2020年9月15日~17日、東京ビックサイト青海展示棟で、第19回ダイエット&ビューティフェア2020が開催された。この中から、食品機能性地方連絡会の講演「地方創生への取り組み~各地の食品機能性政策と現状を紹介」を取り上げる。
全国の産業振興担当者が集まり地方に埋もれがちな1次産品をもっと売り込み、地元も日本ももっと元気にしようという共通の目的に向かって取り組んでいる「食品機能性地方連絡会」。今回は北海道・岩手・四国・長崎の4県の取り組みが紹介された。
北海道、ヘルシーDoをスタート
北海道は2013年、全国初となる北海道独自の制度「北海道食品機能性表示制度(通称:ヘルシーDo)」をスタートさせた。
ヘルシーDoは、いわゆる健康食品ではあるが、北海道が独自に認定した全国初の自治体認定による機能性食品表示制度である。認定商品は2020年で110品目、売り上げは累計で100億円突破。機能性素材は22種類を突破しているという。
この制度の運用には、道内の食品関連企業、大学病院、公設試験研究機関、道内の各市立病院、提携病院、診療所等が連携し、住民もボランティアで参加してもらうことで、ヒト介入試験も実現している。
そのため認定される商品は北海道産の機能性素材を含んだ道内で作られた加工食品であり、それぞれのエビデンスについては査読付き論文も公開されている。
ヘルシーDoとして認定された商品には「健康でいられる体作りに関する科学的な研究が行われたことを北海道庁が認めたもの」として表記することができる。
機能性成分のエビデンスも査読付き論文を条件としているため、トクホや機能性と比較しても遜色がないという。
ちなみにそれらの論文は「北海道機能性商品素材データベース」(北海道バイオ工業会)に公開されており、誰でも閲覧することができる。
国がリードしているトクホ制度や機能性表示食品制度よりもより小規模事業者でも参入可能で、北海道としてPRやバックアップもあるため、商品の信用力の向上などメリットもある。北海道の豊富な食材から「安全・安心・美味しい・健康」を国内外にもっと広めていきたいという。
岩手、健康産業の空白地帯
「健康産業の空白地帯」といわれる岩手。脳血管疾患死亡率はワースト1。機能性表示食品の届出も3つしかない。
しかし岩手県には海も山もあり、春夏秋冬通して食材は非常に豊富だ。岩手大学や岩手医科大学、岩手県の企業等でもそれぞれが食品成分の研究を行ってきたが、それをさらに発展させ「いわて農林水産物機能性活用研究会」が4年前に産学官連携で立ち上がった。
現在は、岩手発の農産物や加工食品で体に良いだけでなく地域の活性につながるように推し進めている。
しかし4年前の発足時はメンバーも「健康産業って何?」というレベルで、外部講師を読んでセミナーや勉強会を重ねることで、少しずつ健康産業を理解してもらえるようになってきているという。
現在は、内閣府の「地方創生推進事業」にも認定され、その補助金で「寒じめほうれん草(寒さに晒すことで3ヶ月、甘みやミネラルなどの栄養が増えている)」が機能性表示食品として認定され市場にリリースすることができるまでになったという。
寒じめほうれん草の認知度や売り上げは想定以上に伸びており(40%増)、生産者産や生産地が来年は増える見込みという。
四国、民間認証制度ヘルシーフォー
ヘルシーフォーとは「健康でいられる体作りに関する科学的な研究が行われたこと」を四国健康支援食品評価会議が認めたもので北海道のヘルシーDoとは違い、どの地域からでも参加可能というのがポイントである。
ヘルシーフォーの制度名もロゴも商標登録済みであり、制度の最大のセールスポイントとしてロゴやマークを貼るだけで「簡便に機能性を表示できる」という特徴がある。
機能性表示制度の申請に行き詰まったら、ヘルシフォーを選択肢に入れてもらっても良い。制度スタートから3年が経過し、今年の年末には登録商品数は10件になる予定だという。
誰にでも査読付き論文の閲覧ができ、エビデンスレベルには自信を持っているというが、まだまだ認知度や信頼性を高めていきたい。
そのため、健康食品産業協議会などの公的な機関からパブリックコメントをもらうなどの努力も重ねているという。四国における機能性食品開発支援も行っておりさらに認定商品を増やしていきたいとした。
長崎、機能性素材を取り入れた食品開発
長崎県でも、豊富な自然の食材からヘルシー食品を開発する、機能性素材を取り入れた食品開発を手がけることに力を入れはじめているという。例えば長崎産の柑橘「ゆうこう」や長崎みかん。
いずれも生産の過程で「摘果」を行うが、摘果によって廃棄される大量のみかんにもヘスペリジンなどの機能成分が含まれていることが研究によって解明されている。
しかも収穫間近のみかんより摘果時期のみかんの方にヘスペリジンやフラボノイドなどの機能性成分は多く含まれている。
これらの成分には中性脂肪濃度を低下させて、血糖値上昇を抑制するといったエビデンス認められる。摘果みかんの方が、フラボノイド含有率が高いこともわかった。
そのような背景の中で誕生した製品「柑橘系フラバノン含有のまるごとみかんジュレ」は、機能性表示は一切行っていない。
しかし、「柑橘系フラバノン含有」と商品に書くだけで、気になる人は自らカタログをとって読んだり、ネットで調べたりするため売上げ増につながっているという。
また、長崎県といえばカステラが有名だが、実はカロリーや糖分の観点から考えるとヘルシーとはいえない。
しかし長崎県のある和食料理屋に活性事業センターが依頼し、ヘルシーフォーで認定されているレアシュガーを用いた機能性カステラの開発に成功。試作に試作を重ね、しっとりした美味しいカステラが完成し、売れ行きも好調だという。
ただし、ジュレもカステラも量産体制に至っていないため、これからはその辺りの課題にも取り組んでいきたいとした。
地方における食品機能性による産業活性化
食品機能性地方連絡会は「地方における食品機能性による産業活性化」が最大の目標であるという。地方の声を全国に届けたい、地方発の食品を盛り上げたい、と年に3~4回集まって情報共有や国への要望書の提出などを行っている。
消費者庁とも連携しており、消費者庁の担当者に最新情報の講演やセミナーなどもお願いしているという。
トクホのハードルが高く、機能性表示食品が登場したともいえるが、機能性表示食品の70%も東京、大阪、福岡、愛知などの大都市圏が占めており、地域・地方にとってはハードルが低くなったとはいえない部分も多い。
機能性表示食品を成分ごとに確認しても、上位15位までの成分で売り上げの60%以上を占めている。
これらの現状を考えると、地方独自で「食品機能による産業活性化」に取り組むことは引き続き必要である。さらにそれぞれの地方自治体が横に手を結んで情報交換したり、協力し合うこともやはり大切なのではないかと述べた。