2023年8月2日(水)〜4日(金)、東京ビッグサイトにて「ウエルネスフードジャパン2023」が開催された。今回は各国から約750社が参加し、アフターコロナにおける業界の最新トレンドや機能性成分・食品開発の最前線について情報交換が行われた。ここでは開催されたセミナーから宮崎大学 医学部 名誉教授の美原 恒氏による「21世紀はミミズが人類を救う」を取り上げる。
美原 恒 宮崎大学 医学部 名誉教授
美原氏は医学研究のために数々の動物実験を行ってきたが、その際にどうしても出てしまう動物の排泄物等についても、お金をかけずに処理する方法がないか模索していたという。すると有機物の処理にはミミズが最適であることを突き止め、それがミミズとの最初の出会いだったと振り返る。
ミミズは繁殖率が高くどんどん増えるので、動物の排泄物処理に活用するだけでは勿体無いとさらにミミズについて調べてみると、中国では古来よりミミズは漢方として使用されていることがわかったという。また中国の宋の時代の文献には「ミミズで脳卒中を治す」と解釈できる一文もあり、「ミミズは人の健康にも役立つのではないか」と思い至る。そこでまずは死んでいるミミズをシャーレに入れ、水の中に浸けておいたところ、数日後にミミズは溶けて無くなり大変驚いたと美原氏。ミミズには排泄物などの有機物を分解する力(溶解)、そして自らも溶ける力(融解)があることを確信した、と美原氏。
もともと血栓症の専門医として研究を重ねていた美原氏は、このミミズを治療に活かすことができないかと研究を始めたという。実際に、シャーレに切ったミミズと人工血栓を入れると血栓が溶解することを確認。よく調べるとミミズの内臓から血栓を溶かす線溶物質も出ている。これらの試験を繰り返すことで美原氏はミミズから6種類の酵素を発見する。もちろんミミズには色々な種類があるので、各国からさまざまな種類のミミズを取り寄せ、最も酵素活性が強く、繁殖力が強いミミズを養殖するなどもした。そして線溶物質酵素がミミズの腸管から分泌されているものであることなども突き止め研究を進めたという。美原氏や研究室の仲間は、ミミズから取り出した線溶物質を自分たちで経口摂取する試験も行った。その中でも赤ミミズに含まれる酵素のうち美原氏が名付けた「ルンブルキロナーゼ」に、血栓フィブリンを効果的に溶かす力があり、他にも血管拡張作用、血小板凝集抑制作用などの機能があることを解明するに至る。
私たちの血管は年齢とともに弱くなったり傷が増えたりする。特に血管の内壁は傷つきやすく、それでも止血のためにフィブリンという血液凝固作用を持つタンパク質が血管内で働き傷を固め止血をするが、その瘡蓋のようなフィブリンが溶解されないとフィブリン血栓となる場合があり、脳梗塞・脳出血・心筋梗塞・狭心症・大動脈がん・閉塞症・動脈硬化症・腎臓障害・眼底異常などさまざまな疾病リスクを高めてしまう。体内ではフィブリン血栓を融解する酵素プラスミンが作られているが、ミミズから見つけた酵素「ルンブルキロナーゼ」にはプラスミンの生成を助長する働きもあることがわかったと美原氏。つまり、「ルンブルキロナーゼ」はフィブリン血栓を直接溶かす作用と、プラスミン生成を促しフィブリン血栓を溶かす2つのアプローチで血栓症を予防し、血流を改善させると解説。これらの知見は昭和58年に国際血栓止血学会でも発表され、高い評価を得る。そこで美原氏は血栓症の医薬品を作れないかと考える。というのも、その当時から今に至るまで血栓を溶解する薬品のほとんどが注射によるもので、経口投与で十分という医薬品がほとんどないからだ。しかし、コストやさまざまなハードル、また成分の経口摂取という特徴から「健康食品」そして「予防」として活用する方が良いと考え、ミミズ乾燥粉末粉「ルンブルクス末」を開発。この研究成果によって、現在はミミズを用いた健康食品は多様に存在するまでに至っているが、残念ながら玉石混合であるので安全性と機能性が高いものを選んで欲しいと美原氏は話す。ちなみに純粋なルンブルクス末であれば過剰摂取のリスクや医薬品との併用リスクはないという。 健康は健全な血流から作られる!血栓は早めに溶かせ!というのが美原氏の考える健康の基本だというが、30代後半〜40代にもなると血栓が出来はじめるので、予防として一人でも多くの人に「ルンブルクス末」を知って欲しいと話した。