ちなみに、1990年はガイドライン作成にあたり、参考文献が225件しか用いられなかったが、近年各分野の研究が進み、2005年には850件の文献が、今回2010年度版においては1244件の文献が用いられたという。
これらの文献から、より科学的根拠に基づいた策定を行なうため、各摂取量の基準数値が変動する。科学的エビデンスレベルが上がるたび、今後も変わると佐々木氏。
2010年度版で大きく変わったのが、「ライフステージ」という項目の追加。「乳児・小児」「妊婦・授乳婦」「高齢者」への特別の配慮が必要な事項として整理された。
中でも「エネルギー」は、「推定エネルギー必要量」がライフステージごとに変更となり、小児及び若年女性では減少し、高齢者では増加となった。また「ナトリウム」の摂取基準は男性が10g未満であったのに対し、9.0g未満に変更、女性は8g未満であったものが7.5g未満へと変更となった。
「耐容上限量」、過剰摂取による健康障害を防ぐための指標
摂取基準には、「健康の維持・増進と欠乏症予防」のために「推定平均必要量」と「推奨量」という用語を使っている。エビデンスの不足からこの指標を設定できない栄養素については「目安量」という表現にしている。
また過剰摂取による健康障害を防ぐための指標として「耐容上限量」という用語を使用(2005年度版までは「上限量」という用語を使用)。生活習慣病の一次予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量を「目標量」として定義しているという。
「脂質」、エビデンスが少なく「目安量」と「目標量」のみ
今回「脂質」については、エビデンスが少ないため「目安量」と「目標量」で基準値を設定。個人の代謝特性は考慮されていないため、「目安量」や「目標量」が各個人に当てはまるかは断定できない。疾患には栄養だけでなく多くの環境や遺伝因子が存在するため、柔軟な対応が必要と佐々木氏。
食事摂取基準はガイドラインとして存在しなければ各事業で業務ができないため必要不可欠であることに間違いはないが、各基準数値よりも、ガイドラインの考え方をまずは理解することが大切という。
ガイドラインの理解不足や数値にばかり気を取られる事で、各論や基準値の誤解、誤用につながると指摘。エビデンスレベルは上がってきているが、個人個人の状態をしっかりと判断し柔軟な対応が求められると述べた。
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