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2013.10.17身体をいためつける薬・治療から脱却する時期にきている

新潟大学大学院医歯学総合研究科 教授 安保 徹 氏

我が国で依然死亡原因のトップを走り続けるがん。現代医療を駆使しても死亡率の上昇が止まらない。新潟大学大学院医歯学総合研究科の安保 徹教授は、無理な生活でストレスをかけることが最も悪いと説く。免疫を高め、がんを予防するための心得を安保氏に伺った。

安保 徹(あぼ とおる)

<略歴>
昭和22年10月9日生まれ。東北大学医学部卒。昭和47年に青森県立中央病院に内科研修、昭和49年に東北大学歯学部微生物学の助手となる。昭和54年に米国アラバマ大学に5年間留学。平成3年、新潟大学医学部の教授となる。現在、新潟大学大学院 免疫学・医動物学分野 教授。

<業績>
1980年:ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体(Leu-7)の作製
1990年:胸腺外分化T細胞の発見
1996年:白血球の自律神経支配の発見
2000年:マラリア感染の防御は胸腺外分化丁細胞によって行われる

<著書>
「こうすれば病気は治る~心とからだの免疫学」(新潮選書)、「免疫革命」(講談社インターネショナル)、「絵でわかる免疫」(講談社)、「未来免疫学~あなたは顆粒球人間かリンパ球人間か」(インターメディカル)、「医療が病いをつくる~免疫からの警鐘」(岩波書店)、「ガンは自分で治せる」(マキノ出版)など多数。

身体をいためつける薬・治療から脱却する時期にきている

新潟大学大学院医歯学総合研究科 教授
安保 徹 氏

— 免疫研究に入られたきっかけについて

安保: 大学を卒業して、肺がんやリウマチ専門の内科の研修をしましたがそこで中々病気が治せないことがわかりました。医者であれば病気を治せるものと思っていましたが、肺がんやリウマチも全然治せないことに失望しました。

その頃、30年ほど前ですが、免疫研究の勃興期で、免疫はがんやリウマチとも関係あるということが予想できましたので、免疫研究に入りました。

— 病気を治すのも本人次第と先生はおっしゃっていますね。免疫学からみた治癒のメカニズムについては

がんになる人は交感神経の緊張状態が続くような無理な生活をしている

安保:長い間、がんとか膠原病の成り立ちは原因不明といわれてきました。原因不明ですから根本的な治療はできません。がんでしたら取るとか小さくするとか、膠原病でしたら症状を抑えるという発想でした。
8年前に白血球の自律神経支配ががんに関わっていることが判って、がんになる人は無理がたたっていること、ストレスが発症の原因となることなどがわかってきました。

無理な生き方というのは、交感神経の緊張が続いているような状態で、活性酸素による組織破壊などもおきます。ですから、がんはこれまでのように原因不明ということで、対処療法をする世界ではなくなってきました。つまり、生き方を見直すことが大切であるということがわかってきて、がんやリウマチのような病気にも積極的に対応できるようになりました。

がんは自然退縮する病気

安保:がんは治る病気であるというのは、昭和40年頃に既に論文がありました。一人は九州大学に心療内科を作った池見酉次郎先生です。また、金沢大学がんセンターの所長の岡本肇教授は、がんの人は熱を出すような病気になると、がんが自然退縮する、がんは自然退縮を頻繁にする病気であるともおっしゃっていました。また、がんはリンパ球の減少する病気だと提唱する先生もいました。

昭和40年代にいろいろな抗がん剤が外国から輸入され、日本でも使われるようになった時、抗がん剤に対する期待が大変強くなって、がんは自然に治るとか、熱で治るとかという消極的な治療法には誰も関心を向けようとしませんでした。

新たな抗がん剤の登場で、医薬品を使うことに医師たちの関心向かう

安保:ちょうど、日本も高度経済成長期に入り、科学に対する信頼が大変高くなって、次々に新しい抗がん剤も出て、積極的にがんに立ち向かっていこうという姿勢でしたから、自然治癒のような消極的な考え方に同調する人がいなくなっていったんですね。それから30、40年、ありとあらゆる抗がん剤をひととおり試してみましたが、がんの死亡率はというと、ゆっくりではなく、段々に上がっているという状況です。

結局、今の治療法では、治療すればするほどがん患者は死んでいくということです。本来、いい治療法であれば、がんの死亡率もゆるやかになるでしょう。ところが、実際に治療を受けた人達はすぐに弱ってしまいます。薬が体を痛めつけているわけです。身体をいためつける薬・治療からそろそろ脱却しなければいけない時期にきています。

— 免疫学的にみて現在のがん治療の弱点は

薬や放射線で身体を痛めつけて治ると思うほうがおかしい

安保:抗がん剤や放射線はすごく免疫系を抑制します。身体を衰弱させ、戦う力を削ぎ、リンパ球が激減します。多少がんは小さくなるということもありますが、いい結果は出ません。今のがん治療は、治せる目標があってやっているわけではありません。 ですから、早く患者さんが目を覚ますことが必要です。薬や放射線で身体を痛めつけて治る病気があると思うほうがおかしいのです。

— がんにならないためには、日頃からどのようなことに心がけていればいいでしょうか

安保:私は、1)生活パターンを見直す、2)がんへの恐怖から逃れる、3)免疫を抑制するような治療は受けない、あるいは、受けている場合はやめる、4)積極的に副交感神経を刺激する、という4ケ条を薦めています。この4ケ条を実践するとリンパ球の数や比率が上がります。そうすれが、がんは自然退縮を起こします。

— 先生のご本の中で、がんにならないための6項目の最後に「がん検診を受けない」というのがありますが

「がんの疑い」という診断からくるストレスで発がんするケースも

安保:2つ理由があります。一つはがん検診は広くひっかけて精密検査をしますから、関係ない人まで大変なストレスになります。たとえば、一人の胃がん患者を見つけるためにだいたい20~30人ひっかけます。ですが、ひっかかった人達はたまったものではありません。がんの疑いということで精密検査をしなければいけません。これは、がんになったと同じくらいの大変なストレスがかかります。それで発がんする人もいるくらいです。おそらく、10人に1人は発がんするのではないかと思います。

検診グループのほうが、発がん率が高いという論文もたくさんあります。アメリカでも日本でも検診グループのほうが発がん率が高いというのがだいたい一致するところです。がんでもないのに検診で大変なストレスに合い、そこから発がんする人もいるというわけです。

早期発見・治療といっても、治療法が間違っていれば危険

安保:もう一つは、そもそもがんというのは、無理な生活習慣から発症しますが、楽な環境にいると自然に消えていくということを繰り返しています。それを早期発見・治療が必要だからといって無理やり見つけて、抗ガン剤や放射線で本格的な治療を始めようとします。ですが、それで100%治るという保証はありません。これは放っておくよりも危険です。早期発見・治療といっても、治療法が間違っていれば、大変危険です。

がんの死亡というのは、ここ数年増えています。いい治療をすれば段々停滞してくるはずです。結局、早期発見・治療が逆効果になっているということがいえます。

— 機能性食品の役割については

病気の本当の原因は、無理をし、苦悩することにある

安保:食事やサプリメントといった口にいれるものに注意している人達はたくさんいて、それはそれですごくいいのですが、もうひとつその上に必要なのは、やはり、無理をしないということです。

この無理をしないということを後において考えています。お医者さんは薬を出します。一般の人は食事に気をつけます。ですが、どちらも、無理して無理して、悩んで悩んで苦悩するということの怖さを第一においていません。そこが問題なのです。

実際病気になっている人達というのは、食べ物で病気になっているというよりは、無理な生活で病気になっているのです。ですから、そちらのほうに気をつけたほうがいいのです。比重の置き方を考えるべきです。

まず、無理な生活を見直し、それから機能性食品を利用すると良い

安保:発がんした人に身体にいい機能性食品を与えるのはいいです。つらいことや悩みがあると、消化機能も循環器機能も免疫も低下します。ですからまず生活を見直し、それから機能性食品を積極的に摂って滞っている生体機能を高めるという順序にして欲しいです。病気になる人達というのは機能性食品を摂らなかったからというより、無理な生活がたたって病気になっているということを自覚すべきです。

そういうことに気が付いた人が薬に頼らないで、機能性食品を摂るというのでしたらいいのですが、まず機能性食品ありきというのでは、病気の発症の原因を理解していないような気がします。

完全食を摂ることが大切

安保:精白米や肉は大変美味しいですが、精白米は糠(ヌカ)が抜け落ちていますし、肉は動物の筋肉だけで、不完全です。ですからなるべく、穀物でしたら糠も入った丸ごと摂ることです。

また、小魚とか発酵食品とかはひとつの生物個体ですから、完全食で過不足がありません。発酵食品はそれ自体、微生物物質の生命体ですから、そこから作られるビタミンとか利用して体の免疫や消化器系・循環器系を高めていくといいです。
現在の栄養学ですと、1日30品目食べなさいと言っていますが、ほとんど不可能な話です。ですから、なるべく完全体を摂ることです。

— 代替医療についてはどのようにお考えですか

お医者さん達が身体に悪いもので病気を治すには限界があるということに早く気がついて欲しい

安保:もう少し広まって欲しいと思います。お医者さん達がいろいろな身体にいいものを取り入れて、抗がん剤とか身体に悪いもので病気を治すには限界があるということに早く気がついて欲しいのです。

遺伝子の研究がずいぶん進んできて、遺伝子診断とか電子治療とか、そういった方向へ向かっているようですが、私達は遺伝子に異常があって生まれてきて病気になっているわけではありません。無理をすることで、適応範囲を超え、病気になっているわけです。遺伝子異常ということであれば遺伝子を変える必要がありますが、今はまだ遺伝子を変えるほどの力はありません。ですから、対処療法ということになりますが、発熱や下痢、痛みや腫れといったものは治るためのステップであると私はみています。

相補・代替医療がなぜいいのか科学的な結論はまだ出ていないように思います。それがサイエンスとして確立するためには白血球の自律神経支配とか、免疫系と循環器系や消化器系とのつながりとかを明らかにすることが必要です。

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