美と健康のビジネストレードショー「第22回ダイエット&ビューティー」が、2023年9月25日(月)〜27日(水)、東京ビッグサイトにて開催された。今回は「フォーカステーマ」として「温活・腸活・眠活・骨活・筋活」の「5活」に役立つものが多く取り上げられ、5活がアンチエイジングだけでなく特に女性の健康や今話題のフェム・テックに貢献するとフォーカスされていた。「ダイエット&ビューティー」だからこその美とエイジングケアに貢献する最新の学術研究発表や開発商品、地域発のジャパンメイド・ビューティーなどが一堂に会し、会場は3日間で1万6千人以上の来場者で賑わった。ここでは開催されたセミナーのうち「糖化は老化!糖化研究最前線2023」を取り上げる。
同志社大学 生命医科学部 糖化ストレス研究センター客員教授 八木雅之
AGEs測定法の研究から糖化ストレス抑制対策、そして抗糖化素材の探索に至るまで、幅広い視点から糖化ストレス研究を行う同志社大学教授の八木氏。ここ数年で糖化という言葉が多くの消費者に浸透し、ダイエット&ビューティーでの講演も回を追うごとに注目を集めているが、ここでは2023年の最新の知見について報告したいと語る。
「糖化は老化」という言葉は十分に知られるようになっている。そして糖化について確実に言えることは「さまざまな疾病の原因になる」ことと「老化の促進に繋がる」ことだ。八木氏はこれまで糖化ストレス対策や抗糖化素材について研究してきているが、糖化を防ぐ方法も少しずつ解明されてきていると話す。そもそも糖化とは「体内の余分な糖がタンパク質と結びつき、タンパク質を変性・劣化させること」であるが、糖化が進行していくプロセスでAGEs(糖化最終生成物)という物質が作られ、このAGEsが身体にさまざまな悪影響をもたらす。しかしAGEsには100種類以上もの種類があることがわかってきており、これが糖化研究を難しくさせているという。例えば指先で糖化を測定することができるようになっているが、測定できるAGEsの種類を考えると、必ずしもそこで出てくる数値や指標が正確とはいえないといった懸念も生じているという。またAGEsの生成は、糖質の摂取だけでなく、揚げ物などの食品中にもともと含まれるAGEsの影響もあるとされるが、食品に含まれているAGEsが身体にどの程度の影響を与えているのかについては専門家でも意見が分かれている。睡眠不足やアルコールの摂取、酸化ストレスなどによってもAGEsの蓄積が促進してしまうこともわかってきているが、その影響や度合いについてもまだまだ解明されていない部分も多いと八木氏。
現時点で解明されていることとして、抗糖化には「食後の血糖値の急上昇の抑制」「AGEsの生成抑制」「AGEsの分解排泄」の3つの方法が有効だと言える。特に有効なのが「食後の血糖値上昇の抑制」だ、と八木氏。食後に高血糖状態が続くと、糖化ストレスを亢進させてしまう。食後の極端な高血糖状態を防ぐために、食事の際に米飯よりも先にサラダ、タンパク質、酢、出汁などを摂取しておくことで食後の血糖値上昇を抑制できることが報告されており、これは「食べる順番」としても知られるようになってきた。最近は主食としての炭水化物をパンにしている人が増えているが、事前にサラダやヨーグルトを食べる方法はもちろん、目玉焼きを1つより2つ、バターよりオリーブオイルを添加することで血糖値の上昇が抑えられることがわかってきたことを解説。パンはもちろん、米飯、うどんなどの炭水化物を単体で食べることが最も避けるべき食べ方で、サラダやフルーツ、味噌汁に限らず、肉や油でも血糖値上昇の緩和効果があるので、炭水化物を摂取する際には、さまざまな食材(品目)を意図的に「おいしく」食べてほしいと八木氏は解説。
また、多くの人が好きなスイーツによる糖化についても意外なことがわかってきたと八木氏は話す。パンに餡子を乗せて食べる人が増えているが、食パンと餡子の組み合わせで食後血糖値の抑制が起こるかについて調べたところ、抑制効果が見られという。こし餡より、粒あんにその効果はやや高く見られ、もちろん餡子の取りすぎは良くないが、適度に摂取することで食事の美味しさや楽しみと血糖のコントロールが実現するのではないか、と八木氏は話す。まだ研究規模が小さいので確実なことは言えないが、もしかすると洋菓子よりも伝統的な和菓子を選ぶ、甘味が欲しい時には餡子や葛などを選ぶことが有益かもしれない、とした。研究では日本茶と羊羹(和菓子)の伝統的な組み合わせでも羊羹単体の摂取より血糖値の上昇が抑制できることなどが確認できたという。スイーツで大人気のアイスクリームについて、やはりアイスクリームと飲料の組み合わせで血糖値のコントロールができないかを調査したところ、緑茶、甜茶、ドクダミ茶、柿の葉茶、カモミールなどのハーブティにはアイスクリーム単体で摂取するよりも、一緒に摂取することで血糖値の急激な上昇を抑える効果が見られたことを報告。もともとお茶類にはAGEsを分解・排出する効果も報告されており、この辺りについては今後さらに研究していきたいと話した。 糖化を怖がり、糖質を極端に制限するという方法も注目されたが、その弊害も知られるようになっている。最新の研究では、私たちの身近にある食品をいかにおいしく食べながら糖化を予防するかに注目が集まる。餡子の事例がそうであるように、砂糖が豊富に使われているものでも、必ずしも体に悪い食べ物とは言い切れず、食べ過ぎることなく、適量をおいしく適切な組み合わせやタイミングで食べることで糖化予防に貢献できる可能性もある、と述べた。