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2021.5.12海外進出のために必須、食の安全性ルール~ifia2021セミナー

2021年5月12日(水)~14日(金)、パシフィコ横浜にて「ifia/HFE JAPAN(国際食品素材/添加物展・会議)」が開催された。同展示会セミナーより赤星 良一氏(RDBコンサルディング 代表)の講演「海外進出のために乗り越えなければならない食の安全性ルール」を取り上げる。

海外での日本の健康食品の販売、年々増加傾向に


日本の健康食品で、海外で販売されているものは数多くあるが、これから進出したいという商品についての問い合わせが年々増加傾向にある。

海外の商品を日本で販売する場合はそれほど高いハードルはない。しかし、日本から米国あるいは諸外国への販売は場合によってはハードな制限が設けられるため注意が必要、と赤星氏。

中でも、販売先(主に米国、EU、カナダ、中国)で食品や成分、加工法において食経験がない場合、自由に販売することができず、それぞれの国の法に則った食品登録を済ませなければ販売することができない。

米国で食品販売希望する場合

アメリカで食品を販売する場合は「食品安全強化法」に従って手続きを進める必要がある。

食品安全強化法とは、2011年に成立した法案で、成立の背景にはそれまで米国では年間3000件くらいの食品由来の健康被害・死亡事故が起こっていた。2008年には中国の毒入り餃子事件があった。

対象となる食品は農務省管轄の食肉類を除くすべての食品で、まずは対象食品の輸出申請を行うことになる。

その後、製造施設が登録され、FDA担当者から責任者への連絡を経て数ヶ月後に国内外を問わず製造工場の視察が数日に渡り行われる。

万一重大な指摘があった場合は、視察指摘書が発行され、是正内容とその予定時期をFDAに報告しなければならない。最終的に視察報告完了書が届くと、販売の許可が出る。

この手続きにおいて最も多い不備が、責任者への連絡をスパムなどと誤解して無視してしまうこと、成分や規格に関する表示のミス、あるいは微生物危害も多く報告されている。

アメリカの食品安全評価について

さらに、米国での食経験がないものを販売する場合は「食品」で販売する場合と「サプリメント」で販売する場合とでは申請方法が異なる。

食品の場合は「食品添加物」として申請するか「GRAS」の認証を受けるかになる。また、サプリメントの場合は「GRAS」か「NDI」を選択することになる。

「GRAS」とは「Generally recognized as safe」のことで、1997年にこの届出制度が開始された。

食経験がないものを輸出する場合は「GRAS」の届出が必須だが、専門家と事業者が自主的に安全性を評価する「自己認証型GRAS」が主流になってきている。

「自己認証型GRAS」が完了しているものをFDAにさらに申告することで「FDA型GRAS」となるが、ビジネス上は大差がないため、多くの企業が「自己認証型GRAS」を選択している。

 
「GRAS」への届出項目については「①届出者氏名・住所②届出成分名③使用条件④GRASと判断した理由(食経験や科学的根拠)⑤申請した成分の詳細情報(化学名や毒性、製造方法など)⑥使用限度情報⑦GRASと判断した科学的根拠、である。

新規ダイエタリーサプリメントの申請


一方、「NDI」は「New Dietary Ingredient」のことで、新規ダイエタリーサプリメント(実績のない成分)としての申請を行うこと。

1994年以前に流通していなかったものが対象となり、発売75日前までにNDIとしてFDAに登録する必要がある。

細かいルールはなく、自分たちで書類を作成し郵送することで担当者が判断してくれる制度だが、毎年100件くらい申請がある中で、半分以上が通過せず申請が通る確率が低い。

以上をまとめると食経験のないものについては「食品添加物」「自己認証型GRAS」「FDA型GRAS」「NDI」の4つから選択することになる。

中でも、「自己認証型GRAS」でトライするケースが最も多いが、これであれば、対象商品の詳細データを公にする必要もなく、競合対策にもなる、と赤星氏。

ヨーロッパや中国での販売

ヨーロッパ(EU)では「NOVEL FOOD」といって、1997年5月以前に十分な使用実績がなかった食品や食品成分が、この認証手続きに従うことが求められている。

具体的には「微生物類、キノコ類、藻類から成る、または分離された食品」や「植物および動物から分離された成分から成る、または分離された食品(ただし、伝統的な繁殖あるいは飼育方法によって得られ、食品安全性に関して使用実績のある食品成分は除く)」「新規製造プロセスによって製造された食品で、その結果、食品/食品成分の組成や構造に大幅な変化が生じ、栄養価、代謝作用、あるいは望ましくない物質の量に対して影響がある場合」とされている。

よく知られた食品成分でも「ナノサイズ」に加工されていることで新規製造になることがあるなど、注意が必要である。

また、中国への申請は申請によって「模倣(いわゆるパクリ)」などのトラブルが生じることも報告されているためその辺りも注意が必要である。

国際的に健康食品に対するニーズは高く、日本国内の優れた商品や成分を海外に展開することは大きなビジネスチャンスであることに間違いはない。

しかし、国際協調の観点からも国外の規制や評価を把握し、適切に進めることが必要だとまとめた。

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