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2013.11.11DHA

脳機能への作用で、一躍脚光。視覚改善からがん抑制まで多様な機能明らかに

「日本の子供たちが頭がいいのは魚を常食しているからだ」――イギリスの栄養学者、マイケル・クロフォードが日本人の子供たちの知能指数の高さを、魚油に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)の生理作用によるものと評し、DHAは一躍脚光を浴びました。

学習・記憶といった作業は脳細胞のニューロンという神経細胞の情報伝達により行なわれますが、このニューロンの先端にDHAが含まれており、魚を食べることで記憶・学習能力も高まるというわけです。

DHAはカツオやマグロなどの眼窩に特に多く含まれ、ω-3系の高度不飽和脂肪酸に分類されますが、体内で生成できないことから必須脂肪酸とも呼ばれています。

学習能力の向上で注目を浴びたDHAですが、コレステロール低下や血栓防止についてはすでに1960年代に明らかになっています。最近ではアレルギー体質への作用、視覚改善、がん抑制作用など多様な機能が次々に確認されています。

視力改善機能では、農水省食品総合研究所の鈴木平光・機能生理研究室長らが、4歳から22歳までの男女27人に1個あたりDHA300mg入りのパンを1日1個食べさせるという実験を行なっていますが、1ケ月で11人に0・2以上の視力の向上がみられました。

日本ばかりでなく、魚を常食としない欧米などでもDHAに高い関心を示し、研究成果が続々と報告されています。グリーンランドのイヌイット人は魚を常食するため、血栓症などの血管障害が起こりにくい(DHA、EPAによる生理作用)という疫学調査が発表されていますが、最近のハーバード大学の研究者らによる調査でもそうしたDHAの作用が裏付けられています。実験は40歳から84歳までの男性医師2万551人を対象に行ないましたが、週に少なくとも1回魚を食べている者は心臓発作などによる突然死が52%低下していることが判明しました。こうした結果を研究者らは魚のω-3系の高度不飽和脂肪酸が血流を促し、心臓での凝血を抑制しているものと見ています。

またDHAのがんへの作用も明らかになりつつあります。カリフォルニア大学UCLAの研究グループが、乳がん患者に毎日4,000mgの魚油オイルを投与した食事療法行なったところ、乳がんの危険性の低下が示唆されたと報告しています。

DHAを含む魚油の効用が次々に明らかなっていますが、日本では、近年若年層を中心に魚離れが懸念されています。農水省などの後援により、DHAの機能性素材としての役割が再認識され、現在粉ミルクやソーセージへの添加など一般食品への応用化が進んでいますが、今後さらに広範に使用されることが期待されます。

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