健康食品、表示の在り方や今後の方向性など討論〜薬業健康食品研究会「平成22年度シンポジウム」

2010年6月3日(木)、お茶の水ホテルジュラク(東京都)で、薬業健康食品研究会「平成22年度シンポジウム」が開催された。第一部は「健康食品の表示の課題と今後の方向性・取り組みについて」の基調講演を消費者庁 食品表示課長 相本浩志氏が行ない、第二部として「健康食品・サプリメントの表示の今後のあり方-消費者利益に導く食品表示の課題と今後の行方」についてパネル&フロアディスカッションが行なわれた。

第一部 基調講演「健康食品の表示の課題と今後の方向性・取り組みについて」
      消費者庁 食品表示課長 相本浩志氏

基調講演では昨年度発足された消費者庁の業務内容及び、消費者委員会の意義と意味、関連法規についてのガイドラインの説明が主軸に行なわれた。

消費者庁が担当する業務は多岐に渡るが、そのなかでも食品表示に関する取り組みは大きな役割を果たしており、食品衛生法、JAS法、健康増進法の3つを一元的の掌握している。

発足してすぐに、食品の問題として社会的ニュースになったいわゆる「エコナ問題」について、消費者庁がどのような役割を果たしたか、相本氏は以下のように報告した。

まず、エコナ関連製品について、食品の安全に対する消費者の不安が大きく広がったため、消費者の不安を解消させるためにプロジェクトを迅速に発足させた。

プロジェクトにおける検討事項として、特定保健用食品の許可を行なった製品について、その後新たな科学的知見が生じた場合などにおける対応指針をどのようにするかについて、そして食品の安全性等について消費者から不安や懸念が寄せられた際の対応指針について、また消費者の的確な選択に資する情報提供の方法についてなどが主なものであった。

これらの検討事項を主軸に検討会は9月29日から週一回のペースで計5週に及び開催され、関係者や消費者委員会とのヒアリングや意見交換を行なった。

このプロジェクトの最終報告としては、エコナ関連製品についてはいわゆる「特保」の許可が下りた(平成10年-15年)その後にも、食品安全委員会におけるリスク評価や科学的知見の充実による再審査を行なうべき状況に至ったと判断され、このため、食品安全委員会及び消費者委員会の意見をベースに特保に係る表示の許可を取り消すかどうかを再審議すべきであると報告された。

そして、消費者庁については関連商品のリスクについて消費者に対して広く情報提供することや、消費者とのリスクコミュニケーションを積極的に図ること、消費者からの相談への対応はもちろん、今後の適切な広報のありかたが協議、報告されたと相本氏は解説した。

これを機に、健康食品の表示に関する検討会も開催されたと、その経緯を相本氏は報告する。「健康食品の表示に関する検討会」は、健康増進法に基づく特定保健用食品等の表示制度を含め、いわゆる健康食品に関する表示の課題に関する論点を整理して検討を進めるために13名の構成員でスタートした。

主な検討項目としては、1)健康食品の表示の現状の把握及び課題の整理、2)特定保健用食品等健康増進法に基づく特別用途食品の表示制度のあり方について、3)健康食品の表示の適正化を図るための表示基準及び執行のあり方についてなど。

この検討会は第一回が昨年の11月25日に開催され、先月5月18日には第9回目が開催され、論点整理がすでに行なわれている。今後のスケジュールとしては、6月、7月に引き続き論点整理を行ない、8月には報告書を消費者委員会へ提出しさらなる議論を進める予定だと相本氏は報告した。5月に開催された検討会では論点整理のたたき台が作成された。

特定保健用食品については、表示許可制度の透明化を図るために審査に必要な試験デザインの枠組みや公表すべき情報の許可範囲を見直すこと、消費者へ適切に情報を伝えるための摂取条件を記載させるなど表示方法を改善すること、いわゆる「健康食品」については健康増進法に基づく虚偽、誇大表示規制の効果的な執行を図るため、取り締まりに係るガイドライン等を作成することなどである。

最後に消費者庁としては、インターネットにおける健康食品等の虚偽、誇大表示に対する指導についても強化して実施していることを相本氏は報告した。平成21年度の「健康食品インターネット広告実施調査」においては、消費者を誤認させる表示が547件確認されたそうである。

今後も消費者庁はサイトの監視を継続し、適切な処置を行なっていきたいとまとめた。

第二部 パネル&フロアディスカッション
「健康食品・サプリメントの表示の今後のあり方
--- 消費者利益に導く食品表示の課題と今後の行方」

<パネリスト>
蒲生恵美(日本消費者生活アドバイザー・コンサルタント協会 食生活特別委員会 副委員長)
宗林さおり(国民生活センター 商品テスト部 調査役)
大濱宏文(日本健康食品規格協会 理事長)
木村毅(健康食品産業協議会 委員長)
浜野弘昭(日本国際生命科学協会 事務局長)
司会進行 吉岡一彦(薬業健康食品研究会 事務局長)

第二部ではまず、蒲生氏と宗林氏より健康食品に関する表示の現状やトラブル、相談などの実状が報告された。これらの報告事例より、吉岡氏は健康食品については片付けなければならない問題が山積していることは誰もが理解しているが、問題がなかなか解決できない理由として、食品の機能性表示と薬事法の問題があり、それをどう解決して行くべきか、会場から意見を求めた。

吉岡氏は、カプセルや錠剤といった健康食品は明らかにいわゆる「明らか食品」と定義できるものではなく、食品でも医薬品でもないと誰もが理解しているからこそ、「サプリメント」や「濃縮食品」と名付けた第三のカテゴリーを作り、登録制などにして薬事法と切り離すべきではないかと提言した。

健康食品の安全性が取り汰たされるなか、事業者側としては機能性や用法、用量について表記できない以上、安全性の話しをすることすらできない現状がある。諸外国でもサプリメントや機能食のカテゴリーはすでに存在しており、製造方法の安全性を担保する上でも役立っていると吉岡氏。

これに対し蒲生氏は、カテゴリー分けすることには意味がないと反論。トマトにしろ機能はあり、カテゴライズすることそのものが不可能であると述べる。それ故、機能性成分がどれくらい入っていて、どのような人に、どのくらいの量と期間で効果があるのかをとにかくわかりやすく表示することと、それを理解する消費者教育が先決だと述べた。

会場からは、そもそも機能性食品や食品機能には摂取者との相性というものがあり、どれくらいで効果があるのか、ということについては明示しにくいものがかなり多いという意見もあった。例えば漢方であれば摂取者との相性、摂取者の体調、体質により効果や効果を感じるまでの期間に個人差がある。これを調査し、商品に表示して販売することにどれくらいの意味があるのか疑問があると問いかけた。

また、健康食品によるトラブルがさまざま報告されたが、明らかに悪質で詐欺まがいの事件と、健康食品の機能性についてどのようについて表示すればよいかという問題については、まったく別の問題として議論したほうがいいという意見も会場からあがった。

その他、JHFAマークの取得は自主性に任せている現状があるが、なぜ強制化しないのか、マークばかり増やすことに意味があるのか、特保も含めマークそのものの広報をどのように消費者に行なうべきか、など多くの意見が活発に交わされた。

いずれにせよ、100%安全な食べ物は存在しない。健康食品やサプリメントの安全性についても同様である。

本来、健康作りは食品によるべきだが、普段の食生活では十分な栄養成分が摂れないという現状もある。健康食品やサプリメント摂取については、消費者が自らの体質や体調を考慮し、必要なものを適切な量だけ摂るという選別力を身につけるしかない。



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