立花氏らの研究によれば、ダイゼインとエクオールはPapd5という体内酵素を活性しこれがERを介さずに、がん細胞増殖抑制分子として関与していることを同定したという。
Papd5は核小体低分子RNAをアデニル化活性する酵素であることがわかっていて、ダイゼインとエクオールがPapd5に依存的に働きかけ活性することで、がん細胞増殖を抑制しているのではないかという。
大豆イソフラボンの抗がんメカニズム
ただし同じく大豆イソフラボンであるゲニステインにはそうした活性が見つからなかった。
さらに、がん細胞の増殖に関与するとされているmiRNA320aに注目すると、ダイゼインとエクオールはmiRNA320aを増加させることもわかってきたという。
しかもPapd5の活性とmiRNA320aの増加により、がん細胞の増殖に重要な働きをしている「βカテニン」の発現を低下させていることがわかった。おそらくこれが大豆イソフラボンのER以外の体内動体経路による抗がん作用のメカニズムではないか、と立花氏。
ちなみに、miRNAとは遺伝子の発現に転写レベルや翻訳レベルで関与し、あらゆる生命現象に多岐に渡って関与している。
miRNAはエクソソームなどに存在していて、血液中を循環し、細胞間コミュニケーションの役割も果たしている物質だという。
食品摂取とmiRNAの関係が注目
これまで、miRNAは生活習慣病や癌の疾病マーカーとして使われることが多かったが、食品成分の摂取によって変化することも最近報告され、まさに今現在、食品摂取とmiRNAの関係について注目が集まっている。
しかし食品成分においてmiRNA320aの発現量を増加させるのは今のところダイゼインとエクオールのみしか見つかっていない。
抗がん作用が知られる食品成分としては、他に緑茶ポリフェノールEGCGがある。EGCGは別のmiRNAが関与していることで抗がん作用を発揮していることもわかっている。
ただEGCGはPAPD5を活性しないこともわかっている。成分によって活性や代謝の作用には違いがあるため、新たな研究課題だと話した。
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