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2013.11.11米ケフィラン

コーカサスの伝統食ケフィアから生まれた。低脂質、高機能食

旧ソ連邦コーカサス地方は、ケフィアの発祥の地であり、三大長寿地域の一つです。この地方は牛乳やヤギ乳を原料とする発酵乳やチーズが常食されています。その代表的な発酵乳の一つがケフィアです。この素晴らしい健康長寿食は、もっと広く世界中の人々の間で愛飲されても良いと考えられますが、ケフィアの消費は旧ソ連邦諸国および東欧諸国の地域に片寄っており、日本にはあまり馴染みがありません。

その理由としては、スターターであるケフィア粒の他地域への持ち出しに制限がある事です。また、ケフィアの製造にあたり乳酸発酵に加えてアルコール発酵を伴う事から炭酸ガスが発生し、微量とは言えアルコールを含有する事です。炭酸ガスの発生は製品の流通において容器の制限を受けますし、日本人はアルコールに対して神経質であり、微量とは言え幼児への影響などで気がかりな点があるのではないかと考えます。

そして、嗜好性の問題があります。食の嗜好は思いのほか封建的です。味の好みは幼い時から慣れ親しんだ味に影響を受けることがあるでしょう。ですから、ケフィアのような伝統飲料がヨーロッパ等のある地域で好んで飲用されており、健康維持や増進に役立つとしても、他地域に定着するものではないようです。やはり外来の食物を日本へ持ち込むには、日本人の嗜好に合う味にアレンジする必要があります。

そこで嗜好性の部分を改善し、機能性の部分を強化することによりケフィアを起源とする新しい機能性食品素材を開発すれば、日本を始め広く世界中に普及されるものと考えられ“米ケフィラン”が開発されました。

ケフィアの機能性の発現にはケフィア粒を形成する乳酸菌L.kefiranofaciensが大きな役割を果たしていると考えられています。L.kefiranofaciensはケフィア粒から日本の研究者(光岡知足先生)らによって分離、命名された乳酸菌です。ケフィアの保健飲料としての働きの中心になる物質は粘質多糖ケフィランであると考えられますが、このケフィランを産生するのがL.kefiranofaciensです。また、本菌はホモ発酵乳酸菌ですからアルコールを産生しませんし、炭酸ガスも発生しません。

そこでL.kefiranofaciensを単独で用いて乳酸発酵することにより、ケフィアの短所を補い、機能性を高めることができると考えられました。しかし本菌の大量培養は困難で、乳酸発酵菌としては問題も多く過去に成功例がありませんでした。その中で、栄養源に従来の「乳」から日本人の主食「米」を用いて本菌を培養することにより、ケフィラン高含有の植物性食品素材、米ケフィランを安定生産する技術が確立されたのです。

米ケフィランは水溶性の難消化性多糖で食物繊維の一種ですから、一般的な水溶性食物繊維の機能を有しています。水溶性の食物繊維の作用として広く知られているものには、腸内環境の改善、血中脂質の調節、血糖値の調節、血圧の上昇抑制があります。米ケフィランおよびケフィアのもつ機能の相当の部分が食物繊維の作用と重なっています。しかしながら、ケフィランの作用の特徴は一般的な水溶性食物繊維の作用発現量より低用量であることです。

これはケフィランの分子構造に由来するものか、粘性の高さという物理的特性に由来するものか、現在のところ不明です。また、コレステロール吸収阻害作用については、一般的な食物繊維では見られないエステル化防止作用も認められております。腸内環境の改善については、ケフィランが直接便通の改善に働くと同時にL.kefiranofaciensが一種の抗菌作用を有するペプチドを産生していることも考えられ、菌叢がコントロールされている可能性が考えられます。

乳酸発酵に用いられている乳酸菌は、ケフィアから分離されたL.kefiranofaciensを用い、主な培地成分は米を用いています。また、米ケフィランに存在する粘質多糖は、ケフィア中に存在する多糖と同一の分子構造を有するケフィランであることを確認しています。このことから米ケフィランは、新しい機能性食品素材ですが、長い食経験に基づく安全性の高い食品素材であると言えます。通常の安全性試験において、変異原性、抗原性は陰性で単回投与毒性、反復投与毒性も一般の食品と同程度の値であることが確認されています。

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