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2024.4.15アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性食品開発展オンライン

2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。

(一財)生産開発科学研究所 薬学博士 眞岡孝至

アスタキサンチンは1933年にオーストリアの生化学者リヒャルト・クーン氏らによってロブスターの甲羅から単離され、その後さまざまな元素分析が行われ1938年に構造が決定されたカロテノイドの一種である。

1948年以降は、さまざまな動植物にアスタキサンチンが存在することが明らかとなり、ネイチャー誌など科学雑誌に発表されるようになった。例えば、1948年には昆虫に含まれるアスタキサンチン、1955年にはフラミンゴのアスタキサンチン、1959年にはアキザキフクジュソウのアスタキサンチンと、動植物に含まれる天然色素に関する論文が多数発表された。そしてアスタキサンチンに大きな注目が集まったきっかけとして、サケの赤色色素がアスタキサンチンであると解明されたことによる部分が大きい、と眞岡氏。1933年にスウェーデンの生理学者であり薬学者であるフォン・オイラー氏らがサケの筋肉から赤色素を単離することに成功し、1973年にこれがアスタキサンチンと同定。この後、サケにおけるアスタキサンチンの存在意義や機能解明が行われるようになり、アスタキサンチンそのものの機能解明の鍵になったという。

そもそもサケは川で生まれた時はベージュ色をしていて決して赤くはない。ところが海に移動し遊泳している間に、甲殻類のプランクトンを餌とすることで筋肉にアスタキサンチンを蓄積していく。筋肉にアスタキサンチンを蓄積することで運動機能を高め、抗疲労作用を発揮すると考えられる。特に生まれた川に戻り遡上する行為は、サケにとって非常に負荷が大きく筋肉ストレスも強いためアスタキサンチンを蓄積しておく必要がある。やがてオスは蓄積したアスタキサンチンを婚姻色とし体の外にも移すので赤い色が出てくる。メスはアスタキサンチンを体内に残したままにしておくが、それはいずれ卵に移行するという。婚姻色が強いオスと、アスタキサンチンの体内の含有量が高いメスとの間に生まれた卵は孵化率が高く、卵の赤色は母親の体内に蓄積されていたアスタキサンチンが移行したものであるが、この赤色によって強い抗酸化作用や光酸化防御機能が発揮されていると解説。

1991年に日本ではマダイの養殖が盛んになるが、この時にアスタキサンチンを投与した真鯛、投与しない真鯛、ビタミンEを投与する真鯛、βカロテンを投与する真鯛などで卵質改善が可能になるかという研究が行われており、この際にもアスタキサンチンを投与した真鯛が最も孵化率が高くなり、正常仔魚が生まれやすいという結果が報告されたという。

1990年には国際カロテノイド学会において、幹渉博士(サントリー)によってアスタキサンチンがα-トコフェロールの100倍のフリーラジカル抑制効果があることを示し、この辺りからアスタキサンチンはスーパービタミンEと言われるようになった、と説明。そもそもアスタキサンチンに限らず、カロテノイドが抗酸化作用を発揮するメカニズムには「物理的消去」と「化学的消去」の2つがあるという。アスタキサンチンはこの2つの抗酸化メカニズムを兼ね備え、物理的消去については、βカロテンやルテインと比較して物理的消去が長く続き、活性酸素と反応しても壊れにくくプロオキシダント(酸化促進物)になりにくいという特徴があるという。さらに、アスタキサンチンは一重項酸素消去のみならず脂質過酸化、ヒドロキシラジカルといった複数種の活性酸素を消去する作用も持つ。何よりアスタキサンチンの酸化生成物は酸化促進物質になりにくく、酸化生成物であるアポカロテノイド自身にも抗酸化作用があることが確認されていると説明した。

アスタキサンチンは強い光のストレスにさらされる生物や、極限状態に生育する生物には不可欠な物質で「光酸化防御能」や「紫外線保護作用」は特に優れている。またヒト試験において、アスタキサンチンの摂取で運動エネルギー源として脂質が優先的に利用され糖質の利用が抑えられ、持久力が高まり疲労回復が早いことが確認されている。最近はアスタキサンチンの抗糖尿病作用・抗肥満作用も確認されており、アスタキサンチンの投与でインスリン分泌が増加し血糖値が低下することや、アスタキサンチンの抗酸化作用によって腎臓などの内臓や細胞が活性酸素から守られることも確認できていると紹介。さらにアスタキサンチンが最も特異な点は、脳血管関門を通過し、脳や中枢神経に蓄積し、そこに存在する不飽和脂肪質の過酸化を抑制するという点だと解説。アカゲザルの試験ではアスタキサンチンは大脳脂質・大脳髄質・小脳・中脳・線条体・海馬・間脳・網膜にも蓄積することが確認されているという。 これまで報告されてきているアスタキサンチンの生理活性の研究には主にヘマトコッカス由来のアスタキサンチンが用いられていて、現在、多くのサプリメントや化粧品素材にもヘマトコッカス由来のアスタキサンチンが用いられている。すでに、健康・アンチエイジング・美容素材として広く利用されているアスタキサンチンであるが、高齢社会に不可欠な素材であり、ますます利用分野が広がっていくのではないかと話した。

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