2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。
澤村 建造 氏 (株)TNCディレクター / グローバルフードアナリスト
グローバル視点で日本を元気に!をテーマに事業展開をする株式会社TNCでは、現在、70ヵ国、100地域、600人以上の海外在住日本人女性ネットワークLife Style RESEARCHERを抱え、独自のネットワークで世界各国の情報を収集しているという。その結果は毎月1回発行されている「フーディアル」という食のトレンド情報誌に集約されている。これらの知見から、2024年のグローバルな健康キーワード5つを紹介。
キーワード1:グリーンラベル、プランドベース
欧米ではヴィーガンやベジタリアンはすでに十分に浸透し、現在は、この括りに該当しない人々でさえ「少しでも健康的な食品を摂取したい」と考えるようになっているという。それを反映するようにプラントベース食品への需要は非常に高くなっていることは数字でも確認できる。消費者は、プラントベースやベジタリアンに移行しなくても、より健康的な食品を購入するために「クリーンラベルの製品」を選ぶ・選びたいと考えているという。また、これまでプラントベースの食品は、美味しさのために加工度の高い商品が多かったが、なるべく加工数を減らし、原材料も少なく、尚且つクリーンラベル製品が選ばれるようになっているという。さらに、プラントベースだからと言って、シンプルなパッケージやグリーン・ナチュラル・オーガニックなどのカラーを使うのではなく、ピンクや赤など、より親しみやすいパッケージにすることで、特別な人でなくても手に取りやすい工夫が仕掛けられているという。
キーワード2:オルタナティブ(代替)
健康問題、環境問題、価値観、社会問題などが大きく変化する時代に突入し、消費者の需要も大きく変化している。「小麦粉」「砂糖」「米」「肉」など、これまで当たり前に慣れ親しんできた食品や食材が、本当に健康に良いのか?見直されるようになっているという。もちろんこれらの食材の良さは生かしつつ、それぞれの食材の欠点や問題点をカバーしてくれる、オルタナティブの食が求められるようになっており、またこの問題を考えることが、未来の食のあり方や、サスティナブル、健康問題などを考える糸口にもなっているという。具体例として「小麦不使用サンドイッチやサモサ(英国)」「バナナフラワー(バナナの皮を破棄せず小麦粉の代替としてパウダー化したもの)(米国)」「キャベツや鶏肉から作られたピザ生地(スエーデン)」「エチオピアのテフを使った小麦粉の代替品(カナダ)」、他にもスイートポテトグラスヌードル(サツマイモから作った春雨のパスタ)などが紹介された。米国では小麦粉の代替としてレンズ豆粉、カリフラワー粉、アーモンド粉、ひよこ豆粉、米粉など20種類以上のパウダーが陳列されるようなスーパーもあり、多様化が進むさまざまなニーズに対応できるようになり始めていると紹介。また、東南アジアでは米の消費については糖質の摂りすぎにならないよう、こんにゃくや白滝を混ぜた米が販売されていることも紹介。他にも砂糖の代替アイテムはどの国でも注目されていて、白樺樹液、羅漢果、デーツ、柘榴シロップ、アガペシロップあたりは日本でもこれからますます人気になるのではないか、と話した。
キーワード3:インクルーシブ
世の中にはさまざまな人がいて、高齢者や障害者も健康を望み、同時に色を楽しみたいと思っている。あらゆる人の食の制限を外しケアすることは、結果的にマジョリティからの指示を獲得し、食はもちろんビジネスの可能性を拡大していく、と話す。例えばグルテンフリー食品は、グルテン不耐症の人やセリアック病の人だけでなく、小さい子どもにとっても安心で安全な食べ物になる。世界各国で高齢化が進んでいるが、高齢者や認知障害がある方、嚥下障害がある方でも食べやすい食品のニーズが高まっている。もちろん嚥下しやすい食品はやはり小さい子どもはもちろん、自閉症、ダウン症、口蓋裂などの人にも優しく望まれる食品だという。また欧米では、知覚障害の人に向けたパッケージ開発が進んできていて、パッケージにQRコードのようなもの(ナビレンズ)が印刷されているものが増えてきているという。これはスマホのアプリで読み込むと、どんな商品なのかその場で音声解説が始まるサービスだ。パッケージの文字が読めない人からのニーズが非常に高まっているという。特に、P&Gの潜在や、大手シリアルブランドのケロッグ、コカコーラなどがいち早くこの取り組みを行っているという。さらに、メンタルケアのニーズに答える商品の登場についても紹介。先進国の10代の44%がメンタルに悩みを抱えているのに、具体的な助けを求められないでいるという。そこに向けてオーストラリアでは若者が好きなドリトスやキットカットといったスナック菓子のパッケージにQRコードをつけ、そこにアクセスすると無料でメンタルサポートサービスが受けられるようになっているという。学校や親には相談できないと考える子どもたちのニーズに食品業界からも応えたいということだろう、と解説した。
キーワード4:安眠・快眠
スマホ社会、ネット社会になり睡眠の問題を抱える人が世界的に急増しているという。もちろん激変するライフスタイルや高齢化、コロナ禍など、社会的な不安も睡眠トラブルの一因となっている。その中でも日本は世界有数の睡眠負債国とされ、海外と比較しても日本には睡眠関連の食品や商品が多くなっているという。中でもヤクルト1000の爆発的ヒットは記憶に新しい。米国では朝食といえば「シリアル」が主流だが、近年は「安眠用のシリアル」が登場していて、シリアルの中にラベンダーやカモミールといった安眠効果や誘眠作用のある素材が添加されたものまで登場しているという。他にも安眠を謳ったアイスクリームやクッキーも登場していて、「ナイトフード」という新しいカテゴリーが登場しそうだと説明した。栄養素としてはよく知られる「マグネシウム」の安眠効果に注目が集まっているという。
キーワード5:ヌートロピック
ヌートロピックとは、健康な人の脳の機能や認知機能を高め、記憶力や集中力、認知機能の向上を促進するとされる物質の相性だ。現時点ではまだまだ補助的なものにすぎず、とはいえ、医薬品や注射に比べて身体の内部環境を乱しにくく、食品であるから副作用もほとんどない。身体への負担が低い、という点からもニーズが高まっているという。ヌートロピック製品は、高齢者に限らずストレスフルなビジネスマンや学生、アスリートなどからも強いニーズがあり、具体的な成分として、「カフェイン、タウリン、テアニン、イチョウ葉エキス、高麗人参、キノコ類」などが紹介された。特にキノコの人気は急上昇で、サプリメントだけでなくチップスやコーヒー飲料としても人気があるという。 日本でも、健康志向、ナチュラル志向、インクルーシブなどはニーズがあるのではないか、とまとめた。