古くから発熱や炎症の緩和に使用。アルツハイマー病患者の認識、行動機能の向上に
トウゲシバ(Huperzia serrata=ヒカゲノカズラ科)は、北東アジア、マレーシア地域、ヒマラヤなどに分布する常緑シダ植物で、中国などで伝統療法として、古くから発熱や炎症の緩和に使用されてきました。
1980年代後半、中国の研究者がトウゲシバから有効成分、ヒューペルジンAを抽出、その後多くの研究者が研究材料として取り上げるようになりました。
ヒューペルジンAの働きとして、アセチルコリンを酢酸塩とコリンに分解する酵素、アセチルコリンエステラーゼの阻害があります。
アセチルコリンは、認識や記憶力に関連する多用途の神経伝達物質で、アルツハイマー病などの疾患ではこのアセチルコリン値の低下が見られます。
アセチルコリンエステラー阻害剤は、アルツハイマー病の治療薬として用いられていますが、ヒューペルジンAは、他の阻害剤と比べ、アセチルコリンエステラーゼをはっきりと対象に捕らえ、結合力も強いと考えられています。
また、経口摂取では、吸収が早く、酵素の影響を受けての解離がゆっくりしていることから、作用が長く継続するといいます。
マウスを使った研究では、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用が、6時間後でも33%残っていたと報告されています。
ヒューペルジンAに関する研究は中国を始め、様々な精神性疾患の分野で行われています。51歳から80歳で、認識力低下を起こしている患者60人にヒューペルジンAを60日間与えた(200mcgを1日2回)研究では、プラセボと比較しました。
それによると、ヒューペルジンAグループではかなりの改善が見られたといいます。また、中国、Zhejiang Medical Universityで行われた研究では、アルツハイマー病患者50人にヒューペルジンA(0.2mg)を8週間与え、プラセボグループと比較しました。
結果、ヒューペルジンAグループでは、患者の58%に記憶、認識、行動機能で改善が見られたことが分かりました。一方、プラセボグループでは36%でした。
また米国で行われた研究では、アルツハイマー病に対する有効性と安全性が調べられ、軽度から中程度の進行を示すアルツハイマー病患者29人が対象となりました。
3ヶ月の研究期間で、22人が研究を完了し、副作用を報告したのは2人だけでした。1、2、3ヶ月時点でStatus Examinations(SMMSE)が評価され、その結果、投与量を増すほど、有効性も大きくなることが分かりました。
ヒューペルジンAは、高齢者の認知症にも有効性を発揮し、多発梗塞性認知症を起こしている患者56人、および老人性記憶障害の患者100人を対象にヒューペルジンAの有効性を調べた研究(1991年)もあります。
ヒューペルジンAを(0.05mgを1日2回)被験者に2週間与えたところ、大半の患者で記憶力の改善があったといいます。
また、中国で行われた研究では、子供に対する有効性も報告されています。記憶力が低く、学習障害のある中学生児童34組に、ヒューペルジンAを100mcg、1日2回、4週間与え、プラセボと比較しました。
その結果、プラセボグループと比べて、「記憶」「認識」「取得」「触覚記憶」「再現」などの分野で目立ってスコアが高くなったといいます。