認知力の改善、不安感の軽減などの有用性で注目。インド古代医学・アーユルベーダで古くから使用
バコパ(Bacopa monniera)はインド古代医学、アーユルベーダ医療体系で長く使われてきたハーブです。
ゴマノハグサ科に属し、枝の多さと小さくて細長い葉が特徴で、明るい紫色の花を咲かせます。インドなどの湿地地帯、標高4400フィートの山地などで生育しますが、水を多く与えるだけで簡単に栽培できるといいます。
夏場に花や実をつけ、草木全体が薬用とされています。インドやパキスタンなどでは、心臓強壮剤として使われてきました。
また、他にも呼吸器系器官の働きを改善、記憶機能、不安感、認知力などの改善、胃腸器官の機能促進など多くの働きがあるとして大いに利用されています。
薬効を示す有効成分として、アルカロイド、サポニン、ステロールなどが報告されています。その他、ブラーミン、バコサイドA・B、フラボノイド、アスパラギン酸、グルタミン酸、など多くの成分が含まれています。
認知力や精神機能に大きな効力を発揮すると考えられる成分がバコサイドA・B、サポニンで、神経信号伝達を増大します。動物を使った研究では、バコサイドが脳の海馬で、抗酸化作用を発揮することが明らかになっています。
また、脳内で活性酸素の生成、補足に関連する特定の酵素の発現を調整するともいわれています。健康体被験者46人(18~60歳)を対象にした12週間研究では、被験者にバコパエキス300mg(バコサイドA・B 55%標準化)の単回投与か、プラセボを与えました。
その結果、バコパグループで、口頭学習、記憶力、情報認識のスピードの点で改善が見られたことが分かりました。
また、ADHD(注意力欠陥多動障害)児童36人を対象にした研究では、19人にバコパエキス(バコサイド20%標準化)50mgを1日2回、12週間与え、17人にはプラセボを与えました。被験者の平均年齢はそれぞれ、8.3年、9.3年でした。
その結果、バコパグループでは、論理的記憶、学習能力などで改善が見られたことが分かりました。
不安感やうつ病に関する有効性を調べる研究も行われています。不安神経症患者35人にバコパシロップ(15mlを1日2回)を与えたところ、不安症状、不安度、精神疲労などの症状が著しく軽減したといいます。
消化器官に対する有効性を調べた研究では、過敏症大腸症候群(IBS)患者169人に対する標準治療(臭化クリジニウム、クロルジゼポキシド、ピシリウム)とアーユルベーダ治療(バコパおよびベルノキ(Aegle Marmelos)を含む)、ハーブ治療、プラセボを比べました。
その結果、アーユルベーダ治療グループはプラセボグループに比べ、全ての点で勝っていることが分かりました。ただし、この薬効が特にバコパから生じるかどうかは不明です。
ラットを使った研究では、胃潰瘍を誘発させ、その後バコパエキス20mg/kgを10日間にわたって与えたところ、潰瘍が著しく回復し、粘膜壁が強化されたことが分かりました。また、胃粘膜の脂質過酸化が低減したことも報告されています。
バコパの副作用および毒性については、これまでのところ重篤なものは報告されていません。健康体男性を対象にバコパの安全性を調べた研究では、被験者に濃縮バコサイドを単回投与(20~30mg/日)、または複数投与(100~200mg/日)を行いました。その結果、どちらも副作用は見られず、許容性も高いことが分かりました。