古くから切り傷や皮膚の外用治療で使用。ヘルペス治療など抗ウイルス・抗炎症で注目
セルフヒール(Prunella vulgaris)は、イギリス諸島などヨーロッパを原産とする植物で、ユーラシア大陸、北米、日本など世界各地に自生するウツボグサの仲間です。
日本では、セイヨウウツボグサと呼ばれ、背丈は10~30cmほどに成長、5月~6月頃にかけて鮮やかな紫色の花を咲かせます。
英名のセルフヒール(self-heal)が示すとおり、古くから薬草として愛用されており、特に抗菌、抗ウィルス、抗炎症作用が注目され、切り傷などの止血薬/皮膚の外用治療や内服薬としても用いられてきました。
また、尿道炎や膀胱炎などの泌尿器系感染、目の充血、口内炎、歯肉炎など口腔粘膜の炎症、高血圧症の緩和などにも使用されています。
セルフヒールの成分としては、タンニン、カロチノイド、トリテルペン、ビタミンB1、ビタミンC、ビタミンKなどが挙げられます。また、血行促進作用があるといわれるローズマリー酸も活性成分として明らかにされています。
抗ウィルス作用として最近注目を浴びたのが、ヘルペスへの有用性です。2003年General Meeting of the American Society for Microbiologyで発表された研究では、マウスを単純ヘルペスウィルス1/2に感染させ、半数にはセルフヒール抽出物クリームを塗り、経過を観察しました。
その結果、クリームを塗ったグループは塗布しないグループに比べ、ヘルペス感染による死亡率が著しく低下しました。
同じくヘルペスウィルス2を感染させたモルモットでは、クリーム塗布グループと塗布しなかったグループを比べたところ、塗布グループの方が皮膚の病変が少なかったことも分かりました。
Int J Mol Med(2000年3月)に掲載された研究によると、セルフヒールから抽出した多糖は、抗酸化剤のスーパーオキシドの合成を促進するといいます。
また、トリグリセリド値が高いラットの酸化ストレスに対するオオアザミおよびセルフヒール抽出、フェノールの有効性を調べた研究(Pharmacol Res2004年8月)では、ラットの脂質プロテイン代謝と血中および肝臓の抗酸化剤状態を向上させたことが分かりました。
アレルギー反応に対するセルフヒールの有効性研究(Immunopharmacol Immunotoxicol2001年8月)では、セルフヒール抽出物は化合物48/80によって誘発されるアナフィラキシーショックを抑制するといいます。
この研究では、48/80で処理したラットに抽出物を0.005~1g/kgで与えると、血清ヒスタミン濃度が用量依存で低下したといいます。
さらに、膝の変形性関節症患者を対象に、セルフヒールなどハーブの抗炎症作用を調べた研究では、35~75歳の患者96人にSKI 306X(Clematis mandshurica、キカラスウリ、セルフヒール)を、200mg、400mg、600mgか、プラセボのどれかを4週間与えました。
痛みの度合い(VAS)、また患者の日常生活行動(Lequesne index)をスケールで2、4週間目に計測、また患者や研究者の意見を報告した。計測・報告は研究終了1週間後にも行われた。
その結果、痛み具合、また日常生活の行動の双方で、プラセボグループに比べ、ハーブグループではかなりの改善を記録したことが分かりました。ハーブの用量別では、大きな差は見られなかったといいます。