
2025年2月26日(水)〜28日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2025」が開催された。今年で43年目を迎える国内のヘルスケア展示会で最長の歴史を誇る「健康博覧会」。今年も健康食品やサプリメントに加え、ウェルネス、リカバリー、フェムテックだけでなくメンテックといった新たなカテゴリーも登場し、約500社の出展と約4万人の来場者で賑わいを見せた。ここでは出展社プレゼンテーションから「CBDと大麻取締法の改正」を取り上げる。
弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所
CBD(カンナビジオール)は、大麻草に含まれる化合物カンナビノイドの一つで、鎮静作用などの効果があるとされ、近年、世界各国で注目を集めている成分である。日本でも市場は確実に拡大している。CBDの機能はさまざまだが、よく知られている成分の中では比較的GABA(γ-アミノ酪酸)と類似しており、特にリラックス効果を期待する人々に支持されている。市場が拡大している背景には、CBDが健康食品やサプリメントの素材としてだけでなく、化粧品や雑貨としても活用されている点があるだろう。
とはいえ、CBDは大麻草の種子などから抽出されるため、違法性が疑われることがあり、実際「よくわからない」「怖い」といった誤った印象を持っている消費者もまだまだ少なくない。しかし、麻は衣料品としてもよく知られており、七味唐辛子に含まれる麻の実など、日本人にとっても馴染みのある植物である。ただし、これまで国内では大麻に関する法律が整備されておらず、国内市場で流通するCBD製品のほとんどが輸入品であった。そのため、取扱業者が知らないうちに違法な大麻成分を含む輸入品を扱ってしまい、摘発されるケースも報道されている。
このような現状を踏まえ、2023年12月に関連法が改正・施行され、「大麻取締法」は「大麻の栽培の規制に関する法律」という名称に変更された。新法では、大麻を麻薬として位置付け、関連するCBDの取り扱いについても明確な基準が設けられた。
法改正の背景と内容
CBDは大麻草の茎や種子から抽出されるが、同じく大麻草の花穂や葉などから抽出されるTHC(テトラヒドロカンナビノール)という成分は、高揚感や幻覚作用があり、依存性が高く健康被害のリスクもあるため、厳格な規制が必要とされている。従来は、大麻草の部位によって違法性が判断されていたが、今回の法改正により、THCの含有量で規制の対象とする方式に変更された。つまり、規制すべきは有害性の高いTHCであり、THCの残留限度値が設定され、限度を超えたものは「麻薬」として規制されることとなった。そのため、事業者は取り扱う製品が麻薬に該当しないことを証明するために、「成分分析表」を必ず用意する必要がある。
また、従来は大麻が麻薬や覚醒剤とは異なるカテゴリとして扱われていたが、今回の改正で「麻薬」として位置付けられた。これにより、すでに禁止されている「所持」「譲渡」に加えて、「使用」も禁止され、厳罰化された。
一方で、これまで大麻取締法で規制されていたため、医薬品として大麻草由来成分を使用することはできなかったが、今回の改正により、医療用としての使用が認められた。ただし、麻薬使用者(医師)による麻薬処方箋が必要な医療用麻薬として取り扱われることになり、同じく植物由来の医療麻薬であるモルヒネと同様の扱いとなった。
栽培規制の見直しと国内生産の可能性
今回の法改正では、大麻草の栽培に関する規制も見直された。具体的には、大麻草の栽培許可を「第1種」と「第2種」に分ける制度が導入された。「第2種」は医薬品向けの大麻草を対象とし、「第1種」はその他の製品向けとされている。これにより、国内でのCBD製品の生産が可能となり、将来的には国内供給の拡大が期待される。
輸入規制と遵守すべきポイント
従来と同様、CBD製品の輸入時には成分検査が義務付けられている。輸入品が基準濃度以上のTHCを含んでいる場合、麻薬を輸入したとみなされ、麻薬取締法違反となる可能性があるため、十分な注意が必要である。厚生労働省の通達により、CBD製品の輸入を行う際には届出が必要とされ、意図的な違反でないことを証明するための手続きも求められる。違反が発覚した場合には、製品の全回収などの対応も必要となる。 CBDはその優れた機能が認められており、適切に活用すれば多くのメリットがある。しかし、法規制を十分に理解し、適切な手続きを踏まなければ、違法行為とみなされるリスクがある。そのため、CBDの販売・製造・輸入を行う事業者は、最新の法規制を遵守しながら、安全かつ適切に取り扱うことが求められる。今後、国内市場におけるCBDの発展には、法規制の動向を注視しながら適切に対応していくことが重要である。