「化学物質=人工的・体に悪い」というイメージだけが先行
そもそも「化学物質」というと具体的に何を思い浮かべるか?---。佐藤氏が問いかけと、会場からは「食品添加物」「着色料」などの声があがった。
「化学物質」というと「人工的に作り出された、何か体に悪いもの」というイメージがある。しかし「化学物質」の本来の定義には人工・天然といった区別や、もちろん体に良い・悪いといった区別もなく、実際には身の回りのものはすべて「化学物質」の集まりだと佐藤氏。そうした意味では、私たちが毎日摂取している食品はすべて「化学物質」がらみといえる。
化学物質という言葉が別のイメージで一人歩きしていることが、マイナスイメージをいつまでも払拭できない最大の要因であると佐藤氏。どんな物質も、リスクはゼロではない。危険な部分だけを取り上げて拡大解釈すれば、ただの水でさえ規制の対象になりかねない。
「天然・自然」、必ずしも安全というわけではない
食品業界においては「天然」という言葉を売りにし、「天然=安全、安心」というイメージを植え付け、消費者を煽る傾向がある。しかし、天然とはいえ、例えばふぐ毒やタバコのニコチン、カビ毒などのように危険な天然物もある。
科学技術が進歩した今、天然物と人工物の境界は極めてあいまいで、例えばミントの香りのメントールやバニラの香りのバニリンなどは天然物からも得られるが、人工的に合成することも容易で、不純物もなくコストも安い。また、できあがった化合物を天然か人工か区別することは難しい。
食経験の歴史、食品の安全性をはかる尺度
「天然・自然」だから安心なのではなく、古くから食べられてきた歴史のあるものはそれなりに信頼がおける、自然の恵みというより祖先の知恵の恵みが、現在のわれわれの安全な食環境を与えてくれていると佐藤氏はいう。このため、最近になって開発されたものや食品添加物については厳しい試験が課されており、現在国内で販売されている食品において毒性のある添加物はあり得ないという。
毒性の有無に関わらず、食品添加物は気持ちが悪い、できれば摂取したくない、と考えられがちだ。
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