2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。
健康産業新聞 編集部 記者 長谷川光司
2023年度の健康食品市場規模について
業界全体の動向としては非常に堅調で、2023年度、健康食品の売り上げが初の1.3兆円台を突破したことを報告(前年比約2%増)。健康食品市場は2005年がピークとされており、2005年に1兆円を突破したが、それ以降安全性の観点などが度々話題となり、市場は落ち込み伸び悩んだ時期が長かった。しかし2010年代から復調傾向となり、2015年には機能性表示制度がスタートし、緩やかにではあるが再び成長トレンドに入っていた。さらに、コロナによって追い風が吹き昨年はついに1.3兆円台を突破したという流れだ。健康食品の売り上げを販売チャネル別で見ると一番大きいのはやはり通販であるが、前年比では微減で、何よりも伸びているのがドラッグストアで、ここは前年比9.3%増を報告。ドラッグストアでの健康食品の売り上げは、コロナ前からコロナ後まで一貫して成長傾向にあり、まだまだこの傾向が続きそうだ。ちなみにドラッグストアの店舗数は昨年度で1万9000店舗を超えていて、ドラッグストアでは主に、プロテイン、コラーゲン、ベースビタミンが売れ筋と解説。ただし健康食品業界も物価高の問題は避けられず、マルチビタミンや青汁は2022年度から値上げ傾向にあり、総務庁の調査によれば、健康食品の支出は4%増と報告されるが、これも値上の影響の可能性があると指摘。
新商品の開発活発化について
健康食品の受託市場について240社にアンケートを行った結果、全体として「回復基調にある」という答えが多かったが、エネルギー高騰で「利益率が下がった」という回答も多かったと解説。人手不足が深刻で、同調査によれば84%が人手不足だと回答しているという。同アンケートによれば、健康食品の人気素材は「乳酸菌」「NMF」「コラーゲン」で、特に2021年からNMFの人気が急上昇しているという。乳酸菌による機能性表示食品はすでに700件を越えて市場も安定期に突入している。過去に人気素材であった青汁は減少傾向だが、名前を「青汁」から「ボタニカル」「グリーンチャージ」と変更することで人気を再獲得しているケースや、海外のトレンドを見ても、まだまだ一定のニーズが見込めるのではないか、と指摘。プロテイン市場は堅調だが原料の高騰の影響があるという。業界全体で新商品の開発が加速度的に進んでおり、「免疫×青汁」「免疫×睡眠」「NMN×コラーゲン」といった掛け合わせ商品や、フェムテック系サプリメント、オートミールを使った完全栄養食品がヒットしていると報告。また、2024年のトレンドとして「メンテック(男性更年期)」「オートファジー」「ペットサプリ」などに注目が集まりつつある、とした。
機能性表示食品について
累計7000品を突破したが先月取り下げが相次ぎ、現時点で6980品となっている。特保商品は現在132社、1059品で市場は拡大しているとはいえず、機能性表示食品が圧倒的に盛り上がっている。人気の関与成分は「GABA」「難消化性デキストリン」「DHAとEPA」あたりで大きな動きはない。厚労省が2020年7月に発表した国民生活基礎調査によればサプリメントの摂取について「男性22%、女性28%」と男女関係なく、また年齢が上がるほど摂取率が高くなる傾向が示されていて、市場は安定しているとした。
国立栄養研のデータ使用不可などに伴う動向
2023年6月、機能性表示食品の2商品を対象に景表法違反で措置命令が発令され、同一成分を使っている約88品すべてが届出撤回を申し出るという大きな出来事があった。また、先の問題とは別にSR(システマティックレビュー)で国立健康・栄養研究所の素材情報データベースを使用していた場合、商用目的の利用が禁止であるために機能性表示食品の届出資料の情報源として利用できない、という著作権問題も発生。ここまで国立健康・栄養研究所の素材情報データベースを使用している場合は速やかに新たなSRを届け出るなどの対応に迫られているという。また新規の届出についても届出受理のタイミングが後ろ倒しになるなど混乱が生じているが、最新のガイドラインに従って届出書式を完成させるしかないとした。本年度は「厚労省の食品衛生基準が消費者庁に移管」「錠剤・カプセルに関するガイドライン改正予定」「健康被害情報の仕組み化」「送料無料表示の法規制について(昨年は見送り)」など他にも動きがありそうなので注目してほしいと話した。