タンパク質分解系の破綻が重篤な疾病を引き起こす原因か
私たち人間の生命を支える重要な機能素子であるタンパク質は細胞内で絶えず合成と分解を繰り返している。60兆に及ぶ細胞の2%は日々死滅・再生している。
表皮はおよそ30日、腸の粘膜はおよそ5日で生まれ変わる。白血球はおよそ3〜5日、粘膜細胞もおよそ3〜5日、血小板は10日〜14日、赤血球は4ヶ月、肝臓は1年半、骨は1年に18%程度生まれ変わる。
人が1日に摂取すべきタンパク質の量はおよそ70gといわれる。摂取したタンパク質は消化酵素によって分解されアミノ酸に変わり、体内で再び合成され(=再生)、体タンパク質になり、不要なものは分解(=処理)され排泄、あるいは糖やエネルギーとして使われる。
このリサイクルシステムが、いわゆる新陳代謝だが、主役のタンパク質分解は、栄養素の確保や細胞内に生じた、不良品、不要品の効率的な除去のために積極的に作動している。近年、このタンパク質分解系の破綻が神経変性疾患やガンなど重篤な疾病を引き起こすのではないかと研究が進められている。
タンパク質分解酵素のカルパイン、対ストレスで作用
人の体内では、タンパク質は100〜300個のアミノ酸(全20種類)が数珠のように繋がり構成されている。その一つのまとまりはドメインと呼ばれ、ドメインとドメインもタンパク質の糸で結ばれている。タンパク質分解には酵素が重要な役割を果たしているが、なかでも「カルパイン」というタンパク質分解酵素が近年注目を集めている。反町氏はカルパインを専門に研究している。
反町氏によると、カルパインは私たちの細胞内に存在し、カルシウムにより活性化される分子だが、役割の全容はまだ解明されていないという。ただ、タンパク質のまとまりであるドメインとドメインを繋ぐタンパク質の糸を切断する役割を果たすことは明らかになっているという。
私たちは生きていく上で、様々なストレスや変化に遭遇する。
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