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2025.4.7産総研と筑波大のコラボによる抗老化機能性素材の開発

2025年2月26日(水)〜28日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2025」が開催された。今年で43年目を迎える国内のヘルスケア展示会で最長の歴史を誇る「健康博覧会」。今年も健康食品やサプリメントに加え、ウェルネス、リカバリー、フェムテックだけでなくメンテックといった新たなカテゴリーも登場し、約500社の出展と約4万人の来場者で賑わいを見せた。ここでは出展社プレゼンテーションから「産総研と筑波大のコラボによる抗老化機能性素材の開発」を取り上げる。

(国研)産業技術総合研究所

1.イソラムネチンの心房細動予防効果

産業技術総合研究所と筑波大学の共同研究による抗老化機能性成分セミナーでは、天然成分を活用した5つの抗老化機能性成分の開発について、最新の研究成果が報告された。まず、日本ではサルスベリとして知られるNitraria retusaに多く含まれるフラボノールの一種であるイソラムネチン(ISO)について紹介。抗炎症、抗酸化、抗脂肪作用、そして「心房細動予防効果」が発見されたことを報告。

イソラムネチンはポリフェノールの一種で、タマネギに含まれるケルセチンに似た構造を持つ。サルスベリの他、ナッツ類、タマネギ、ワインなどにも含まれている。「心房細動」とは不整脈の一種で、心房が1分間に約400〜600回痙攣する状態とされる。頻脈や脈の乱れを引き起こし、心不全や脳梗塞などの重篤な病気と関連がある。国内の心房細動患者数は100万人と推計されており、加齢とともに有病率が増加するため、高齢化が進む日本において重大なリスクとされているが、現在の薬物療法には限界があり、患者の半数以上が再発を繰り返すことから、食品成分による新たなアプローチが模索されている。

筑波大学の研究により、イソラムネチンには抗肥満作用や抗糖尿病作用、非アルコール性脂肪肝炎抑制作用があることが既に明らかとなっている。さらに、心房細動誘発モデルマウス試験において、マウスを2群に分け、イソラムネチン投与群と非投与群で比較したところ、投与群では心房細動の発症率および持続時間が有意に低下し、組織評価により心房の線維化が抑制されることも確認された。この結果から、イソラムネチンは心房細動の発症予防に有望な天然由来化合物である可能性が示唆されている。今後はそのメカニズムの解明と臨床応用研究が進められる予定である。

2. ブドウ果皮の学習・記憶障害に対する知見

ブドウ品種「富士の夢」果皮には、一般的な品種には含まれない高濃度のアントシアニン類(デルフィニジン-3-グルコシド、デルフィニジン-3.5-ジグルコシド、マルビジン-3.5-ジグルコシド)が含まれている。本研究では、老化促進モデルマウスにこのブドウ果皮抽出成分を投与したところ、炎症関連マーカー(TNF-α、IL-6 など)が有意に低下し、さらにオックスフォード大学との共同研究で、神経幹細胞の増殖促進や神経新生を促進させることが確認された。これにより、日本生まれのブドウ品種であるブドウ果皮由来のポリフェノールが、加齢による空間学習の低下・記憶機能の低下の改善に寄与する可能性があることが示唆された。

3. 新たなスクアレン誘導体の開発

スクアレンは、動植物に広く存在する天然のトリテルペンであるが、その誘導体が薬物のデリバリーシステムや発毛促進に応用できる可能性があると説明された。研究チームは、スクアレンの生理活性を向上させるため、エチレングリコールを選択的に付加させたスクアレン誘導体を合成し、その機能を評価。エチレングリコール付加スクアレンは水中で13ヶ月以上安定し、薬物を内部に保持しても安定性が高く、人に対して安全性が高いことも確認された。

さらに、老化による脱毛モデルマウスにおいて、エチレングリコール付加スクアレンを塗布したところ、ミノキシジルと同等以上の発毛促進作用を示すとともに、老化関連遺伝子の発現を有意に抑制することも確認された。これにより、医薬品や化粧品への応用が期待される。

4. オリーブ葉由来オレアセインの抗うつ素材の可能性

オリーブ油に含まれる希少成分オレアセインを、オリーブ葉に含まれるオレウロペインから固体触媒を用いて直接製造する技術が開発された。オレアセインはオレオカンタールと似た構造を持ち、抗炎症・抗がん・神経保護・βアミロイド抑制作用が期待されている。研究の結果、オレアセインには抗うつ作用があり、その効果は一般的な抗うつ剤フルオキセチンよりも高いことが確認された。これまで大量に廃棄されていたオリーブ葉の有効活用が期待される。

まとめ 他にも、廃棄物を大幅に削減する「逆伸長型ペプチド合成法」など、持続可能な技術開発が紹介された。これらの研究成果は、食品、農業、化粧品分野での応用が期待される。

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