女性の更年期障害やPMS、漢方の効果
に期待〜公開講座「女性と漢方」


2010年6月26日(土)、ウィリング横浜で、公開講座 漢方と疾患シリーズ「女性と漢方〜これって更年期障害?これってPMS?〜」が開催された。講師は、慶応義塾大学病院 漢方クリニックの沢井かおり氏。漢方薬の女性特有の疾患にはたす役割を講演した。


女性の不定愁訴、要因はホルモンバランスの乱れ

講師の沢井氏は、産婦人科医として20年以上のキャリアがあり、女性の慢性疾患に漢方薬を処方した経験もあるが、漢方薬の奥深さに魅了され、専門的に学び、現在は慶応義塾大学病院漢方クリニックで外来も担当している。

多くの女性が抱える不定愁訴。イライラや頭痛、肩凝りやむくみ、体の冷えやほてりなどの原因は様々だが、例えば頭痛だと、西洋医学的には「緊張性頭痛」「ストレス性頭痛」などと分類し、鎮痛剤を処方するという方法で対処することになる。

ところが、女性の不定愁訴の要因はホルモンバランスに寄るところが大きく、年齢的に40代以上であれば、更年期障害、40代以下であればPMS(月経前症候群)であると考えた方が、根本的な解決に近づくのではないかと沢井氏は述べる。

更年期障害もPMSも症状は類似している。イライラ、頭痛、めまい、たちくらみ、肩凝り、冷え、ほてり、疲労感、動悸、うつっぽい、食欲異常などであり、症状に個人差があるものの、原因はホルモンバランスの変化。

とはいえ、冷えやほてり、疲労感、食欲異常を解決するのにベターな薬は現在のところないと言ってよいと沢井氏はいう。そこで登場するのが漢方薬。漢方薬は女性のための薬だと言っても過言ではないと沢井氏。
女性は思春期に生理がはじまり、そこから月の満ち欠けのようにホルモンが日々変化するが、妊娠出産、年齢、閉経、生活環境でそのホルモンの状態はがらっと変わることになる。

ホルモンバランスの乱れは体調不良の原因となり、そのため女性の病気は男性の十倍も治しにくい、と1000年以上前の中国や日本の医学書にも書かれているという。

「気」「水」「血」を整え、体質改善を図る

漢方の診断は主に体質が「実証」であるか「虚証」であるかの虚実診断からはじまる。中国医学では身体のなかにある「気」「水」「血」が多すぎず、少なすぎず、滞りなく体中をめぐっていることが健康であると考えられており、これらのバランスが滞っていたり崩れていたりすると病気の元となると考えている。

頭痛は「お血」(血液の流れが悪く滞っている状態)が原因ともなるが、「水毒」(水分が溜まり排出されにくい状態のこと)でも起こると中国医学では考える。西洋医学ではAの病気の原因はB、Aの症状に効く薬はB、と一対一の関係がベースとなるが、中国医学や漢方の世界ではそうならないことが大きな違いだと沢井氏は解説する。

そのため、病名や症状があいまいな女性の不快感や症状こそ、漢方薬を日常的に摂取することで「気」「水」「血」を整える体質改善になり、予防、緩和のいずれにも効果的だという。

漢方薬は一般的に副作用も少なく、長く服用しても身体に問題はないと考えられている。中国では一生飲み続けても問題ないとされている。西洋薬に比べれば、副作用が非常に少ないことは確かであるが、同じ効果をもたらす西洋薬との重複は禁忌であり、日頃から西洋薬を処方されている人はやはり専門医による診断と処方が必要であろう。



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