血糖降下、中性脂肪低下などで期待。農薬散布のない土壌で栽培
桑はクワ科クワ属の植物の総称で、100種類以上の品種があるといわれます。日本ではヤマグワ、カラヤマグワ、ログワの3系統の種が栽培されています。
中国の薬草辞典「神農本草経」には、生薬として古くから利用されてきたことが紹介されています。
かつて日本が絹織物の生産で、養蚕業が盛んだった頃、蚕に桑葉を与えていました。その後、化学繊維の需要が高まると、養蚕業は衰退し、養蚕農家が減り、桑畑が遊休状態になりました。
そこで、農水省は各地に点在する遊休桑園の有効利用を検討しましたが、幸いにも、農薬などの化学肥料が土壌に長らく散布されていなかったため、そこでできる作物は有機農産物としての価値があることがわかりました。
桑葉には、カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛、ビタミンAなどが豊富に含まれます。神奈川県衛生研、農業総合研、畜産研などによる共同研究で様々な桑葉の機能性が明らかになっています。これまでに肝機能改善、コレステロール低下、中性脂肪低下、血糖値抑制、高血圧抑制、がん予防など報告されています(1996年神奈川県科学技術政策推進委員会発表「機能性食品における共同研究事業報告」)。
桑葉の機能性のなかでも、特に注目されているのが、日本人の10人に一人に発症の疑いがあるといわれる糖尿病への有用性です。
桑葉に含まれる成分DNJ(デオキシノジリマイシン)に血糖値降下作用があることがラット実験(神奈川県衛生研究所の1990年から5年間かけた研究)などで明らかになっています。
また、糖尿病予備軍(空腹時血糖値102~147mg/dl)10名を対象にした研究(平成13年3月~9月 日本赤十字社和歌山医療センター)では、最初に桑葉あるいはプラセボ(デキストリンに天然緑色色素を混合した偽薬)を与え、食前または食後に1.8g、1日3回(5.4g)それぞれ4週間与え、2週間ごとに、空腹時血糖値などの血液検査を実施しました。
結果、プラセボ群はわずかながら血糖値の上昇がみられることが分かりました。一方、桑葉投与群は血糖値の減少傾向が見られ、4週間投与後の空腹時血糖値の変化率では、桑葉投与群はプラセボ群と比較して有意に低下することが確認され、桑葉の長期摂取により、糖尿病予備軍の血糖値が改善されることが明らかとなりました。