2022年7月22日(水)~29日(金)、東京ビッグサイトにて「ウエルネスライフジャパン2022」が開催された。同展示会セミナーより、橋本正史氏(健康食品産業協議会会長)の講演「機能性表示食品制度の現状とこれからの展開」を取り上げる。
機能性表示食品市場、2021年4,418億円に
一般社団法人健康食品産業協議会は2009年に健康食品業界主要6団体の連合会として2009年に発足。
2016年に一般社団法人化され、健康食品業界の意見の取りまとめや行政への提言、業界の自主的な取り組みの推進などの活動を行なっている。
具体的な活動内容は多岐にわたり、機能性表示食品については、ガイドラインや関連資料に関する業界意見の取りまとめ、病者データ・健康の増強とみなされるデータの扱いや適切な表示の検討による表示範囲の拡大に関する要望、エビデンスレベルの向上に関する取り組みなどの働きかけも行なっているという。
機能性表示食品市場は2020年に特定保健用食品の市場規模を上回り、2021年には前年比23.8%アップの4,418億円と大きく拡大している。
トクホ市場は3,086億円で4.1%減
この背景にはコロナ太りや免疫対策などを気にする消費者が増加したためと推測されるが、国民の「自分の健康は自分で守る」という「ヘルスメディケーション」に対する意識の積み重ねもある。
ちなみに特定保健用食品(トクホ)は3,086億円(4.1%減少)で、トクホもまだまだニーズはあるものの、機能性表示食品への需要シフトは否定できない。
また「ブレインヘルス(認知機能)」「アイケア」「排尿領域」「更年期障害対策」などトクホとは違う領域での商品開発が進む可能性や期待も内外から高まっている。
これまでサプリメントや健康食品は米国を含む北アメリカが最大のマーケットとされてきたが、2026年にはアジアパシフィックが世界最大のマーケットになると予測されている。
タブレットタイプが最も多い
機能性表示食品が登場した際、「あきらか食品」や「生鮮食品」にも機能性を表示できることが大きな話題となった。
現時点ではタブレットタイプやカプセルタイプの商品の方が圧倒的に多く、アジアパシフィック全体で調査してもタブレットタイプが最も多く、今後も一番伸びるのではないかと予測されている。
日本においては、ヘルスケア産業市場の年平均成長率は約3%で、2025年には市場規模が約33兆円になると推計されている。
もちろん、日本だけでなく世界的にもウエアラブなど新しいウエルネス・予防分野の年平均成長率は11%という推計もある。
市場はこの先も緩やかに拡大していくことが予測される以上、機能性表示食品もますます発展していくことが予測される。
機能性表示食品制度は概ね成功
実際に、健康食品を手がける事業者に協会が独自アンケートを行った結果、今後の商品開発や販売の優先度の第一に「機能性表示食品」が上がり、「栄養機能食品」や「特定保健用食品」を大きく上回ったという。
その理由については、機能性を表示し消費者に訴求できるだけでなく、トクホよりも開発期間が短縮できること。
また、コスト面のハードルが低いことなどが挙げられ、これらの現状を分析すると、機能性表示食品制度は概ね成功しているといえる。
ただし、そもそも機能性表示食品制度をスタートさせる背景にあった「戦略市場創造プラン」の「国民の健康寿命の延伸」については、どの程度寄与しているのかはそろそろ検証が必要な段階にきているのではないか、と橋本氏。
また今後の課題として、機能性表示食品の継続的な利用を習慣化させるための仕組みや啓蒙活動、機能性表示食品をうまく選択できない人へのサポートなど、国内ではまだまだ周知と正確な医療情報や健康情報の提供への取り組みが不可欠である。
海外でも展開が期待
さらにこの成功事例を海外でも展開することが期待される。栄養補助食品の輸出額は2021年1~5月は81億円であったが、2022年1~5月は109億円で成長率35%と、多品目と比較しても好調である。
現時点での主な輸出国は中国がダントツで、香港や韓国、台湾などへの輸出が主だが、AAHSA(ASEAN Alloance of Health Supplement Associations)=アセアンの国別サプリメントの規制状況を見るとカンボジアやミャンマー、フィリピン、シンガポール、ベトナムなどはヘルスサプリメントにガイドラインが設定されておらずまだまだブルーオーシャンである。
協議会としても機能性表示食品の活用方法情報の発信や啓蒙、表示されている機能の意味の教育などを引き続き行い、新たなイノベーションに続けていきたいとまとめた。