2019年2月27日(木)、日本OTC医薬品協会で、「機能性食品表示のこれまでとこれから」をテーマに、薬業健康食品研究会「平成30年度 機能性食品勉強会」が開催された。この中から、小田嶋 文彦氏(一般社団法人 健康食品産業協議会 事務局長)の講演「制度に関する行政の動きと産業協会の取り組み」を取り上げる。
機能性表示食品、商品数は1800件超え
健康食品業界主要7団体の連合会である「健康食品産業協議会」は、業界の意見を取りまとめて行政に提言し、業界の自主的な取り組みの推進のための活動をしている。
活動は主に6つの分科会にて行っている。なかでも「ガイドライン分科会」「有効性データと表示のあり方分科会」「エビデンス向上分科会」については、主に機能性表示食品制度に関わる活動を行なっており、近年はこの3分科会の活動に大きなウエイトが置かれている。
制度開始から丸3年が過ぎようとしている機能性表示食品制度だが、すでに受理されている商品数は1800件を超え確実に広がりを見せている。
この制度はスタート当初からトクホ制度と比較され、中小企業にも扱い使い易いとされてきたが、実際に大手企業だけでなく、中小企業においても活用実績がある。
トクホにはない新規機能性関与成分
また、トクホにはなかった機能性カテゴリーも増え、「認知機能」「目の健康」「関節対策」「疲労感」「睡眠」「体温」「筋力」「歩行能力」「目鼻の不快感」「肝臓」「血中脂質酸化」「尿酸」など、新たなカテゴリーで受理されると話題性が大きくなることも制度の良い点、と小田嶋氏。
当然、トクホにはなかった成分も多く、平成29年~30年にかけては新規機能性関与成分が11成分あったことを消費者庁も報告している。
ちなみに2018年12月末時点で、機能性関与成分は全部で131成分を超えた。しかしその一方で、昨年は「撤回」の件数も増えた。
だが、それで制度が縮小したり、あり方が問われるようなことはなく、制度のブラッシュアップにつながっていったのではないか、と小田嶋氏。
もっと注釈や文言をつけるべき
最近の行政(消費者庁)の動きとしては、「商品の買い上げ調査の強化」「機能性関与成分の分析方法の検証」「消費者意向の調査」「食品表示に関する消費者意向調査」「研究レビューの検証」「臨床試験および安全絵師の評価内容の実態把握の検証・調査」などに力を入れている。
機能性表示食品届出後についても、安全性と機能性を担保するため、届出企業や業界団体に、より積極的な情報公開に努めるよう要請もあった。
例えば、2019年2月22日時点で、13品目中10品が撤回に応じた「歩行能力改善」を謳う商品もあった。
「歩行能力改善」というヘルスクレームは薬機法の観点から問題があるのではないか、と厚労省が消費者庁に指摘。消費者庁が、該当企業に自主的な判断を促したことから、取り下げが相次いだ。
こうしたことから分かることは、承認済み医薬品の表示と同じ文言があった場合、発揮される機能性が「健康の維持増進」の範囲内であることが明示されていないと医薬品と判断される可能性があるということだ。
「歩行能力の改善」という文言自体がダメというわけではなく、その前後にもっと注釈や文言をつけるべきであった、と小田嶋氏。
今後届出を行う際、承認済医薬品については「医薬品医療機器総合機構」のサイトなどで確認しておくことが必要であろう。
消費者庁のスタンスとして「受理された機能性表示だからといって消費者庁が合法性を確認したものではない」と明確な立場表明をしているが、その一方で、「今回の件がきっかけとなり、すでに届出られている機能性表示を薬機法の観点から洗いざらい見直すことは行わない」としている。
つまり、消費者庁に受理されるかどうかだけでなく、消費者団体から指摘されないか、薬機法違反にならないかなどを各企業が積極的に調査し、届出や販売を行う必要がある、ということだ。
食品成分を人々の健康に最大限活用
機能性表示食品制度は3年が経過し、概ねスタンダートが構築されつつある。これまで課題とされてきた項目についても検討や対策が取られつつあり、業界団体としても消費者庁に引き続き制度の課題点の要請を行うほか、業界自主基準化の議論を重ねたい、と小田嶋氏。
機能性表示食品以外にも、健康食品全体の問題や課題がいくつも残っている。例えば「トクホ」については機能性表示食品制度の開始により、申請件数が著しく低下している。また、栄養機能食品については制度の認知が低く、あまり活用されていない。
またビタミンC、D、Eについては機能性表示に関する要望書を産業協会も提出している。特別用途食品についても市場が確立されておらず、制度も活用されてない。「いわゆる健康食品」の中には悪質な広告も散見される、など。
健康食品産業協議会としては、目標とする「食品成分を人々の健康に最大限活用し、世界中で健康食品が利用され、健康長寿社会の一翼を担う、その先頭を日本が走る」ということを目指し続け、引き続き活動していきたいとした。