一口に30回以上噛んで味わう食べ方「噛ミング30(カミングサンマル)運動」を推進
「食べる」とは人を良くするという文字から成り立つ。その文字が示すように、「食べる」ことで人はより良くならなければならない。ストレスになるような食事、病気を招くような食事、寂しさや侘しさ、むなしさを感じるような食事では、本当の「食べる」には値しないのではないか。
栄養士会会長の中村氏は述べる。私たちにとって「健やかな食」とは「身体の栄養」のみらならず、味わいや寛ぎなど「心の栄養」として心身の健康を育むことに深く関わるばかりか、共に食することで人々の連帯意識が高められ、地域づくりや食文化の醸成にも寄与する。
「食べる」ことは自然の命をいただくこと。我々人間は、自然の命をいただき、生きながらえている。だからこそ私たちはより良い人生を送らなければならない。
また、日本歯科医師会会長の大久保氏は咀嚼の重要性について触れる。私たち人間には異物を侵入させないという免疫が備わっている。免疫機能があるために、人間同士の臓器移植や輸血でも不適合であれば拒絶反応を示す。
しかし、私たちは牛の肉を食べることができる。なぜならば、私たちは咀嚼をすることができるからだと大久保氏はいう。生物学者の福岡伸一氏は自書で「牛の肉を食すとき、私たちは咀嚼することで、その肉から牛の情報を消している」と述べているが、まさにそこに咀嚼の重要性があると大久保氏。
日本歯科医師会と日本栄養士会は「食べることは生きることであり、生きることは食べ続けることである」という言葉を基本に捉え、豊かな人間性を育むことを可能とする「あるべき食」や「食べ方」に対する知識と実践、食育の推進を行なうために以下の宣言を発表した。
1.生涯にわたって安全で快適な食生活を営むためには、栄養のバランスをとりながら、しっかり噛むことであり、それを通して、味わい深く、心豊かな人生を営むことを目的とした食育を推進する。
2.嚥下するまでに30回程度は噛み砕くのに必要な固さの食品や料理を選び、さらにそれを一口に30回以上噛んで味わう食べ方である「噛ミング30(カミングサンマル)運動」を推進することで、「食」と「栄養摂取」と「健康」のあるべき形を推進する。
3.食に関わる団体等と連携・恊働し、食育の重要性を広く国民に訴え、社会的な活動として、これを推進する。
「食」の専門家として歯科医師会、管理栄養士、栄養士、「食」と「健康」に関するすべての職種の専門家が、健全な食生活を実践することができる人間を育み、すべての人々が健康で心豊かな食生活を営むことができるようにその責務を果たし、国民運動である食育を広く推進したいと宣言した。
脳機能からみた咀嚼法のすすめ
大分医科大学名誉教授の坂田利家氏は「脳機能からみた咀嚼法のすすめ」と題して講演。21世紀の食のテーマは「食の暴走をとめること」ではないかという。都市化された社会で食物は氾濫し、お金さえ出せば昼夜を問わなず、食に瞬時にありつける。
食材本来の味を生かし、栄養バランスのとれた健康的な食事よりも、人工的で濃い味付け、高エネルギーで見栄えのよい料理ばかりを好むようになっている。このような環境下では、食本来の脳機能は発揮され難い。
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