2020年1月28日~29日、東京ビックサイト青海会場にて「Care Show Japan2020」が開催された。この中から、監物 南美氏(女子栄養大学出版部編集委員)の講演「日本人の食事摂取基準2020年版を読む」を取り上げる。
最新版「食事摂取基準」、2024年まで使用
本年度「日本人の食事摂取基準2020年版」が公布される。同基準は、健康の保持・増進、生活習慣病の発症予防を目的とし、エネルギーおよび各栄養素の摂取量について1日あたりの基準を示したもので、5年ごとに改定される。
最新版の「食事摂取基準」は2020年から2024年まで使用されることとなる。
改訂版の策定にあたりどのような経緯があり、どこが改訂のポイントとなったのか。検討会のすべてに参加していたという女子栄養大学出版部編集委員の監物氏が解説した。
2020年度改訂版の作成にあたり、2018年4月20日から全5回にわたり検討会が開催された。
検討会では策定方針がまとめられ、これに基づき、ワーキンググループによる実際の文献レビューや策定根拠の整理などが5回行われた。
その後、検討会とワーキンググループによる出し戻しを数回行って報告書が取りまとめられ、昨年2019年12月に全ての報告書が厚生労働省のホームページに公表(改定の告示)された。
改定ポイント、年齢区分やフレイル予防
2020年度版の策定方針として特に意識されたのは、以下の3点。
- 高齢化社会のさらなる進展、特に2025年問題を意識し、より細かな年齢区分による摂取基準を設定する
- 根拠に基づく立案を一層推進するため、レビュー方法や記載の標準化、透明化、エビデンスレベルを記載する
- 策定内容を海外に積極的に発信する
これらの策定方針をベースとして作られた、「日本人の食事摂取基準2020年版」の改定ポイントを監物氏は解説。
<年齢区分について>
高齢者についてはこれまで65歳以上と一括りであったが、50~64歳、65~74歳、75歳以上と細かく区分。これは前期高齢者と後期高齢者の考えに基づく。
また、乳幼児については前回と同様0~5ヶ月、6~11ヶ月、1~2歳、を基本とするが、エネルギーおよびたんぱく質については0~5ヶ月、6ヶ月~8ヶ月、9ヶ月~11ヶ月の3区分を設定した。
<フレイル予防>
高齢者のフレイル予防の観点から、総エネルギー量に占めるべきたんぱく質由来エネルギー量の割合について、65歳以上の目標量の下限を13%から15%に引き上げた。
また、65~69歳の目標とするBMIの範囲の下限が引き下げられ、65~74歳の目標が21.5~24.9、75歳以上の目標が21.5~24.9とされた。
フレイルとサルコペニア発祥の予防を考慮し、50歳以上のたんぱく質の目標量の下限が引き上げられ、これまでは18歳以上が13~20%のみであったが、改訂版では50~64歳が14~20%、65歳以上が15~20%とされた。
トランス脂肪酸、摂取量は1%エネルギー未満に
<生活習慣病対策>
若いうちから生活習慣病の予防ができるように、飽和脂肪酸とカリウムについては小児の目標量を新たに設定した。
<ナトリウム対策>
ナトリウム(食塩相当量)については、男女ともに0.5g引き下げられ、男性が7.6g(日)女性が6.5(日)となった。さらに高血圧と慢性腎臓病の予防を目的とした量として男女ともに6g(日)未満が追加された。
<コレステロール>
脂質異常症の重篤化予防のためには200mg/日未満にするのが望ましいということが追加された。またトランス脂肪酸については、人体にとって不可欠な栄養素でなく、健康の保持・増進を図る上で積極的な摂取は勧められないことから、その摂取量は1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましいとされた。
食事摂取基準、あくまでも参考に
<ビタミンD>
今回、フレイル予防や骨折のリスクを上昇させないビタミンDの必要量に基づき目安量を設定したが、参考となる海外の基準は日本と日照時間が異なるため、あくまで目安量とした。また、日常生活において可能な範囲で適度な日照を心がけることも追記された。
このように改訂版ではフレイル対策や生活習慣病対策をより意識したものになったとしたが、食事摂取基準は必ず守らなければならないものではなく、あくまでも参考にと監物氏。
食事摂取基準は厚生労働省のホームページや書籍などで確認することができるため、管理栄養士などの専門家などだけでなく、一般の家庭でも上手に活用してほしいとまとめた。