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2024.6.10食・色・機能 カロテノイドの魅力と健康への貢献ifia JAPAN2024国際食品素材/添加物展

2024年5月22日(水)〜24日(金)、東京ビッグサイトにて食品素材や食品添加物に関する情報が一堂に集結する「ifia JAPAN2024国際食品素材/添加物展」が開催された。食品加工において不可欠な素材や添加物について、安全性や美味しさは常に研究改良されているが、その最前線についてさまざまな情報が発信される場となった。ここでは「食・色・機能 カロテノイドの魅力と健康への貢献」について取り上げる。

三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 カラー&ヘルスユニット  基盤研究グループ 木下 圭剛

カロテノイドとは天然の植物や動物など藻類・菌類などに幅広く存在する色素成分で、黄色やオレンジ色、赤色を呈している脂溶性の色素成分である。カロテノイドは主にニンジン、トマト、唐辛子、柑橘類などに多く含まれている。しかもこれらカロテノイドの原料は世界各国で食経験や使用経験が豊富なため、安全性が十分に担保されている。カロテノイドを食品に利用している記録として最も古いものに、古代エジプト時代(紀元前1500年)の「サフラン色素」の記録も残っている。つまりカロテノイドは非常に安全で食経験が長く私たちの食生活に浸透している物質だといえよう。

カロテノイドにはさまざまな機能性があることがわかってきているが、カロテノイドを多く含む植物自身も、生存競争の過程で「見た目」や「色」や「機能(抗酸化力や生理活性)」を強化するためにカロテノイドを利用している。また人の体内では、カロテノイドを摂取すると、カロテノイドはビタミンAに変化することもよく知られている。

現在は、850種類を超える多種多様なカロテノイドが発見されているが、中でも「カロテノイド(カロチノイド、とも)」や「βカロチン」などがよく知られており、「カロテノイド」は現在世界中で天然の色素として使用されていて、天然着色料市場でもカロテノイドが44%を占めているという。というのもカロテノイドは、調達がスムーズで、製造や加工も安定しており、流通全体を通して最も利用しやすい着色料の一つだからだ。しかもカロテノイドは酸や塩分に強く、変色しにくく、しかも加熱加工や加熱殺菌にも強いため加工しやすい。ただし、光と酸素には弱く、特に体色の抑制には技術やノウハウが必要であるという。このあたりは技術でカバーする方法が研究されているが、分離しないカロテノイドの研究も進められているという。

インターネット社会となり、食品において「見た目」はますます重要になっているが、カロテノイドは「見た目のおいしさ(色鮮やかさ)」を与える素材で、さらに「健康」と「栄養」、そして「機能」面でも付加価値を与えてくれる素材として注目されている。

現代の日本においては10種類を超えるカロテノイドやカロテノイドを含有する色素成分(βカロテン、トマト色素、マリーゴールド色素等)が食品添加物として認可されていて、安心して食品に使用できるようにルールも定められている。また、2015年から開始された機能性表示食品制度において、食品表示に特定の機能・効能を表示することが認められているが、カロテノイドについても、その高い抗酸化成分に紐づいたさまざまな機能を表示する300品以上の食品が市場で販売されており、消費者がカロテノイドを認識する機会が増えている。最近注目されている機能性表示食品のカロテノイドとしてまずは「β-クリプトキサンチン」がある。温州みかんのオレンジ色の色素で、加齢黄斑病の予防に良いことが知られている。「リコピン」はトマトの赤い色素で、強い抗酸化作用があることが報告され、紫外線による肌への刺激の緩和や、血中LDLコレステロール低下に関する機能が報告されている。「ルテイン」「ゼアキサンチン」はマリーゴールドに多く含まれ、眼の⻩斑⾊素量を増加する働きが報告されているため、視覚機能の維持に役立つ。「フコキサンチン」はワカメや昆布などの褐藻類に含まれており、抗酸化作用のほかに脂肪を分解する作用があることが知られている。他にも数少ない動物性のカロテノイドとして「アスタキサンチン」があり、鮭のオレンジ色の色素でこちらも高い抗酸化作用を持つことが報告されている。「クロセチン」はクチナシの果実に含まれる色素成分で、疲れ目の緩和や睡眠の質の向上に効果があることが報告されている。カロテノイドは共通して活性酸素を除去する、高い抗酸化力を持つという共通点があるが、それぞれのカロテノイドにはアイケア、美肌、疲労回復、抗メタボ、抗ロコモティブシンドロームなどのエビデンスが蓄積されてきていて、今後の研究も待たれている。 現在カロテノイドは天然の着色料として製菓・製パン・麺類・飲料などに広く用いられているが、ナチュラル思考の消費者にも健康志向の消費者にも支持される素材で、食品添加物として安全性も確実で、さらに機能性表示も可能なのでぜひ利用してほしいとまとめた。

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