殺菌力が高く、古くから民間療法で愛用。耐性菌が出来ないことから抗生物質の代用に
ティーツリー(Melaleuca alternifolia)はオーストラリアやアジアに原生する樹木で、白くスポンジ状の樹皮を持ちます。
この葉から取れるオイルが、民間療法として古くから愛用されてきました。ティーツリーオイルが広く行き渡ったのは、1770年代の大航海時代、ジェイムズ・クック船長がオーストラリアを探検した際、先住民のアボリジニがその葉を煎じて飲んでいたのを見て使ったことが始まりといわれています。
ティーツリーの葉は年2回収穫され、蒸留工法によりオイルが抽出されます。 ティーツリーオイルの活性成分はテルピネンとシネオールです。
テルピネンは回復を早める治療効果をシネオールは殺菌効果を持つといわれます。テルピネンはオイルの30~50%、シネオールは2.5%程度が薬用に適しているといわれます。
1940年代にペニシリンなど抗生物質が開発されるようになるまで、ティーツリーオイルへの依存度は高いものでした。さらに、1980年頃から抗生物質に強い菌が現れるようになると、ティーツリーオイルは再び脚光を浴び、収穫工法などの改良もあって需要が伸びていきます。
主に、にきびやフケ症など皮膚治療、傷の回復、風邪などによる咳、気管支炎、肺炎といった呼吸器系疾患の緩和などに使われてきました。
一般のにきび治療で、ティーツリーオイル(5%)とbenzoyl peroxide(5%)の有効性を比較した研究では、ティーツリーオイルの効果はゆっくりで弱かったが、副作用は殆ど見られなかったことが指摘、安全性が強調されました。
足の爪にカビが生える症状、爪白癬治療で、clotrimazoleと有効性を比較した研究では、100%ティーツリーオイルは治療剤に匹敵する結果を出していることが分かりました。
やはり爪白癬で、ティーツリーオイル(5%)と治療薬butenafine(2%)を併用したところ、その有効性はティーツリーオイルのみのクリームより高くなったことも明らかになっています。ティーツリーオイル希釈剤(15ml)で口をすすいだ場合、エイズ患者の鵞口瘡治療効果が4倍高くなったという報告もあります。
また、風邪、気管支炎など呼吸器系疾患治療で、吸入剤や加湿器にティーツリーオイルを加えると、殺菌作用により鼻腔や肺の感染が防げたことも報告されています。ユーカリオイルの働きと同様、気道の詰まりを解消することも報告されています。
さらに、抗バクテリア、抗菌の働きは家庭内の洗浄用品にもいかされています。ホルムアルデヒド、アンモニア、フェノールなど有害物質の影響が懸念されている市販品と違い、ティーツリーオイルをベースにした製品は人体への悪影響は指摘されず、建物や衣類の殺菌、滅菌にも良いとされています。