。
このように優れた機能性と可能性をもつ「テトラヒドロクルクミン」だが、これまでは腸の上皮細胞で吸収される過程で生成されることしかわかっていなかった。
しかしここ最近、食品産業で使用される「酵母」によっても変換されることが明らかになった。
「発酵ポリフェノール」という新分野が誕生
さらに、人由来の腸内細菌(乳酸菌)によっても変換されることが明らかになり、製品化への期待が一層高まっている。
酵母や腸内細菌(微生物)による変換にはメリットが多い、と大澤氏はいう。ポリフェノールそのものはどんなものも非常に吸収率が悪く、体内で機能性を発揮する十分な量を食品から摂取するのが容易ではない。
しかし食品に含まれる微生物で発酵させるだけで、吸収率が大幅に改善するだけでなく、「テトラヒドロクルクミン」のように元々のクルクミンと比較しても抗酸化性やがん抑制作用性などが有意に上昇する可能性が高い。
つまり、今後食品開発において「発酵ポリフェノール」という新分野が誕生することで、機能性の増強作用や苦味の低減などさらなる可能性が広がるということだ。
食から認知症予防を実現
現在「食から認知症予防を実現」をテーマにさまざまな「発酵ポリフェノール」が研究されはじめている。例えば「発酵アスタキサンチン」や「発酵レモン」「発酵ゴマリグナン」そして「発酵ウコン」などがその代表的ものだ。
また、1000種類以上あるとされる腸内細菌叢からも、それぞれの類縁体に対し還元能をもつものが徐々に特定されはじめている。
この発酵ポリフェノールの機能性についてヒト臨床試験などが行われ、有効利用されることが高齢化社会においても意義のある研究になるのではないかとまとめた。
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