2023年2月8日(水)〜10日(金)、東京ビッグサイトにて「健康博覧会2023」が開催された。今年で41回目を迎える健康博覧会。人・社会・地球の健康をテーマにあらゆる業界関係者が一堂に会した。食品業界だけでなく、一般食品・飲料・化粧品・日用品メーカーからも「健康」や「未病」への参入を狙って、400社、4000商品以上が健康に関する最新トレンドを発表。3日間で2万人以上が集まり、今年はコロナ禍の終息を思わせる賑わいとなった。
(株)グローバルニュートリショングループ 代表取締役 武田猛
トレンドを先取りするためには日々情報を定点観測し、いち早く変化に気づくことが肝要である。英国発の栄養・健康ビジネス専門誌「New Nutrition Business」(NNM)は、2005年から毎年「10KeytTrends(10のキートレンド)」を発表していて、トレンド理解に最適なツールの一つだ。トレンドとブームには大きな違いがあり、トレンドは中長期的な視野で、中長期的に成長のチャンスが見込めるもの、グローバルであること、そして真の成長機会が見込めるものである必要がある。昨年10月に発表された「キートレンド2023」について、「10KeytTrends(10のキートレンド)」日本語版制作を手がける(株)グローバルニュートリショングループの武田氏が、2023年の健康ビジネスのチャンスと展望について解説を行なった。
まず10キートレンドの大前提となる「5つのメガトレンド」について解説。「健康に関する信念の細分化」「天然の機能性」「ウエイトウエルネス」「スナック化」「サステナビリティ」の5つだ。「健康に関する信念の細分化」とは、人々が健康についての定義をよりパーソナルに行ようになっていて、絶対的な価値観が存在しなくなっていることや、専門家も細分化していること、インターネットによって専門的なかつ必要な情報は個人によって収集できる、という流れのことである。「天然の機能性」はこれまでもヘルシーな食材として愛されてきたアボカドやナッツ類、緑茶などで、これらの機能性食材は引き続き大人気で、いかに楽しく継続的に摂取できるか、ということがますます求められる。「ウエイトウエルネス」はウエイトダウンを期待する人より、ウエイトに関係なくヘルシーであることを求める人が増えているという傾向だ。「スナック化」は、あらゆる食品によって求められていて、手頃に・ヘルシーに好きなタイミングで、罪悪感なく食べられるものへのニーズが高い。「サステナビリティ」は食べることで、自分だけでなく地域や地球への貢献ができることや、そもそもの食品の加工度が低いことなどを人々が求めていることを説明。
そして10個のキートレンドは次の通りである。「1、ベネフィットのある炭水化物」「2、多様化する腸のウエルネス」「3、植物を便利に」「4、スイッチが入った動物性プロテイン」「5、甘さの再発明」「6、植物性プロテインのパラドックス」「7、脂肪の再定義」「8、ムード&マインド」「9、リアルフード&超加工食品の課題」「10、本物らしさ&来歴」。
1.「ベネフィットのある炭水化物」は、より少なく、より環境に優しい炭水化物、つまり全粒粉のようなものが求められているということだ。炭水化物抜き、糖質制限、ケトンダイエットなどがブームになったが、やはりブームでありトレンドというほどにはならなかった。人類は炭水化物と上手に付き合う必要がある、そのためにはどのような炭水化物を選び、どう食べるべきか、そこまで提案してくれる「ベネフィットのある炭水化物」が求められている。
2.「多様化する腸のウエルネス」は、実感が大事ということ。プロバイオテクス・発酵・食物繊維(プレバイオ)・プラントベース乳代替品・グレインフリー・A2ミルク、など腸に良いものは十分に認知されているが、腸が睡眠やマインド、肌や免疫に関係しているということを体感できる素材が求められている。
3.「植物を便利に」とは「野菜や果物をいかにたくさん、いかに便利に食べられるか」ということ。パウダーやフローズン、甘味料としての代替など、植物を多様に活用していくことが大きなトレンドになっている。
4.「スイッチが入った動物性プロテイン」とは、米国でコラーゲン、特に牛由来コラーゲンが大人気となっている事例を紹介。動物性のものはプラントベースに置き換わるという予測もあったが、やはり動物性の食品は美味しく人気が高い。ヘルシースナックとしてのチーズや、ドライフルーツとチーズの組み合わせ、ビーフジャーキー。チキンジャーキーなど、動物性プロテインで健康に良いものはむしろ人気が高くなっている。
5.「甘さの再発明」については、日本こそ低カロリー甘味料の技術が世界トップクラスで、日本の技術に注目が集まっている事例を紹介。はちみつや天然の甘味料(羅漢果など)が再評価され、血糖値をコントロールすることはホルモンバランスをコントロールすることにつながることなども知られるようになっている。
6.「植物性プロテインのパラドックス」については、プランドベースに注目と人気が集まる一方で「プラントベース加工品」「代替品」になると、どうしても人気がなくなるパラドックスのことだと説明。プラントベースにしたことで加工の工程が増えたり、添加物の使用が多くなったりすると、消費者はより敬遠する。原材料表示を少なくする、加工面の工夫をする、お肉の代替品にはしないといった工夫が必要かもしれない。大手食品ブランドのケロッグはすでにプラントベースを手放したことがニュースになったことにも触れた。
7.「脂肪の再定義」とは、脂肪=悪という価値観が完全に覆されたという話だ。良い脂肪、良い脂質はむしろ積極的に摂るべきで、上手に良質な脂質が補給できることを提案した食品はトレンドになると紹介した。
8.「ムード&マインド」とは、メンタル・マインド・睡眠関連食品のことであるが、このトレンドはニーズが高いのに成功が難しく、「体感しないと失敗する」「失敗が多い」という事例が多いと説明。ハーブ関連商品はエビデンスが揃っているものが多いが、味に課題が多い。そのような中で、日本の「ヤクルト1000」は大成功と言えると解説。
9.「リアルフード&超加工食品の課題」とは、やはり加工行程が多すぎる物や複雑な添加物が入っているものが敬遠される一方で、地元のもの、シンプルな設計のもの、生産者の顔が見えるものは、再評価されるということだ。メガトレンドにあった「天然の機能性」にあったように、アボカドやナッツなどそのまま丸ごと食べられる食材に人々は安心を求めている。
10.「本物らしさ&来歴」は、生産者のバックストーリーやサスティナビリティへの貢献など、「選ぶならより良いもの」「選ぶならより共感できるもの」という消費者ニーズの話である。牛乳瓶の回収システムのような昔ながらのエコシステムも再注目されているという。
5つのメガトレンドと10個のキートレンドは毎年大きく変わるものではない。昨年と同じものも多いが、だからこそビジネス展開や投資を考えるに値する十分な裏付けや根拠があるレポートだ。そして複数のトレンドを取り入れることで差別化も計れる。一方で、トレンドを取り入れたところで、失敗するケースもあると武田氏。それは「美味しくない」「ベネフィットやヘルスクレームに依存しすぎ」「ターゲッティングができてない」「技術にばかりフォーカスしている」「体感できない」といった共通点があることも説明した。最新情報やトレンドを理解していない専門家は信用されないので、このような信頼できるデータを定点観測し、自社の商品開発に生かすことで、消費者ニーズに答えられるビジネスを展開してほしいとまとめた。
2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。
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