
2025年2月26日(水)〜28日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2025」が開催された。今年で43年目を迎える国内のヘルスケア展示会で最長の歴史を誇る「健康博覧会」。今年も健康食品やサプリメントに加え、ウェルネス、リカバリー、フェムテックだけでなくメンテックといった新たなカテゴリーも登場し、約500社の出展と約4万人の来場者で賑わいを見せた。ここでは出展社プレゼンテーションから「すだち果皮をアップサイクル〜スダチチンがあなたの健康を守る〜」を取り上げる。
第一工業製薬(株)
第一工業製薬(株)は2018年にライフサイエンス事業に着手し、その際に徳島の池田薬草(株)や岩手のバイオコクーン研究所と提携し、「健康・長寿の達成」「地域活性化」などの課題を解決するための機能性食品素材の開発にも取り組んできた。
徳島県では年間約4100トンのすだちを生産しており、これは日本のすだちの99%を占める。しかし、すだちの50%は青果として、残りの50%は果汁として使用されるため、果汁用のすだちからは年間1000トン以上の残渣が生じてしまう。この残渣の一部は魚の餌として利用されたり、堆肥化されたりもするが、多くは破棄されるため、第一工業でもアップサイクルについて検討してきた。そこで池田薬草(株)が開発したのが、すだちの果皮から抽出・精製される「スダチチン」である。スダチチンは、すだち果皮に含まれる特有のポリフェノールで、香り成分ではなく、苦味もなく、加熱に強く、水には溶けないといった特徴がある。スダチチンは、他のポリフェノールと同様に、すだち自身が自分を守るために光合成の過程で作り出す物質であり、多くの柑橘類に含まれるポリフェノール「ノビレチン」に似た構造を持つ。一方、すだち果汁は、レモン果汁と比較すると、カルシウム・カリウム・αトコフェロール・βカロテン・亜鉛・鉄などのミネラル成分が非常に多く含まれており、優れた特徴を持つ。しかし、スダチチンの研究は長らく進展しなかった。しかし、構造的に似ているポリフェノールであるノビレチンの機能性として「抗糖尿病作用」などの論文が発表され、徳島県民は糖尿病での死亡率が他県と比較して高いという健康問題も抱えていた。そこで徳島大学を中心にスダチチンの研究が始まり、スダチチンにも脂肪細胞を減少させる作用があることが確認された。マウスの試験やヒト介入試験でも、スダチチンの摂取によって内臓脂肪や皮下脂肪の低下、体重抑制効果が確認された。最終的にヒト臨床試験に進み、メタボリックシンドロームの境界型(BMI23kg/㎡以上)に分類される人を対象に、スダチ果皮エキス末を12週間継続摂取した試験が行われ、その結果、全脂肪面積の低下、内臓脂肪の低下、皮下脂肪面積が有意に低下したことが報告された。 現在、スダチチンの研究はさらに進んでおり、「潰瘍性大腸炎の改善(特に初期に効果あり)」「脳梗塞の抑制」「自律神経の調整」といった効果も確認されている。また、スダチチンには香りがないが、すだち果皮から同様にアップサイクルで作られる「スダチオイル(精油)」は、さわやかな柑橘の香りに特徴があり、香りが強いと交感神経が優位になり、「疲労回復」や「体温向上」の効果が得られ、香りが弱い場合は「誘眠作用」や「鎮静作用」など、副交感神経優位の効果が見られるとされ、消費者のニーズが高いことがアピールされた。