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2024.12.11機能性表示食品における国の規制強化と検査機関としての取り組み食品開発展2024

2024年10月23日(水)〜25日(金)、東京ビッグサイトにて「食品開発展2024」が開催された。食品分野の研究・開発、品質保証、製造技術者向けの専門展示会である食品開発展。今年度で35回目を迎え、約4万人の来場者で賑わった。ここでは出展社プレゼンテーションから(公財)山口県予防保健協会食品環境検査センターによる「機能性表示食品における国の規制強化と検査機関としての取り組み」を取り上げる。

(公財)山口県予防保健協会食品環境検査センター

2015年4月からスタートした機能性表示食品制度はすでに8000品を突破しており、現在も堅調に市場を拡大している。しかし、市場が拡大すればするほど「安全性が企業任せであり、規制が不十分なのではないか」「科学的根拠の質が低下しているのではないか」といった声も多く上がるようになり、実際、制度そのものは何度もアップデートを繰り返している。2024年3月に紅麹サプリメント問題が起こり、この機能性表示食品のサプリメントの摂取による急性腎不全が原因で少なくとも6名の死亡事例が報告されたことで、規制強化は必須だと、業界内外から強い声が上がり2024年8月、内閣府は「食品表示基準の一部を改正する内閣府令」を交付した。

今回行われた規制強化による変更点は大きく7つある。1つ目が「健康被害情報の収集、行政機関への情報提供の義務」だ。届出者は遵守事項として、健康被害と疑われる情報は速やかに収集し都道府県知事等と消費者庁長官に提供しなければならないことが定められた。具体的には重篤事例が発生した30日以内、また同じ所見の症例が2例発生した場合、健康被害を診断した医療機関名を把握した15日以内に届け出ることが遵守事項と明記されている。これは紅麹問題が把握から公表まで2ヶ月以上の期間を要し、被害が拡大したことが背景にあると考えられる。2つ目が「GMPに基づく製造管理規定」だ。特に錠剤・カプセル剤等の食品について、製造を外部に委託している場合も含め、消費者庁が作成したチェックリストに沿ったGMPに基づく製造管理を行わなければならない。これも紅麹サプリメントの製造工場に問題があったことが影響していると推測される。現在、錠剤・カプセルの範囲については「グミや天然由来の濃縮物の扱いもGMPの対象になるのか」、といった懸念が各事業者より寄せられており、消費者庁はこれらの懸念事項については2025年4月1日までに消費者庁として明確な範囲を示すとしている。3つ目が「1年ごとの自己評価の実施」だ。今後、機能性表示食品の届出者は1年ごとに自己評価を行い、その結果を毎年消費者庁長官に報告することが規定された(2025年4月1日施行)。4つ目が「表示方法や表示位置の見直し」である。摂取する上での注意事項として医薬品との相互作用や過剰摂取防止のための注意喚起を具体的にするなど見直しが検討されている。こちらは2024年9月1日に施行となっていて(経過措置は2026年8月31日まで)、このルールに従い、現行の機能性表示食品も含め2年以内にパッケージ表示の変更が必要となるので、経過措置期間内に対応をしなければならない。6つ目として「届け日以降に科学的検知が充実し、機能性関与成分について適切でないと消費者庁が認めた場合、機能性表示食品の要件を満たさない」ということも規定された。他にも届出情報をより具体化することや、届出実績のない新規成分にかかる届出者の評価を慎重に確認するために、販売前の資料の提出期限に原則60日営業日を特例として120日営業日とすることが規定され、規定の変更に伴い届出者は新たな動きが必要となるが、しかし安全性を守るために必要な制度としてブラッシュアップされている、と解説。 このように規定が一段と細かく設定されたことで消費者庁に届出を行ってから確認、許可が降りるまでにこれまで以上に時間がかかる可能性が懸念されている。山口県予防保健協会食品環境検査センターも含め、機能性関与成分の検査を短期間で行っている業者に協力を仰ぐのも一つであるし、これからは1年ごとの自己評価についても早めに準備する必要があるため、外部の専門組織に並走してもらう企業も増えるのではないかと話す。消費者から信頼を得るため、また紅麹問題のようなトラブルを起こさないためにも、より安全性の高いルールを守った状態で機能性表示食品の製造・販売・PRを行ってほしいとまとめた。

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