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2021.6.24コロナ以降のサプリメント市場と消費者需要~カプスゲルジャパンセミナ―

2021年6月24日(木)、Web配信にてカプスゲルジャパンセミナ―「コロナ後のサプリメント市場 新時代の乳酸菌・ハードカプセル活用の提案とともに」が開催された。この中から、飯塚智之氏(㈱矢野経済研究所フードサイエンスユニットフードグループ部長 主席研究員)の講演「with、Afterコロナにおけるサプリメント市場と消費者需要」を取り上げる。

乳酸菌、年平均成長率が18.8%


健康食品市場(錠剤、粉末、カプセル、ミニドリンクに限定)は緩やかな拡大傾向にあり、1998年から2019年においては毎年平均2.5%成長している。

中でも、特にここ数年は機能性表示食品が市場拡大に貢献している。実際、健康食品市場全体のうち機能性表示食品は全体の約16%を占める(2019年度)。

健康食品を素材別に調査した結果によれば、プロテイン、青汁、コラーゲンの市場が近年大きく伸びて、いずれも粉末形状であることが共通の特徴、と飯塚氏

また、乳酸菌は伸びているもののやや緩やかになりつつあるが、年平均成長率(2013~2019年CAGR)は18.8%と非常に大きく、近年最も市場を拡大した素材といえる。

去年から今年はコロナの影響もあり、ビタミンCやマルチビタミンのニーズが再び高まっている。

この需要増加に伴い「ハードカプセルタイプ」の健康食品の人気が復活。ハードカプセルを作るための設備投資をしている企業も増えている。

免疫食材のニーズが拡大

コロナ禍における健康食品市場への影響についてはマイナス面とプラス面がある。

マイナスについては大きく「店舗営業自粛による店舗販売系健食販売会社の不振」「インバウンド需要の激減」「外食需要の自粛によるアルコール対策や肝臓対策系ドリンクやサプリメントの不振」の3つがある、と飯塚氏

一方、プラス面としては健康意識や免疫力への関心の高まりにより、基礎的な栄養素(マルチビタミン系)や免疫食材(乳酸菌や青汁など)のニーズが拡大している。

また巣ごもり需要で、一時不振だったTVショッピングによる販路が再拡大している。他にもコロナ太り対策でプロテインや血糖値対策、ストレス対策で睡眠系サプリメントなどの需要が拡大している。

またインバウンドによる売り上げの増加はしばらく見込めないが、中国・東南アジアへのECは拡大傾向にある。

「機能性表示が必須」と考える企業が増えている

コロナ前の2019年は健康食品業界としてはちょうど競争が激化している時期で、新規獲得効率の悪化や広告宣伝費の抑制、化粧品開発への方向転換などを余儀なくさせられている企業が多かった。

しかし、コロナの感染が拡大したことで新商品開発やリニューアルを見送りする一方で、巣ごもり需要に応えるべく、オフライン通販を強化させ、積極的な広告展開や広告投資などを行う企業が増えた。

この状況が丸一年以上続き、現時点では多くの企業がアフターコロナを見据えた動きを考案中である。

具体的には「機能性表示食品への既存商品のリニューアル」や「新商品の開発」「スポーツサプリメントの開発」、さらにアフターコロナ社会の「リベンジ消費」を見据えた商品開発などを進めている最中である。

業界として注意しなければならないことは、健康食品に対する広告規制や取り締まり強化が強まっていること。特にアフィリエイト広告やブログ型広告の表現に関しては抑制が加速している、と飯塚氏。

規制が強化されるほど機能性を全面に打ち出した広告展開に力を入れる動きがあり、どの健康食品会社もこれまで以上に機能性表示食品の開発や展開に力を入れている傾向がある。

すでに今年度上半期だけでもサプリメント形状の機能性表示食品の届出件数は211件と、去年の半数程度に迫っている。いわゆるサプリメントタイプの健康食品において「機能性表示が必須」だと考える企業が増えていることの現れである。

乳酸菌、「整腸・便通」以外の機能性にも注目

2021年3月期のファンケルの機能性表示食品の売り上げは230億円で、17年度対比プラス80億円だった。ちなみに2020年度の機能性表示食品市場希望(見込み)は2.843億4.000万円(前年度比11.8%増)で、サプリメントの2桁伸長が続いている。

乳酸菌については「整腸・便通」以外の機能に注目が集まっており、2021年6月19日時点で、乳酸菌で届け出ている機能性表示食品は138件ある。

中でも目の疲労感対策、肌の潤い、目や鼻の不快感、体脂肪対策など、これまで乳酸菌の代表的機能と考えられてきた「整腸・便通」以外の機能が広がっている。

今後も乳酸菌については「整腸・便通」以外の機能性に注目が集まるであろう。その先駆け的存在が「プラズマ乳酸菌」で、「免疫機能の維持に役立つ」という機能性表示でキリンホールディングスは2020年12月期に86億円(うちサプリメントが約10億円)のヒットであった。

同じくファンケルからもプラズマ乳酸菌による「免疫サポート」という機能性表示サプリメント(チュアブルタイプ)が2020年の12月に発売されたが、こちらも初月だけで約20万個(3億円超)を売り上げたことが話題になった。

乳酸菌には便通以外の効果があることが十分に市場に認知されてきたことを受け、ヤクルトからは腸内環境改善に加え「ストレスを和らげ、睡眠の質を改善」というトリプルクレームの「機能性表示ヤクルト」を2021年4月に全国販売した。

40代以降を中心に免疫へのニーズが高まる


また健康食品に関するインターネットの消費者調査(2020年末)の結果について、健康な成人男性1773名への調査で、「在宅での健康への取り組み」が増加傾向にあることや「機能性表示食品の摂取」も増えている。

健康な成人女性1651名への調査でも、サプリメントや機能性表示食品の摂取がやはり増加傾向にあることが確認できた。

また男女問わず、40代以降を中心に免疫へのニーズが高まり、20~40代の若年層は睡眠やストレスへのニーズが高くなっている。

筋力の増加についてはどの世代も高いがやはり40代以降はかなり高いニーズがある。

健康食品の摂取状況については年代が高いほど毎日摂取している割合が増え、60代以降の3割が「毎日摂取」と回答している。

若い世代でも摂取の意識が高まっており、乳酸菌のサプリメントだけでなくドリンク類が定番になっている。

コロナ以降、健康食品利用の増加が予測

また男性の場合は乳酸菌以外に亜鉛、マルチビタミン、プロテインが人気素材で、女性においては乳酸菌以外にビタミンCやコラーゲンが突出している。

今後の市場予測としてはやはり緩やかな成長か横ばい以上で推移すると考えられる。

コロナウイルスの感染拡大を契機とし、自らの健康への意識は高まり、またその補助手段として健康食品を活用する人が増えることが予測される。

またトレンドとしては、「免疫」に対する需要がさらに高まり、「腸と免疫」「腸と免疫とストレス」といった関係が多くの消費者に周知されてきている。

このことからやはり素材としては「乳酸菌」また、ヘルスクレームとしては「免疫」や「ストレス」「睡眠」など生活のリズムを整えることで免疫を高めていこうという意識がますます高まるのではないか。

機能性表示食品の開発がヒットの鍵に

また、リベンジ消費が起こることも当然予測される。マスクを外した後の美容やアンチエイジング、アルコール、外食対策、スポーツニュートリションの需要が高まるのではないか。

そしてアジアを中心にメイドインジャパンのサプリメントのニーズは引き続き拡大すると考えられる、と飯塚氏。

これらの市場動向からわかることは、消費者はサプリメントには一定の機能性を求めていて、一般食品には味覚を求める傾向が高い。

そのため、毎日継続して摂取したくなるパッケージや価格などの機能性表示食品の開発がヒットの鍵となるのではないか。

また機能性表示食品があることでサプリメントの利点も明確になり、消費者は用途やニーズに応じて使い分けられるようになっているため、そのあたりも考慮した製品開発をすると良いのではないかとまとめた。

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