2021年6月25日(金)、Web配信にてifia/HFE JAPAN2021セミナーが開催された。この中から、藤田康人氏(㈱インテグレート 代表取締役CEO)の講演「ヘルスケア商品開発とヘルスベネフィットの創出、それを活かすマーケティング戦略の描き方」を取り上げる。
「ずらし」による効果訴求でヒット
ここ数年健康食品市場は機能性表示食品が牽引している。が、この機能性表示食品のトレンドとは別の流れがあることに注目し商品開発など新しいマーケティングに取り組んで欲しい、と藤田氏。
これまでは商品の素晴らしさやエビデンスなどをセールスポイントにしていたものが多い。しかし、これまでのように80~95点の商品同士で争うことは、今後ますます厳しくなるのではないか。
例えば50億円のヒット商品「えんきん」は、成分を訴求ポイントにしていたら、ここまでヒットしなかった。
「えんきん」の勝算ポイントは眼精疲労や成分、老眼ではなく、訴求ポイントを「手元のピント調整力」にし、この価値に気づかせたこと。
これは「ずらし」の効果であり、これがヒットに繋がった。他にも「睡眠サプリメント」なら、より「早く」「長く」眠る、ではなく「どうスッキリ起きるか」にフォーカスした商品がヒットしている。これも「ずらし」による効果である。
どんなに良い商品、成分であっても「ずらし」による効果訴求をしなければヒットは難しい。まずはこのことを頭に入れておくべきである。
米国、「ヘルシーエイジング」市場が大盛り上り
一方、サプリメント先進国のアメリカでは現在どのようなトレンドが起きているのか。
アメリカには「抗酸化市場」というものがない。「ヘルシーエイジング」市場がそれに該当するが、この市場が非常に盛り上がっている。
特にかつて日本でもブームとなったレスベラトロールが、今また第二次ブームになっている。そもそも「若返る」のではなく「健康的に」「健康なまま」年齢を重ねていくとはいったいどいうことなのか。
アメリカの最先端サイエンスではそれが「細胞が健全であること」という理解に着地し、特に「サーチュイン」と「オートファジー」に注目が集まっている。
日本でもハーバード大学のポール・F・グレン老化生物学研究センター所長などによって書かれた「LIFE SPAN 老いなき世界」がベストセラーになっている。
また、日本人によって書かれた「LIFE SCIENCE 長生きせざるを得ない時代の生命科学講義」も売れており、これらの書籍の中ではサーチュインやオートファジーに関する最先端が解説されている。
全く歳を取らないマウスが誕生
実際、米国では全く歳を取らないマウスが誕生しており、「40歳くらいのまま80歳、100歳まで生きられるテクノロジー」が開発されようとしている。
そもそもオートファジーとは「古くなった細胞が生まれ変わる仕組み」のことだが、これが体内でうまく行われていれば細胞は常に新品になる。
またサーチュイン遺伝子についてはこれが活性されるとミトコンドリアが増え、その結果オートファジーが活性する。
日本では色々な議論があるがNMNサプリメントによってサーチュイン遺伝子が活性化され、目を疑うような高値で販売されている。
このサプリメントのメカニズムは、NMNを摂取するとNAD(ニコチンアミドアデニジヌクレオチド)という私たちが生きていく上で欠かせない補酵素に変換され、サーチュイン遺伝子が活性されるというものである。
細胞そのものにアプローチ
しかし最新の研究では「ある腸内細菌」がNADを産生してくれるということもわかってきており、そこまで高額なサプリメントに頼る必要もないかもしれない、というところまできている。
いずれにせよ「細胞そのものにアプローチする」ことが新しいトレンドであり、アメリカではサイエンスもビジネスもこの流れにシフトしつつある。
そして「細胞」というトレンドが台頭してくれば、これまでの抗酸化・抗糖化・抗ストレス・アンチエイジング全般が「対処療法」となる可能性が高い。
「細胞の若返りや健全」に良いとされる食品成分はこれまでほとんど見つかっておらず、納豆などに含まれるスペルミジンくらいしか知られていなかった。
「ウロリチン」、ミトコンドリアを再生
そして、ここにきて最も注目すべき素材に「レスベラトロール」のほかに「ウロリチン」がある、と藤田氏。
ざくろに含まれるポリフェノールのエラル酸は、人間の腸内の微生物によって代謝されると「ウロリチンA」を産生する。
このウロリチンAはミトコンドリアの再生機能があることが明らかとなり、この6月にサプリメント成分として国内で初めてリリースされた。
「ウロリチンA」についてはこれまでも研究されてきていたが、ざくろなどエラル酸を含む食品を摂取しても、腸内細菌の条件が整わないと「ウロリチンA」は産生されないこともわかっていた。
そのため、食品素材原料として開発されることが長年期待されていたが、それがようやく実現した。
ホメオスタシスを整えることが必要
また、「ウエルエイジング」のほかにアメリカのトレンドのもう一つのトレンドとして「ホメオスタシスを整える」というものがある。
人の老化の速度には大きな個人差があるが、細胞のダメージをミニマムにするには「免疫系」「自律神経系」「内分泌系」の3つのホメオスタシスを整える必要があると考えられるようになってきている。
この3つ=全体を整えるにはホリスティックな視点や商品が必要だと考えられるようになってきており、アダプトゲンハーブやブレインフード、CBD、さらにマインドフルネス市場が非常に盛り上がっている、と藤田氏。
「対処療法」ではなく根本を見直そうという流れ
日本は「コロナ不安」や「コロナ鬱」が最も深刻な国とされるが、大麻というだけで拒絶反応がある日本国内においてCBD市場が米国ほど伸びることはなかなか難しいかもしれない。
しかし、今、同じように3つのホメオスタシスを整える食品成分として「腸ツボ(小腸)」を押すことができる「白いパラミロン(不要性のβグルカン)」に注目が集まっている。この商品は「EOD1」という商品で機能性表示取得も完了している。
いずれにせよ最新のトレンドやマーケティング戦略として「対処療法」ではなく「細胞そのもの」「ホリスティック」という根本を見直そうという流れがある。
例えば、世界的に台湾ブームが起こっている。これも台湾がコロナに対応できているのは日頃からの食養生(台湾薬膳)で、そもそも免疫力を高めているからではないかとか、日本の「養生」に注目すべき、という考えも出てきている、と藤田氏はまとめた。