2024年2月19日(月)〜3月4日(月)オンラインにて、食品開発展プレゼンフォートナイト2024冬が開催された。ここでは(一財)生産開発科学研究所による「アスタキサンチンその研究史、自然界での機能、注目される生理活性」を取り上げる。
株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役 武田猛
国内だけでなく、米国やヨーロッパのウェルネスフードについてもプロフェッショナルな武田氏であるが、今回は米国を中心にこの20年でどのようなトレンド変化があったかについて大きな流れを解説。米国で「ニュートリションバー」つまり「エナジーバー」と呼ばれるスナックタイプの栄養価の高い食品が市場に登場したのがちょうど20年前であるが、この辺りからウェルネスフードのトレンドは「ナチュラルヘルス」と「ウエイトロス」という2つの流れに分かれていった、と武田氏。米国では2005年頃から「スーパーフルーツ」が大ブームとなった。具体的にはアサイーやコジベリーなどがあり、日本でも一時的にブームにはなったが、それが定着に至ることはなかった。しかし米国ではこのスーパーフルーツブームを受けて「ナチュラルヘルス」の中に「ホールフーズ」の概念が台頭する。サプリメントであっても「ホールフーズサプリメント」が好まれるように市場が動いていった。そもそも米国や欧州には「○○◯を食べれば(摂れば)、△△△になる」といったような発想が少なく、トレンドになる前から「ナチュラルヘルシー」という考え方が存在している。現在は食材本来に機能性があり、最小限の加工工程で販売されているものを選びたいというのが消費者の傾向だ。「ホールフーズ&クリーンラベル」が求められている、と武田氏。つまり「良い食材を選んで良い食事をしたい」ということになる。
同じく「ウエイトロス」のトレンドの方も少しずつ変化を遂げていった。「ウエイトロス」は文字通り「体重を減らす」ことを目的としているが、この概念はやがて「ウエイトマネジメント」に変化し、現在は「ウエイトウェルネス」に変化している。ただ体重を落として健康になろうというトレンドは完全に過去のものになった、と武田氏は指摘。
そして「ナチュラルヘルス」と「ウエイトロス」という2つのトレンドにおいて、この20年で欧米において最もブームとなった3大機能性成分は「オメガ3脂肪酸」「プロテイン」「食物繊維」であると説明。また「ナチュラルヘルス」と「ウエイトロス」のトレンドからは少し離れるが、特に米国でこの20年間安定して市場を伸ばしているものに「エナジードリンク」があると指摘。これは即効性と体感を伴うものだからだ、と説明した。
日本では機能性表示食品が市場を拡大している。しかし、売上げについてはまだまだ伸ばしたいと思っている企業が多いはずだ。アメリカでは「ダイエット」「ウエイトマネジメント」といった商品はもはや売れなくなっている。ここにもしかすると日本の機能性表示食品の売上を伸ばす鍵があるのではないか、と指摘した。
欧米人にとって重要な「ナチュラルヘルシー」という概念は、「ベジタリアン」を目指すものではない。「お肉を食べすぎない方が健康的である」「乳製品の摂りすぎはアレルギーや消化への懸念がある」、何よりも「地球のサステナビリティに貢献したい」というのが「ナチュラルヘルシー」の考え方だ。そのため意図的に肉食を控える日や食事を設けるけれどベジタリアンではない「フレキシタリアン」という考え方も浸透しつつあるという。日本のように「ヘルスクレームで何を打ち出すか」よりも、「商品の持つコンセプトやストーリー」、またそれをメディアがどう取り上げるか、の方が重要視され、商品が選ばれる理由にシフトしている、と解説した。
もう一つの流れである「ウエイトウエルネス」についても、今流行している商品には次の5つのキーワードのいずれかが当てはまるという。1つ目が「自分でメソッドを決める」ということ。「これを食べれば」という受け身の発想ではなく、「自らが食生活や健康的な生活を送るきっかけとなる」ものであること。2つ目が「テクノロジー」で、スナッキングの概念が求めるような利便性が高く、気軽に利用できるようにテクノロジーで設計されているもの。3つ目が「日常におけるウエイトウェルネス」で、罪悪感を持たずに食べられるおやつやスナックであること。4つ目が「プロテイン強化食品」で、スポーツの有無に関わらずウエイトウエルネスやウェルエイジングにもプロテインが必要であることを意識できるもの。5つ目が「良い炭水化物」で、ホールフーズの発想がここでも登場する。
このように欧米のウェルネスフード市場は、「ナチュラルヘルス」と「ウエイトウェルネス(ロス)」という2つのトレンドを保ちながらも、この20年で少しずつ変化を遂げてきた。その変化は消費者が「自然に」「健康的に」「地球に貢献しながら」を求めた結果であり、日本の市場でも活かせる部分があるのではないかと武田氏。
さらに米国では最近CRN(tne Council for Responsinble Nutrition)という機関が「ダイエタリーサプリメント使用による医療費削減効果」という調査レポートを公表したことが話題になったという。これは、健常人ではなく疾病を抱えている人がサプリメントを使用することでどれくらい医療費が削減できるのかをシュミレーションしたレポートで、具体的には「冠動脈疾患」「認知機能低下」「骨粗鬆症性骨折」など6つの疾病に対するサプリメントの効果を想定した調査結果だ。ここでは「過敏性腸症候群」について解説が行われたが18歳以上の成人の過敏性腸症候群(国民の5%相当)がプロバイオティクスを摂取した場合、欠勤時間が34.7%削減されこれは年間で15億円に該当するという試算を報告。実際はサプリメントを摂取していない過敏性腸症候群の成人の方が多いが、それでも2億円に相当する欠勤時間の削減に貢献していると試算できる、とレポート。この数字の是非よりも数字があることで議論が進む点が米国らしく、日本では難しいかもしれないが、医療費60兆円の具体的な議論が求められる日本でも学べる点の一つではないか、とした。このような議論が進むことでサプリメントの意義の理解や市場拡大にも貢献するだろう。
最後に、話題が変わるが今年10月に発行される「ウエルネストレンド白書vol3」についても紹介があった。詳細は本書を見てほしいとのことだが、今回新しくレポートしたことの一つとして「健康生活度と幸福度には相関関係がある」ことを紹介。健康的な生活を意識している人の方が人生において意欲的で幸福度も高い。この辺りの詳細については是非白書を読んでみてほしいと話した。