2023年6月22日(木)、「ウェルネスフード推進協会シンポジウム ウェルネスフードにおけるエビデンスのあるべき姿とヘルスケア産業の未来」が、日本橋ライフサイエンスハブとオンラインにて同時開催された。ここでは健康食品産業協議会会長 橋本正史氏より発表された「機能性表示食品制度の現状と課題について」を取り上げる。
健康食品産業協議会会長 橋本正史
健康食品産業協議会は 2009年に発足し、2016年に一般社団法人化した団体だ。協議会は健康食品協会の主要6団体から成り立ち「業界の意見を取りまとめて行政に提言する」「業界の自主的な取り組みを推進する」ことを主な活動としている、と橋本氏。 活動の中でも広報には力を入れており、その際に健康食品に関する正しい情報提供や健全化などに取り組んでいるというが、そのためにも「協議会でコンプライアンスを遵守し、常に科学的・客観的・合理的なスタンスで発信活動を行う」よう努めていると話す。他にも「機能性表示食品制度の課題に関する業界意見の取りまとめ」「栄養機能表示に関する業界意見の取りまとめ」「届け出書類の科学的根拠の記述レベル向上サポート」「食薬区分の関連法規に対する適正運用に向けた課題解決の取りまとめ」「機能性表示食品の公正競争規約策定に向けての業界意見の取りまとめ」「健康食品全般の安全性確保の施策取りまとめ」など、健康食品全般に関する幅広い活動を行っていることを説明。このような活動を行いながら、最終的には「日本の健康食品が世界の先頭を走り、全世界に貢献する」ことを目指しているという。そのために最も重要かつ土台になるのが「表示制度」であるが、表示制度において重要なことは3つあるという。それは「①エビデンス・安全性・品質の担保」「②的確な表示と広告」「③各国間のハーモナイゼーション」だ。まだまだ課題はありながらも「機能性表示食品制度」は2022年度において前年比24%の成長を遂げ、市場規模は5,462億円を突破。2020年の段階で特定保健用食品の規模を上回り(22年度の実績は2,860億円)、協議会としては機能性表示食品制度の需要の拡大やトクホからのシフトといったトレンドを感じているという。
また、世界のトレンドとしては、これまで健康食品市場は「北アメリカ」が牽引し、次に「ヨーロッパ」であったが、ついに日本を含む「アジアパシフィック」がヨーロッパを抜き市場を勢いよく拡大しているという。さらに協議会の目標でもある「日本の健康食品が世界を牽引する」レベルに到達するために「コモングッド(世界のすべての人にとって利益となる共通善)」を意識した取り組みをすべきだと考えている、と橋本氏。そこで1番目のコモングッドとして「ステークホルダーとの関係構築、協業」に力を入れていきたいと説明。具体的には医師や薬剤師、栄養関係者との連携・協業はもちろん、EFSAや米国、韓国、台湾、ASEAN、オセアニアなどの海外団体との協力、消費者団体とのディベートなどを進めているという。特に国内のサプリメントは中国・米国に続き、台湾やベトナム・シンガポールへの輸出量を大きく増やしており、それぞれの国のガイドラインを遵守した製品づくりなどのサポートも必要だ。2番目のコモングッドとして「製品・広告の自主的なレベル向上、コンプライアンスの遵守」が求められる、と説明。特に機能性表示食品については事後チェック指針や、エビデンスレビュー評価委員会などの取り組みに力を入れることで、紛い物やいい加減な健康食品を徹底的に排除していく取り組みにつなげたいと話す。そして3番目のコモングッドとして「企業が有する科学的知見や素材が生かされる制度づくり」を挙げ、機能性表示食品の対象拡大を目指しているとした。体力増強・筋肉強化。美肌ケア・抗酸化・風邪の予防など現時点では医薬品リストに掲載されている成分や栄養性の機能性まで対象成分を拡大できるようなサポートを行い、今は使用できない軽症者を含むデータや疫学調査などの結果も使用可能データとして拡大できるように働きかけを協議会としても行いたいと話す。そして4番目のコモングッドとして「消費者への情報提供やリテラシーの向上」が不可欠で、医薬品と健康食品の違いやいかがわしい広告の見分け方、健康的な食生活と健康食品との付き合い方などについて教育機会を増やすことが重要だとした。そしてこのような活動の先には新たな「イノベーション」の誕生も期待できると話す。
現在日本において健康食品を含む「ヘルスケア産業市場」の年平均成長率は3%で、2025年には市場規模が33兆円になると推計されている。世界的にはウェアラブルなどのウェルネスや予防分野の年平均成長率は11%という推計も存在している。米国ではCRNがサプリメントを摂取した場合の医療費コスト節約のシミュレーションレポートなども発表しており、日本もサプリメントの正しい活用が医療費のコストカットや健康寿命の延伸につながることをわかりやすい形で伝えていく必要があるだろう、と橋本氏。 機能性表示食品は成功しているといえるが、これからも倫理的側面を忘れず、また当初の一番の目的である「国民の健康寿命延伸」により深くコミットできるよう、制度のブラッシュアップや事業者との連携、協議会としての働きかけを続けていく必要があると話す。そのためにもウェアラブルなどのデバイスの活用など新たな取り組みも取り入れながら、健康食品の継続的利用を促すことや、消費者一人ひとりが気づきによる行動変容を起こせるような仕掛けを作る必要もあるだろうと橋本氏。そして機能性表示制度の成功事例は海外でも注目されているので、海外に向けて展開していくことも期待されているのではないかとまとめた。