特定非営利活動法人

HOME > 「食」のトピックス > シリーズセミナー第5回「レギュレーション〜EU編①とストレス、冷え、不眠を例に機能性評価の進め方」

2023.5.29シリーズセミナー第5回「レギュレーション〜EU編①とストレス、冷え、不眠を例に機能性評価の進め方」

2023年5月24日(水)、オンラインにて「シリーズセミナー第5回「レギュレーション〜EU編①とストレス、冷え、不眠を例に機能性評価の進め方」が開催された。機能性を持った食品の海外展開において障壁となるのが各国ごとに異なるレギュレーションにどのように対応すべきか、ということ。本セミナーは今年1月から開催されている機能性食品素材の海外展開の戦略について考える連続講座で、株式会社グローバルニュートリショングループと株式会社アイメックRD、CPC株式会社の3社よって合同開催されている。ここでは第5回目のセミナーのうちグローバルニュートリショングループの武田猛氏による「EUレギュレーション概要」について取り上げる。

EUレギュレーション概要株式会社ニュートリショングループ代表取締役 武田猛

EUのヘルスクレームには「一般健康強調表示(企画基準型)」「新規健康強調表示(EFSAによる個別評価)」「疾病リスク低減、子どもの発育及び健康に関わる強調表示EFSAによる個別評価)」の3種類がある。

ビタミン・ミネラルについては2002年に公布されたフードサプリメント指令に置いてビタミン・ミネラルの錠剤・カプセル等を対象とする制度として13種類のビタミン、15種類のミネラルがリスト化されている。使用できるビタミン・ミネラルの種類は300種の化合物も認められている。安全上限使用量はEUの食品科学委員会によって定められており、製造者・輸入販売者は一般に認められている科学的データに基づいて上限値を算出して製品に表示しなければならない。またフードサプリメントとして販売する場合には「注意表示」として「推奨摂取量を超えて摂取してはいけない」「この製品は多様でバランスの良い食事の代わりになるものではない」「小さい子どもの手に届かない場所に保管する」という3点に加え「1日の摂取目安量」を必ず記さなければならないという。欧州フードサプリメントとして使用できるビタミン13種類は日本と同じであるが、ミネラル15種類については「ヨウ素」「マンガン」「ナトリウム」「セレン」「クロム」「モリブデン」「フッ化物」「塩化物」「リン」などが認められていることを紹介。

日本の機能性表示食品や米国のDSHEAに相当する届出制による健康強調表示制度はEUにはなく、EFSAによる個別評価型の新規健康強調表示が機能性表示に近いと解説。例えば新規素材の事例として「ココアフラバノール」について紹介。表示の条件として「有益な効果は、1日200mgのココアフラバノールの摂取で得られるという情報を消費者に提供すること。この主張は、重合度1〜10のココアフラバノール200mgを1日に少なくても摂取できるココア飲料またはダークチョコレートにのみ用いることができる」ということが定められているほか、承認表示例についても「ココアフラバノールは、血管の弾力性を維持し、正常な血流に寄与する」など表示ルールや表示方法が厳格に定められていることを説明。他にも「チコリイヌリン」「シュガービートファイヴァー」「ラクチトール」など、新規素材についてはそれぞれ表示の条件と承認表示例が明確であることを解説した。また新規健康強調表示について、日本と大きく異なる点として「所有権のある科学情報と強化表示は申請者に5年間の優先権がある」点や、「プレバイオティクスについては許可されているものがなく」、ほとんどが申請しても毎回却下されている現状があることを解説。

「疾病リスク低減表示」については「カルシウム」や「ビタミンD」の事例を説明。例えば、日本の機能性表示食品やトクホであれば「体脂肪を減らすのを助ける」とか「高めの血圧を下げる」「食後の血糖値の上昇を穏やかにする」など踏み込んだ表記が可能であるが、EUの場合は「正常な血圧の維持に寄与する」「血管の弾力の改善に寄与する」「酸化ストレスからの血中脂質保護に寄与する」などの表現が限界になっていると説明。また、EFSAは「腸の健康、免疫」「抗酸化、酸化的損傷、心臓血管の健康」「食欲、ウエイトマネジメント、血糖値」「骨、関節、皮膚、口腔」「身体能力」「心理機能を含めた神経系の機能」の6つについて、申請者に対し「科学的根拠に関する指針」も作成している。特に科学的根拠の実証について「表示は効果の有用性を生理学的に示していること」「研究、アウトカム指標はヘルスクレームを実証するものとして適切であると考えられること」を重視しているそうだ。さらにエビデンスの質については「介入試験ではバイアスが最小限になっているか」「観察研究では、有効性に影響を与える食品/成分以外の要素がコントロールされているか」「研究の一貫性、効果の再現性」「対象となる人口集団でエビデンスが立証されているかどうか、または研究における人口集団が対象となる母集団に外挿するかどうか」「適切なアウトカムが用いられているかどうか」「研究方法は一般的に受け入れられている厳密な方法論を用いているかどうか」「さまざまな学問分野の専門家が適切に評価しているものか」など極めて厳格なガイドラインが示されており、新規機能表示についてはこれまで149成分の申請があったがEFSAは137成分を拒否しており、この実績こそがEFSAの厳格さを物語っているのではないかと解説した。

EFSAがガイドラインを出している「免疫」については2016年に新たに加えられたもので、また次回のセミナーで詳しく解説するとのこと。日本で機能性表示が認められた「プラズマ乳酸菌」はEFSAのガイドラインに準拠したことが話題となったことから、EUのガイドラインを理解しておくことは、日本で新たなヘルスクレームを展開するのにも役立つのではないかと話した。

最近の投稿

「食」のトピックス 2024.12.2

遺伝子発現解析技術を利用した食品成分の安全性評価

「食」のトピックス 2024.11.18

栄養・機能性飲料のグローバルトレンド

「食」のトピックス 2024.11.11

食による免疫調節と腸内細菌

「食」のトピックス 2024.11.5

地域住民におけるDHA・EPA、アラキドン酸摂取量と認知機能の関連

「食」のトピックス 2024.10.21

大豆のはたらき〜人と地球を健康に〜

カテゴリー

ページトップへ