生活習慣病予防で雑穀にニーズ、
豊富な食物繊維や高い抗酸化作用


2010年3月19日(金)、東京ビックサイトで開催された「健康博覧会2010」で、料理研究家でビューティーレシピストの松見早枝子氏が、ミレット(雑穀)のいまを解説。消費者はミレットに対して何を求めているのか、今後のミレットを展望した。


新しい食材としてのミレット

雑穀エキスパート資格を持つ松見氏は、元ミス・インターナショナル日本代表でもあり、美と食に関するプロフェッショナルとしてさまざまなメディアで雑穀レシピを開発、発表している。

近年はオーガニックやマクロビオティックのブームもあり、雑穀は多くの消費者に知られ注目を集めているが、その理由として、@そもそもヘルシーであり、Aビタミン・ミネラルだけでなく抗酸化物質が多く含まれるため、健康だけでなく美容やアンチエイジングに効果的であることが広く知られるようになったからだという。

近年は雑穀をあえてミレットと呼ぶことでオシャレ感も加わり、従来の「白飯がないから仕方なく変わりに食べる雑穀」というネガティブなイメージも時代とともに薄れ、今は「ミレットという新しい食材」として捉えられている側面もあるのではないかと述べた。

ミレットとしてポピュラーなものにヒエ、キビ、アワなどのイネ科の植物や、近年はソバ、キアヌ、アマランサスなどがあり、これらはいずれも白米より高価な食材となっているため、希少価値やオシャレ感がさらに加わっているようだ。

とくにミシュランに掲載される星付きレストランでもミレットをオシャレで新しい食材として使用する店舗が増えており、ミシュラン常連レストランのカンテサンスやジョエル・ロブションなどのフレンチレストランではヘルシーとガストロノミー(美食)を兼ね備えた食材としてミレットを消費者に提供している。ミレットは栄養面が高いだけでなく、色と香り、風味に独特の特徴があるため、レシピの幅を広げる食材という一面でも活躍しているという。

ミレット、それぞれの食品機能について

黒米(古代米)、赤米(古代米)にはポリフェノール、アントシアニンが豊富に含まれ、抗酸化作用が高い。
大麦には食物繊維が豊富に含まれており、血糖値上昇抑制作用が期待できる。アワも食物繊維が豊富で脂質代謝改善機能が強い。
キビにはマグネシウムや鉄分も豊富に含まれていて善玉コレステロールである血中の高密度リポタンパク質を高める効果があるといわれている。
ハトムギは中国でも古くから漢方として用いられ、利尿作用や解毒作用が高いとされている。化粧品に使われることも多く、皮膚の保湿効果や美肌高価も期待できる。

ミレットは海外でも注目を集めているが、なかでも有名なミレットがスーパーミレットと呼ばれているアマランサス。メキシコからアンデス山脈を原産としおよそ4000年前から栽培されている。

他のミレットよりも栄養素が数十倍と抜群に高く、アメリカの航空宇宙局NASAも「21世紀の栄養食品」と太鼓判を押している。プチプチした食感が特徴的で貧血や骨粗鬆症の予防に効果があるともいわれている。同じくアンデス山脈などを原産としているキアヌもカルシウム、ビタミン、ミネラル、タンパク質のバランスが非常に良く、コレステロール値を下げる効果が期待されている。

ミレットのこれから

国内では減反政策や農業離れで荒れてしまった田んぼが増えているが、その田んぼを米ではなく雑穀を育成することで甦らせようとする動きもある。雑穀は土地への適応能力が優れていて、もともとやせ地や寒冷地でも栽培できるという性質を持つ。病害虫や気候の変動にも強く肥料もそれほど必要としない。

休耕田でも十分に栽培できるそうだ。そういった強く優れた性質をもつ雑穀のエネルギーを我々人間がいただくことにより、目に見えない強いパワーを享受できる。農家にとっても生産面での負担が少なく、消費者の健康にも大いに役立つミレットは、栄養面だけでなく生産面、保存面でも優れた、まさに21世紀に必須の食べ物なのである。

現状、我々が手にするミレットは中国産が多く、日本産のミレットはかなり希少価値が高い。しかし日本の雑穀には独特の味わいとモチモチとした食感があり、安全性も高いため、高価な食材ではあるが、そこを付加価値として多くの消費者に理解を得ることができればと、雑穀を生産するセミナー参加者からも声が上がった。

さらにご飯に混ぜて炊いて食べるばかりでは、雑穀の消費量はなかなか上がらないので、スープやパン、うどんなどといった、メニュー開発にも力を入れたいと松見氏はまとめた。


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