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2025.10.17日本人の健康意識調査に合わせた機能性素材の提案食品開発展2025

2025年10月15日(水)〜17日(金)、東京ビッグサイトにて今年で36回を迎える「食品開発展2025」が開催された。今年は出展社数が過去最大の671社となり、来場者はのべ4万人と報告されている。食品、飲料、菓子、健康食品などに利用される新素材や注目の機能性成分など、さまざまな最新技術の紹介や国内外のトレンドについてのレポートが活発に行われた。ここではdsm-firmenich社の「日本人の健康意識調査に合わせた機能性素材の提案」を取り上げる。

日本人の健康意識調査に合わせた機能性素材の提案
dsm-firmenich社

dsm-firmenich社が主催したセミナーでは、まずアジアにおける健康・栄養に関する最新のトレンドと市場の洞察が紹介された。経済情勢や気候変動など、世界を取り巻く環境が複雑化することを背景に健康食品によるメンタルヘルスや情緒へのアプローチ(主にサプリメント)が求められる一方で、ビタミンやミネラルといった基礎的な栄養素の重要性が再確認されているという。これらは「普遍的」であり、健康・栄養業界の基盤を支える要素として強調されているからだ。dsm-firmenich社が行った世界的な市場調査によれば、ビタミン・ミネラル市場において、特にアジア・オセアニア地域において2024年以降大きく市場をリードしていることが明らかになったと報告。特に韓国と中国が供給量・市場規模の両面で突出しており、市場の成長を牽引している。日本はアジア市場全体の約6%から11%の割合で市場拡大が進んでいる。これは、市場の成熟度と消費者の健康意識が関係しているという。例えばインドやインドネシアといった国はまだビタミン・ミネラルの必要性が浸透しておらず、今後の情報拡大による市場の伸びしろが大きいエリアと位置づけられるが、一方で、日本、韓国、オーストラリアなどの先進国では、既に消費者の理解度が高く、サプリメント市場も「成熟」している状態で、成熟市場においては、単に栄養素を提供するだけでなく、「どうやって消費者の方々に届けていくか」といった工夫、すなわち付加価値や摂取方法の革新が、市場を今一度広げることに貢献するのではないか、と提案。

さらに、dsm-firmenich社が2年に一度実施している「グローバル健康懸念追跡調査」の最新データ(2025年を含む)から、アジアオセアニア地域全体のトレンドと日本の固有のニーズの変化が解説。アジアオセアニア地域全体で見た場合、最も求められているニーズが「目の健康(視覚)」だ。これは、ルテインやゼアキサンチンといった、ブルーライト対策などに関連する素材の有効性が高いことを示唆している。一方で、日本やインドといった国々では「病気予防」、特に「高齢化に伴う疾病の予防」への注目が高まっていることが明らかになっており、日本のデータに絞って過去10年間の推移を見ると、2023年までは「目の健康」への懸念が1位であったが、2024年に入って「加齢に伴う病気・疾病への不安」がその順位を上回る結果となり、これは、日本の高齢者層の増加という人口動態の変化と強く関連していると考えられる。おそらく、インドも高齢化が進んでいるので同様の背景があるのではないかと指摘した。

その他の傾向として、「体重管理」への関心は低下傾向にある一方で、「メンタルヘルス」(睡眠の質、ストレスレベルへの対応)への関心が再び高まっている。さらに、2019年から2024年の6年間で特に大きく伸びている市場は「消化器・腸の健康」、すなわち「腸内環境へのアプローチ」であることが示された。日本人の健康不安への対応策の変化を見ると、2017年から2025年にかけて最も大きく伸びている要素は「睡眠」であり、睡眠の質を高めて体の回復やストレスレベルのフォローを求める傾向が非常に高まっていることが明らかになっている。これにより、睡眠に効果を持つ素材の市場は今後も伸びることが予測される。

栄養素の認知度に関しては、ビタミンC、カルシウム、鉄は非常に高い認知度を維持しているが、2019年から2025年にかけて「ビタミンD」と「ルテイン」の認知度が大きく増加していて、ルテインは目の健康への関心の高まりに牽引され、ビタミンDはコロナ禍を経て免疫関連の訴求が高まったことが背景にあると考えられる、と解説。また、健康問題の深刻度に関するデータでは、2025年の段階で「実際に疾患や症状が起きている」と答えた消費者の割合が増加傾向にあり、懸念事項の項目別では、男性・女性独自の健康問題や、髪・肌・爪といった「見た目」や美容とも関連する問題への懸念も多く見られ、老化と疾病の境が曖昧になってきているのではないか、とした。

これらの分析から、消費者目線での製品開発の重要なポイントとして「長寿と予防:加齢に伴う疾患の予防など、根源的な健康課題へのアプローチ」「基本的な健康:毎日をエネルギッシュに生きるための、目の健康や肌の調子など、消費者が気になっている具体的なパーツへのアプローチ」が特に日本市場でのニーズが高いのではないか、と推測。日本のような成熟市場における差別化戦略として、製品のイノベーションも重要視される。例えば韓国では、血管疾患や脳機能などに注目が集まっており、オメガオイルを含ませたカプセルが登場している。栄養素の摂取方法にも変化が見られ、従来の錠剤やハードカプセルといった医薬品に近い形状から、最近では「グミやカプセル」など、お菓子に近い感覚で「摂取しやすい」形状への需要が伸びている。さらにその先には、栄養素の吸収効率を高める「リポソーム化」や「マイクロビーズカプセル」といった、エビデンスに基づき成分を効率よく取りたいというニーズへのシフトが推測される。腸の健康への注目度が高まる中で、乳酸菌の形態にも変化が見られる。生きた乳酸菌だけでなく「殺菌体の乳酸菌」や「乳酸菌が生み出した物質」である「ポストバイオティクス」を成分として配合する提案が進んでいて、女性の健康を促進する製品など、海外での動向を踏まえた、日本市場での今後の伸びは期待される。
成熟市場で成功するためには、単なる栄養素の提供に留まらず、消費者の切実な不安やニーズに対応した「機能性」と継続しやすい「摂取形態」の両面におけるイノベーションが不可欠ではないか、とまとめた。

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