アンチエイジング、「カロリス」と「抗酸化」がカギ
眼科医として数多くのレーシック手術で実績を残す坪田氏は、レーシックの手術後に患者がなんらかの若返り効果を実感していることから、アンチエイジングにも興味を持ち平行して研究を行なうようになったという。
これまで「老化」とは自然の摂理でありそれを食い止めることはできないと、なかなか介入されることのなかった領域であるが、近年は多くの研究により老化が遺伝子の生物学的プロセスであり、介入が可能だと考えられるようになっていると坪田氏は語る。
老化に対するアプローチとして、現在科学的裏付けを得ていて実践できるものは2つ知られている。その一つがカロリス(カロリーリストリクション)、つまり低カロリー食のことである。これまで多くの動物でカロリーを通常摂取量が7割程度に抑えることで、病気を防ぎ、若さと健康を保てることが証明されてきたが、近年同じ霊長類である猿でも同様の効果が報告され、ヒトにおいても研究中ではあるが、ほぼ同様の効果が期待できると考えられていると坪田氏は述べる。
もう一つは「抗酸化」で、これは近年良く知られるようになっている。活性酸素により細胞が酸化し、組織や細胞が損傷してしまうことが老化につながるため、酸化を防ぐ抗酸化物質の摂取や抗酸化酵素の働きを活性化させることがその対策となる。
レベストラロールというポリフェノールの一種である栄養素を投与することで、抗酸化のみならずカロリスと同じ効果が得られることもマウスの実験で報告されており、このように食品機能が遺伝子レベルに影響することは大きな話題となっているという。
予防医学の発展とともに機能性食品がさらに注目
ただしレベストラロールにせよ、ビタミンCにせよ、十分なアンチエイジング効果を発揮させるために必要な量の抗酸化成分を摂取するのは、容易なことではないため、やはり良質なサプリメントや健康食品の摂取などが鍵となると坪田氏。
坪田氏自身も10年に渡り80種類のサプリメントを摂取し、カロリスの他に、適度な運動や「ご機嫌であること(=ご機嫌運動)」を心がけて実践しているそうであるが、この10年で体脂肪は5%落ち、健康診断の結果を比較しても全体的に若返りといえる効果を示しているという。
これまでは薬により遺伝子発現の変化が治療として重要視されてきたが、今後は予防医学の発展とともに機能性食品による遺伝子発現の変化にもっと注目が集まるだろうと坪田氏。食べ物の場合、局所的に効くのではなく、ジェネラルに効果を発揮し遺伝子に作用するため、なかなか研究が難しいが、食物を利用したアンチエイジングの研究とその実践は今後もますます発展するだろうとまとめた。
健康食品の安全性確保について
厚生労働省 医薬食品局 食品安全部 基準審査課 新開発食品保健対策室 健康食品安全対策専門官
松井 保喜 氏
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消費者のためにもより一層の安全性が確保されなければならない
国民の健康に対する関心の高まりを背景に、数多くの健康食品が販売され利用されているが、これら健康食品が消費者それぞれの食生活や健康状況に応じた適切な選択をされるように、一定の基準規格や表示基準等を定めるなどの、行政的な取り組みは以前から行なわれている。
しかしながら、健康食品の人気の高まりは、これまで一般に口にされることのなかったものを原材料とするものや、錠剤、カプセルなどの医薬品に類似した特殊な形状なものなど、多種多様な健康食品の出回りに拍車をかけており、多くの健康被害や詐欺被害といったトラブルが後を絶たない現状がある。
いわゆる健康食品といっても、法令上の定義がないため、広く健康の保持増進に資する食品として利用、販売されるもの全般を指しており、消費者のためにもより一層の安全性が確保されなければならず、そのための行政の取り組みは極めて重要だと松井氏。
健康食品の製造までの段階においては、食経験のない食材の増加など原材料の安全性の確保が改めて問題となっており、製造される製品の品質の確保を図るためにも、製造工程の適切な管理も求められている。
さらに、消費者が適切な健康食品を選択するための商品表示方法や、情報提供・相談支援を受けられる体制も未だに十分な整備が整ってはいない。健康食品の摂取による健康被害が発生した場合でも、その被害が道外製品によるものか否かの因果関係の把握が用意ではなく、現段階でも健康被害情報の分析収集は進んでおらず、類似する事案の再発防止に役立つレベルとはいえないと松井氏は述べる。
これらの現状をふまえ、平成19年7月以降、計9回にわたって「健康食品の安全性確保に関する検討会」が開催された。とりわけ第三者認証の仕組みや消費者に対する普及啓発活動、また健康食品のアドバイザリースタッフの育成などが今後の方向性として位置づけられたが、薬事法の問題など、ほかにも関連する問題は多くあるため、健康食品の安全な市場を確立するためには今後より一層の努力が必要であるとまとめた。
第三者認証制度、業界自主規制案について
キリンホールディングス健康・機能性食品事業推進プロジェクト・アドバイザー
健康と食品懇話会相談役
太田明一 氏
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科学的根拠に基づいたトクホ、世界に先駆けた制度
以前厚生労働省が開催した健康食品の安全性に関する検討会によって、健康食品の安全性を担保する仕組みとして第三者認証制度の導入が必要な方策としてあげられている。
業界では第三者認証制度を立ち上げるべく連携し、今年2010年4月に(財)日本健康・栄養食品協会が認証団体として第一号の指定を受けるに至ったが、2009年に安全性以外の健康食品の監督責任は消費者庁に移り、その後すぐに発生した特定保健用食品に関する安全性への懸念問題から、健康食品の表示に関する検討会等が引き続き開催された現状があると太田氏は解説する。
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