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2019.9.9地域食品産業と機能性食品の未来展望~第18回ダイエット&ビューティーフェア

2019年9月9日(月)~11日(水)、東京ビッグサイトで「第18回ダイエット&ビューティーフェア」が開催された。同展示会セミナーより青木 幹夫氏(経済産業省 経済産業政策局調査課長)の講演「ヘルスケア産業における食品産業の未来」と森下 竜一氏(大阪大学大学院医学研究科臨床遺伝子治療学 教授)の講演「機能性表示食品の現在と大阪万博に向けて」を取り上げる。

「不健康な食習慣」をやめられない人が多い

健康長寿の実現に向けて、国民一人ひとりが「食事」と「運動」の2つの要素の質を高めていくことが極めて重要である。特に「食事」は健康に与えるウエイトは大きい。

日本人の多くが「健康な食品」や「健康な食べ方」に関心を抱き、知識や情報を十分に持っている。しかし実際は「不健康な食習慣」をやめられない人が多い、と青木氏。

「不健康な食習慣」は「喫煙習慣」と並ぶ疾病リスクである。禁煙の理解と実行についてはこの数十年で世界的に普及した。

しかし「食習慣で健康」についてはうまくいってない部分が多い。背景には「食習慣の改善で健康になった」という社会モデルがまだほとんど存在していないこともあるのではないか、と青木氏。

そのため、今回のセミナーでは世界各国の「食習慣の改善による健康促進の成功事例」を紹介した。

専用アプリで購入傾向を分析

まずは、トルコの事例。トルコで最も主要なスーパーマーケットチェーンの「ミクロス」では、店頭に置かれている食材を「穀類」「肉魚卵」「豆類(ナッツ類含む)」「野菜果物類」「乳製品」の5つのカテゴリーに分類し、消費者一人ひとりの購入履歴をPOSレジで記録している。

これにより消費者は専用のアプリから商品の購入履歴と買い物の傾向が分析できる。また、極端に購入の少ないカテゴリー商品や、栄養バランスを整えるうえで購入した方が良い商品が割引で購入できるなどのサービスが受けられる。

例えば、ある週は「野菜果物類」の購入が不足していると、それがアプリからアラートされ、野菜・果物類を購入するために使用できるクーポンが配信され、販促行動へと繋がる。

現状このアプリは100万人以上のアクティブユーザーを抱え、ユーザーの44%に行動変容が起こった。また、アプリを利用している人の一人当たりの売り上げが平均約17%増、顧客数も14%増加したという。

「健康」を商機と捉える

他にも、南アフリカの大手保険会社「バイタリティ」が販売する「健康増進型保険」。オーストラリアとニュージーランドで導入している「Helth Star Rating(健康指数ラベル)」制度などがある。

いずれも消費者に直結する食品メーカーやスーパーなどの小売業、外食産業などが「健康」を商機と捉え、消費者の行動変容を起こすことでビジネス拡大と健康の両方を実現させることに成功している。

このように世界的に示唆に富むイノベーションの社会実装の例が生まれ始めているが、日本ではこのような試みがまだ行われていない。

だからこそまさに今がチャンスで、キャッシュレス、AI、などとも連動させて新たなヘルスケアマーケットが登場するのが待たれる、と青木氏は話した。

機能性表示食品、3000億円市場に

2015年からスタートした機能性表示食品制度。順調に市場規模は拡大しており、既に2135商品超えに。現在の機能性表示食品の市場規模は約3000億円に迫り、特定保健用食品(トクホ)市場の約50%となっている。

この制度により、「錠剤・カプセル形態のいわゆる健康食品」だけでなく、「あきらか食品」や「生鮮食品」にもヘルスクレームの記載が認められたことは、多くの消費者の「食の行動変容」に貢献しているのではないか、と森下氏。

現状ではまだ多くないが野菜や果物など35商品にも機能性が表示され、他の商品との差別化や付加価値で役立ち、消費者も「どうせ選ぶなら体に良いもの」という意識が少しずつ高まってきているようだ。

そしてこの「食で健康」の行動変容をさらに拡大させていくために、大阪万博にも期待が寄せられている、と森下氏。

「大阪万博」は2025年開催が決定しているが、メインテーマを「いのち輝く未来社会のデザイン」とし、国連が掲げる持続可能な開発目標「SDG s」が達成される社会を実現することを目指している。

世界のロールモデルに

森下氏は万博基本構想委員を務めているが、この万博において「健康」は主要なテーマであり、森下氏を中心に「10歳若返るパビリオン」の構想を進めているという。

具体的にはパビリオンに入場した瞬間から、装着してもらうウエアラブルデバイスに各個人の生体データを蓄積し、パビリオン内ではどのような食事や行動をすれば自分が若返るかを体感してもらい、さらにパビリオン外の行動変容につなげていくイメージだ。

最先端のAI技術とのコラボレーションで、10歳若返る(=10年長く生きる)技術だけでなく、「医療の進化かが老化の速度を超える」を体感してもらえるのではないか。

自分の体に必要なパーソナルな健康行動や食行動を知り実践し、AIも活用して管理し、進化していく健康の最先端を体感できるパビリオンを展開したい、と森下氏。

そしてこれまで「2025年問題」とネガティブに捉えられていた日本の超高齢化問題も、個人の行動変容や万博の成功によっていくらでもポジティブなものに変えられる。今の日本はまさに「スーパーシティ」として世界のロールモデルになれるチャンスを迎えている、と森下氏は締めくくった。

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