母乳分泌促進で有用、カレーのスパイスとしても愛用。血糖値、コレステロール値の低下に貢献
コロハ(フェヌグリーク=Trigonella foenum-graecum)は、成長すると60センチ ほどの丈になる1年生草本で、緑の濃い葉を持ち、夏には白い花を咲かせます。地中海東 岸およびアジアが原産地ですが、インド、モロッコ、エジプト、イギリス地域で広く生育しています。
古代エジプト、ギリシャ、ローマ人はコロハを薬用、食用のどちらにも頻繁に用いました。エジプト人は遺体の防腐処理用に、またギリシャ、ローマ人は家畜の飼料の中に使ったといわれます。
コロハのシード(種)は硬く苦味があるため、通常炒って挽いてから使われます。その粉末はインドカレーのスパイスのひとつとして愛用されています。
また、シードエキスはバニラ、バタースカッチ、ラム香料、メープルシロップの代用としても重宝されています。エジプトやエチオピアではパンの中に混ぜられました。
コロハに含まれる主成分は、ムチラーゼ28%、苦味成分5%、プロテイン22%、アルカロイド(トリゴネリン、コリン)、揮発油(3-hydroxy-4、 5-dimethyl-2-furanone、dihydrobenzofuranなど)、サポニン、フラボノイド(ビテ キシン、グリコシド、ケラセチンなど)。
その他、ビタミン、ミネラルも豊富です。化学構造はタラの肝油に類似し、リン酸、レシチン、ヌクレオアルブミン、吸収力が強い有機の鉄分が豊富です。
コロハには抗炎 症、鎮静、抗痙攣、去痰作用などがあります。コロハの働きの中でもよく知られているのが、母乳分泌の促進作用です。
このメカニズムはいまだよく解明されていませんが、母乳分泌を増大するホルモン前駆体が含まれていると考えられています。
また、コロハには血糖値を下げる働きが指摘されています。糖尿病II型患者を対象に行った研究では、コロハが血糖値を下げ、高血糖により併発する症状を改善したことが報告されています。
コロハの糖尿病に対する影響を調べた研究では、ラットを次のような6グループに分類しました。
(1)何も与えていない通常ラット、(2)Streptozotocin(STZ)誘発糖 尿病ラット、(3)STZ誘発糖尿病ラット+コロハの葉(0.5g/体重kg)、(4)STZ誘 発糖尿病ラット+コロハの葉(1g/kg)、(5)STZ誘発糖尿病ラット+インスリン (6単位/体重kg)、(6)STZ誘発糖尿病ラット+glibenclamide(600mg/体重 kg)。
コロハの葉はえさに混入して45日間与えた。この結果、STZ誘発糖尿病ラットでは、血糖値と血清・組織中の脂質が急上昇したことが分かりました。一方、コロハの葉を与えたグループでは、STZ誘発糖尿病ラットでも脂質が低くなっていました。
その他、コロハはコレステロール値を低下させることも報告されています。糖尿病II型患者にコロハを与えた研究では、LDL(悪玉)コレステロールおよびトリグリセリド値を低下させたことが分かりました。ただ、HDL(善玉)コレステロール値には影響を与えませんでした。