2020年2月1日(土)、よみうりホールにて「国立健康・栄養研究セミナープログラム ふだんの食事に生かす栄養素の知識」が開催された。この中から、渡邊 智子氏(文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分化会 食品成分委員会主査代理)の講演「食品成分表は面白い!成分表を活用した食育」を取り上げる。
2020年12月に8訂版が公表
食品成分表とは日常的に消費されている食品の成分値(可食部100gあたり)をまとめたもの。国により常用される食品が異なるため、国ごとで成分表が策定されている。
また時代の変化に応じて常用食品も変化するため、成分表は改訂を重ね進化している。各国の食品成分表を見れば、その国がどんな食生活をしているのか、食材から調理法まで理解することができる。
日本の最新の食品成分表は2015年に公表された7訂版で、2020年の12月には8訂版が公表される。ちなみに2015年版は文部科学省のHPから誰でも確認ダウンロードすることが可能である。
日本の食品成分表の初版は1950年に発行され、初版に掲載されていた食品数はわずか538点であった。2015年の7訂版では2191食品になり、全部で8冊からなる(アミノ酸、脂肪、炭水化物、追補、さらにデータ版)。
和食の食事形式がベース
食品成分表をどのように活用することができるのか。まずは「和食の食事形式の理解」に役立つと渡邊氏。なぜなら、日本の食品成分表の収載順とは、和食の食事形式をベースにしているため。
つまり「主食」「主菜」「副菜」「その他」という1食で摂りたい献立順と考えて良い。
パンについてはパンの専門家の判断で、主食として常用されるパンは穀類に、菓子として常用されるパンは菓子類に属しているため、自分の1食の内容を成分表と照らし合わせれば一目瞭然に何が足りていて、何が足りてないかがわかる。
具体的には成分表を見ると「いも及びデンプン類」や「穀類」の1群の次に収載されている2群であるため、副菜とは考えず、主食と考えるべきである。
パンについては「食パン、コッペパン、乾パン、プランスパン、ライ麦パン、ぶどうパン、ロールパン、クロワッサン、イングリッシュマフィン、ナン、ベーグル」までが主食扱い。
「揚げパン(給食)、あんぱん、カレーパン、クリームパン、ジャムパン、チョココロネ、メロンパン、デニッシュ、ドーナツ」は菓子類のため、主食にはならない。
「食文化」を調べることに役立つ
食品成分表は「食文化」を調べることにも役立つ。例えば「関西風」と「関東風」では「濃口醤油」「薄口醤油」の違いがある。
さらに、魚や肉は品種、生育環境(天然か養殖かなど)、部位などによって栄養素やカロリーが異なる。
そのため、それぞれを細分化して収載することで、どのような食べ方をするのが望ましいか、自分のライフスタイルや食の嗜好に合った食べ方とはどんな食材を利用すれば良いかなどがわかる。
科学的根拠に基づく食育を実践
また、食品成分表は「調理方法」を考えるのにも役立つ。例えば青菜類や茹でた後に冷水で冷やして絞るため、調理の前後で重量や栄養素に変化が起こる。
成分表には両方が掲載されているため、食材と調理法によりどれくらいの成分損失があるかを確認することができる。
最新の食品成分表を見ると、日本の食の現状がわかり、科学的根拠に基づく食育を実践することができるようになっている。
食品を選び、どのように調理し、どのように盛り付けると良いのか、食品成分表を見れば誰でも理解できるようになっている。書籍としても複数の出版社から出ているので、自分にとって使いやすいものを購入し利用してみてほしいと話した。