2020年10月26日(月)、CJ Japan オンラインセミナー「グリーンラベルの最新動向とグローバル対応の発酵調味料」が開催された。この中から、田中良介氏(Innova Market Insights 日本カントリーマネージャー)の講演「世界におけるクリーンラベル基本概念と最新の動向」を取り上げる。
クリーンラベル、消費者ニーズや近未来を読み解くカギに
Innova Market Insights社は、食品トレンドの分析やリサーチを専門に手掛け、世界最大の食品データベースを運営している。
毎年「世界の食品トレンドトップ10」などを発表しているが、その中でも「クリーンラベル」は、直近の過去10年で、世界で最も広まった重要トレンドの1つであろう、と田中氏。
現在、クリーンラベルの概念はマーケティングの世界では、グローバルスタンダードといえるまでに成長しているという。
グリーンラベルを理解する事は食品企業だけでなく、あらゆる産業において必須で、クリーンラベルの理解こそが、消費者ニーズや近未来を読み解くカギとなり得るのではないか、と話す。
「クリーンラベル」の正確な定義は存在しない
10年~15年ほど前、食品に関する不正や事件事故が世界各国で相次ぎ、それらをきっかけに消費者は食品企業に対して不信感を抱くようになった。
さらにインターネットの登場やSNSの台頭により、消費者が自ら情報収集・発信を行う時代に突入した。こうした時代の流れや背景からクリーンラベルの概念が生まれた。
当初、クリーンラベルは「ナチュラル」や「無添加」「オーガニック」「遺伝子組み換え不使用Non-GMO」といったキーワードを指していたが、現在は変化している。
例えば、人によって「シュガーフリー」や「グルテンフリー」がクリーンラベルともいえる。また、クリーラベルといえる認証マークも様々登場し、実際のところ「クリーンラベル」についての正確な定義は存在しないという。
「クリーン」を「クリア」に表示がトレンド
今、世界共通の認識として「Less is More (少ないことは、より豊なこと)」という概念が広まっている。
「できる限りシンプルでクリーンなものを食べたい」「購入する商品がどんなものかできる限り知りたい」という欲求が高まっている。
例えば、米国では20~30代の若い世代が食品の原材料一覧をチェックしてから商品を購入するケースが増えている。
「ナチュラル」や「無添加」からスタートしたクリーンラベルだが、それらの表示はともすると自己満足に陥りやすいという問題点もあった。
例えば、体に良い原材料を使っていることを表現すると長文になる。また訴訟大国である米国の場合、下手に「ナチュラル」という言葉を使い、消費者に疑問を持たれるとそれが大きな問題に発展するということもあった。
実際、ある調査によるとアメリカでは表示で「無添加」「Non-GMO」は増えているが、「ナチュラル」は減っており「オーガニック」は横ばいになっている。
それよりも視覚により簡単に訴えかける「アイコン」でビーガンやグルテンフリーを紹介するなどしている。
また、「5 ingredients(たった5つの原材料)」とか「simple ingredients(シンブルな原材料)」と、具体的に何が含まれているのか、含まれているものだけをパッケージの表面に大きく表示するなど、「クリーン」であることを「クリア(明確)」に表示することがトレンドになっている、と田中氏。
現在、世界のすべての食品の1/3程度がクリーンラベル商品である。しかし、割合としてはやはり欧米がリードしており、日本を含むアジアはまだまだ「クリーン」も「クリア」も遅れをとっている。
「ナチュラル」「ヴィーガン」は一昔前のトレンド
時代の変化と共に、食品のトレンドも変わり、クリーンラベルのあり方も変わってきている。
例えば、「ナチュラル」や「ヴィーガン」といったキーワードは一昔前のトレンドになりつつある。
今は「サスティナブル」や「エシカル(倫理的)」というキーワードがクリーンラベルにも求められている。
消費者は食品に原材料や健康増進のベネフィットだけでなく、製造や流通のプロセス、社会的責任においてもクリアでクリーンであることを求めるようになってきている。
特に食品業界においては食で一人ひとりが健康になるだけでなく、地球環境や原料となる動物への倫理も強く求められている。
そのため、シンプル加工だけでなく、代替肉、ホルモン剤不使用、プラントベース、サスティナブルといったキーワードをわかりやすくクリアに表現したものが最新のクリーンラベルとして注目されている。
「Made With」が最新のクリーンラベル
また、さらにそのような商品を世の中に送る企業側の理念や、商品に込めた思いなどをストリーとして表現し、消費者の心を動かすような仕掛けも必要だと田中氏。
その一例として、「原材料、それはあなたの知っているものだけです」といった表示や「牛乳を作るのには必ずCO2が排出されてしまうが、それをプラマイゼロにする仕組みで作った牛乳です」といったストーリーをパッケージにしている欧米の商品の事例を紹介。
つまりクリーンラベルとは「体に良いもの」→「シンプルでクリーンな生産・製造」→「透明性」→「社会的責任」にまで進化しており、現在はクリーンであることがサスティナブルであるというイメージにまで成長しているという。
これまでは無添加、無着色、ナチュラル、Non-GMOなど「Free From」で考えることが主流であった。
しかし、これからは「クリーンに製造する技術を」「共感できる原材料を」「社会や環境に貢献できる流通を」と「Made With」で考えるのが最新のクリーンラベルといえる、と田中氏はまとめた。